私は詩を書く人

昨日を書き、今日を書く。明日も書くことだろう。

病室

2016-10-17 06:09:16 | 

病室

        

 

ふっと背筋が寒くなった

猫が歩いて通り過ぎていったのだ

 

何故 猫だったのかは分からない

お見舞いに来たときのことだ

 

末期がんだというその人は愛猫家だった

その魂が猫になろうとしていたのだろうか

 

その夜に 亡くなった

よくあるストーリーなのだが身震いした

 

お見舞いに行くたびに

そのことが思い出される

 

みんな元気になって退院していくのだが

ときどき つまずく人がいる

 

つまずいた人のベッドの上からは

猫が降りてきて

歩いて通り過ぎていくのだろう

 

病室には預言みたいな出来事があるから

お見舞い嫌いになった人も何人かいる

 

高額な個室も同じなのだろうか

金ぴかの猫が歩いて出て行くとしたら

やはりふっと背筋が寒くなるのだろう

 

どこまで人生の貧富を

持ち歩いていくのかは分からないが

どこかで均されどこかで平等になる

亡くなるということはそういうことなのだ

 

三年も過ぎると 

長い避難生活の疲れから体調を崩し

入院する人が多くなった

 

一ヶ月に何回もお見舞いに行くときがあるが

猫の姿を見ることがないようにと祈ることもある

 

だから お見舞いするときには

ふっと背筋が寒くなる前に病室を後にする

 

この頃の

お見舞いのコツなのだ

(詩集 桜蛍)

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