詩の自画像

昨日を書き、今日を書く。明日も書くことだろう。

宿題

2016-10-29 06:16:48 | 

宿題

 

昆虫でもないのに

虫ピンで止められたような風景がある

 

家の形をなくした家の悲劇と

戻って来ない留守の家があって

荒れ果てた防潮堤が

あの日の続きのように横たわっている

 

瓦礫の撤去は終わったのだが

そこに住んではいけないとの規制がかかった

 

一つの地区が その規制という虫ピンで

全く身動きが出来なくなってしまったのだ

パタパタと最後の抵抗をすることもなく

標本が出来あがってしまった

 

夏休みの宿題の中に

戻ったような気がしている

大きな網は繊細なものまで掬い上げるから

標本の中には

悲惨な出来事がいっぱい入っている

 

バスツアーの

観光スポットにもなっているようだが

三十分や一時間程度では

悲しみなどを共有することは出来ない

 

標本はガラス戸の中で静かに眠るものなのだ

眠っているように見えても

波に飲み込まれていった人たちの怒りが

四方に放散されている

 

この歳になっての宿題は

虫ピンの痛みと複雑なものばかりが残る

(詩集 桜蛍より)

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