詩の自画像

昨日を書き、今日を書く。明日も書くことだろう。

20.折り込みチラシ

2017-09-19 15:20:24 | 

折り込みチラシ

            

 

今朝の朝刊の

折り込みチラシに

蝉の鳴き声が

栞のようにはさみ込まれていた

 

七月の予告なのだが

七月に蝉は鳴くのだろうか

 

蝉が鳴いて夏がくる

そこには麦わら帽子の少年が

虫取り網を手に持って

古里の山々を走りまわっている

 

折り込みチラシの

隅々まで目を通して

古里の山々を探してはみるが

原発災害後には

麦わら帽子の少年の姿は

どこかに消えてしまった

 

暑い夏がくると

少年時代に帰れる筈だった

 

古里の山々は

除染が行われていないので

放射線量が高いという不安がある

 

この場所では

夏になって蝉は鳴いても

虫取り網が独りでそっと近づいて

蝉を捕獲することは

まだまだ先だ

 

原発災害後から七年目

目に見えないが一気に風化が進んでいる

七年前の記憶 そして

少年時代の記憶

そこに入りこんだ大きな亀裂

 

それでも少年時代に帰れる日には

背丈も心の中も

その大きさに

合わせたいと思っている

 

そこに 今朝の朝刊の

折り込みチラシ

蝉の鳴き声が

栞のようにはさみ込まれていた

 

一気に遡上していく

少年時代へと

折り込みチラシ一枚の興奮なのだが

今日は一日

少年時代に戻ったようだ


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