あめ~ば気まぐれ狂和国(Caprice Republicrazy of Amoeba)~Livin'LaVidaLoca

勤め人目夜勤科の生物・あめ~ばの目に見え心に思う事を微妙なやる気と常敬混交文で綴る雑記。
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雨場毒太の気まぐれ書評26

2007-07-07 21:55:32 | 雨場毒太の気まぐれ書評
謎と謎がつながっていき、最後に残る謎
悪魔と詐欺師 ―薬屋探偵妖綺談
高里椎奈 著
講談社 1999年


「恩田陸読後感テイスト」という言葉がある・・・といっても私が作った言葉だが。意味としては「話は終わったはずなのに、何かこのままでは終わってはいけないような、何か大事なことが解決しないまま終わっているような、何かをどこかに忘れているような、そんな不思議な感覚」といったところで、恩田陸の小説にこのような読後感を味わわせる作品が多い事からこうつけた(同好の士にはわかってくださる方も多いかと思う)。例を挙げればデビュー作の「六番目の小夜子」、SF系作品「劫尽童女」など・・・一番端的に表れているのはショートショート「どこかで聞いた話」(短編集「象と耳鳴り」所収)だろうか。もちろん恩田陸の専売特許というわけではなく、他の作家にもそういう作品はある。今日紹介する本もそれだ。

で、この本である。随分前に紹介した「薬屋探偵妖綺談」シリーズの、これは第三巻。やはり430ページあるボリュームたっぷりの作品。

毒死、轢死、窒息死、転落死・・・別の死因で、別の場所で起こった、全くつながりのないように見えるいくつかの死。それぞれは解決済みのはずなのだが、しこりのように残る謎を辿っていくと、そこに見える真相とは・・・

この不思議さを味わってもらうためには、いらぬ先入観を与えてはよろしくないので、本の裏表紙に毛が生えた程度の文章しか書けないのだが、その点はご容赦いただきたい。興味を持った方は読んでみてください。不思議な感覚に包まれながら、この題名と表紙イラストがいかにこの小説の内容にマッチしているかに気づくことになるでしょう。

この本は「色なし」、つまりシリーズ中の異色作ということで、さもありなん、と思う。(注;薬屋探偵シリーズは通常題名に色の名前が入っている。「の檻を溶かして」、「黄色い目をした猫の幸せ」など。色の名前が入っていない作品は異色作であると筆者自身が語っている)

しかしこの人も文章力がすごい。恩田陸が「情景描写の上手さ」なら、高里椎奈は「人物描写の上手さ」だ。一応なりとも小説書きである私としては、読むと勉強にもなるのである(もちろんそれはあくまでついでで、ただただ楽しんで読むために買っているのだけれど)。


(なんとなくカテゴリ名を変更してみました)


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2 コメント

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Unknown (テロリスタン)
2007-07-08 18:26:38
小夜子のリンクずれてますぜ。
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Unknown (雨場毒太)
2007-07-08 23:16:47
ほんとだ。Ctrl+Cが上手くタッチできてなかったのかな。

ご指摘感謝します。
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