白い月

白い月

無月

2016-09-19 10:07:33 | 心事ポエム
生れ直すのにも 生き直すにも倦んだ月は

薄青い雲を従え 《その時》を待っている


告知された余命をも無邪気に振り払い
 
聴こえぬふりをして風に飛ばし

愚かにも ああ。

根拠もない奇跡を確信しているらしい


独り居の隠れ家は遺恨の杜の中で朽ちる

覗き込んでも何もない

日輪を追う暮らしを飾り ひたすら繁茂し続ける蔦の家は

いずれひとひらの霧のように消える筈


一病に由縁する鈍い痛み抱え 

無辜の民の放浪にも付き合う

無涯の火焔は尽きず 

灰を積みあげる地軸の生業に休みは無い


田を埋め 

森を消し 

流れをねじ曲げ 

人を誘い込み 死の淵へとなだれゆく

酷い秋だった 
 



1 コメント

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いい詩ですね (tadaox)
2016-09-30 01:07:25
いつも読ませていただいております。
選ぶことばに共鳴するのはなぜなのか、ときおり考えています。

月はあなたそのものなのですね。
静かに、時に激しく、命をゆさぶるヒビキが聞こえてきます。
ありがとうございました。

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