詩の自画像

昨日を書き、今日を書く。明日も書くことだろう。

蝉(推敲中)

2017-08-10 15:48:53 | 

 

蝉がカラカラと

坂道を転がり落ちてくる

鳴き終わった蝉は

木の実が落ちるように

一つ二つと

亡き骸になって

坂道を転がり落ちてくる

蝉の夏は

終わったのだ

 

坂道の上には

大きな森がある

原発震災後には

放射線量を下げる為に

住宅地に近い木は

何本か切り倒された

その木は行く先がなく

今も大地の上に

枯れた姿で横たわっている

 

あれから六年が過ぎ

残された木の株から

伸びだした芽が

人の背丈までになった

放射線量も

幾つかの夏を越えると

少しずつ落ち着いてきた

蝉の鳴き声は

八月の台風が来る頃に

山々に反響し始めた

 

あの日から

木の根っこの底には

私たちには分からない

大きな変化があって

最初の夏には

地上に出てきた

多くの蝉は

木の上に上ることが出来なかった

木皮にしがみ付いたまま

鳴くことができずに

地面に落ちて

亡き骸になっていった

 

あの日に

私たちは大事な季節を一つ

失った気がして

夏になると

蝉の鳴き声を探し求めていた

一年ごとに

鳴き声は増えてきたが

鳴く時期は

秋の風が

木々を揺すり始め

明け方の涼しさを

意識し始める頃からだ

 

短い時間だが

鳴くだけ鳴いた蝉は

木から命の手を放して

地面に転がり落ちる

それから夏の陽に焼かれると

埋葬する場所を探して

坂道をカラカラと

転げ落ちながら

蝉の夏は終わるのだ

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