詩の自画像

昨日を書き、今日を書く。明日も書くことだろう。

お誘い

2017-04-19 15:40:39 | 

お誘い

 

 

「手術することをお断りしました」

明るい声だが

私の耳には沈んで聴こえてきた

 

肺がんの確定診断を受けた

その翌日に

神様に全てを委ねることにしたという

 

「聖書の中にある

天国とはどういうところでしょうか」

葛藤し続けて行き付く先

 

素朴な質問ほど答えるのが難しい

人はこの世から身を引くときが訪れる

その時を悟ったと

いうことなのだろう

 

八十歳を越えた今は

十分生きたというが

委ねることの難しさは誰よりも知っている

 

肺がんの手術はしないと決めたとき

怖いものが不思議に消えてしまったという

この施設は看取りまでしてくれる

 

それでも「まだ心残りはあるのよ」

と いう

まだゼロになっていないという言葉だ

 

その心残りを聴くことができなかったが

一緒に重いものを背負ったと思った

その重さの比重は本人とは全く違うが

 

もう神様はお誘いの準備をしているようだ

ときどき夜中に熱が出るという

平熱も今は高くなったという

 

病んだ体一つを置いて

天国へと浮遊していく姿を想像しているのか

生きたという証をそっと置いて

 

お見舞いに来てそのような話を聞かされて

眠っていた心身がシャキッとした

返す言葉一つにも無駄があってはならない

 

「手術することをお断りしました」

明るい声だが

私の耳には沈んで聴こえた

 

 

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