あめ~ば気まぐれ狂和国(Caprice Republicrazy of Amoeba)~Livin'LaVidaLoca

勤め人目夜勤科の生物・あめ~ばの目に見え心に思う事を微妙なやる気と常敬混交文で綴る雑記。
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雨場毒太の気まぐれ書評124

2009-02-01 17:15:28 | 雨場毒太の気まぐれ書評
指南書か暴露本か自叙伝か
推理小説常習犯
ミステリー作家への13階段+おまけ

森雅裕 著
KKベストセラーズ 1996年
講談社 2003年


先日「本の虫行動学」で紹介した通り、現在入手困難の本である。そして、当時森雅裕作品が書店で手に入りにくかった理由がわかる本でもあり、いよいよ森雅裕作品が書店から完全に抹殺される原因を作った本でもある。

本書は二部構成の、まあ広義のエッセイになるだろうか。第一部は「推理作家への道」と題し、推理作家になるための入門書の形式をとっている。ただし、その内容は数多あるハウツー本とは一線を画する。

「ミステリー作家への13階段」の文句の通り、「推理作家への道」は13の章に分かれている・・・と言いたいところだが、「+おまけ」として15章まである。前半は「テーマと人物設定」「ストーリーの作り方」等々、よくある「小説の書き方」的ハウツー本風の章題になっているが、後半には「業界処世術」「金のはなし」「売り込みに失敗したら」など、ひたすらリアリスティックな文字が並んでいる。

そして、どのセクションにも作者の実体験がぎっしりと詰まっている。特に第11章「新人が陥る罠」が凄まじい。新人賞を受賞した作家が目の当たりにすることになる、出版各社の内情やマスコミのいい加減さが次々と明かされている。我々が普段楽しく読んでいる小説が、世に出るまでにどれだけの暗闘が繰り広げられているものか、読者は見せ付けられることになり、背筋の寒くなる思いがする。

第二部が、前述の通り「本の虫行動学」で触れた「ミステリー作家風俗事典」である。ミステリー版『悪魔の辞典』(cf.アンブローズ・ビアス)とでも言うべき用語集で、毒舌皮肉自虐その他織り交ざった密度の濃い代物。

古書店で見かけたら、是非立ち読みだけでもすることをおすすめしたい。


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