風のアダージョ

切なさの向こう側、樹木を渡る風笛が聞こえる

名前のない日常

2017-09-19 | 
重なり連なる越後の山々が
夜の色へと濃く淡く
大地へ溶ける夕まづめ
稜線を越えた薄墨色の風は
リヴィングのカーテンを揺らし
夕餉の匂いを揺らし
点在する家々のたしかな
営みを運んでいた
わたしは幸せの匂いを嗅ぐ
視界にあるあなたの笑顔
(C)Kanon

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

初秋の里2

2017-09-11 | 
いちめんの芒が原
その真先を
風が撫でていく
童子のうぶ毛を
慈しむように
慈愛深く
わたしは謳う
乳色に染まる
はじまりの秋を



あしたへの
いのちを
希望を
ちからを
(C)Kanon

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

初秋の里

2017-09-08 | 
やわらかに霞む
芒の真先を
風が撫でていく
童子のうぶ毛を
慈しむように
慈愛深く
わたしは謳う
乳色(にゅうしょく)
薄霞の里

(C)Kanon

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

晩夏の熱

2017-09-04 | 
言葉なんて無意味だったあの夏
水平線を泳ぐ羊の雲を追いながら
わたしは物語を編んでいた
素足に纏わりつく砂
さらわれそうな波
寄せる波濤が
見つめるわたしを誘っていた
言葉なんて無意味だった夏の
過ぎし情熱がめくるめく
(C)Kanon

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

夢追い人

2017-08-25 | 
ドリーム
その濃密なかほり
去りゆく夢甘酸っぱく
巡りくる夢美しく
そんな独りごちを
風が掬って空へと散らす
仕舞えないままの夕暮れ時
見果てぬ夢がわたしを縛る

(C)Kanon

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

幻のアダージョ

2017-08-08 | 
キャンドルの朧な灯りに揺れる
繋ぐことのない思い出たち
音なき色なき熱なき
ただ甘酸っぱいもの
優しい時間の中へ去っていった
眼差し一つ置いた追憶の夜


***

”キャンドルの灯りを挟んで向き合って
君を見つめていたい ただそれだけでいいんだよ”
と、言ったあなた 
そんな甘いセリフを言う人じゃなかったのに
わたしは軽く笑いとばしてそれで終わりにしてしまった
幸福の中にいたことをわたしは分ろうとしなかった
あなたがいなくなってから
あなたの心のひだを数えてる

永遠のY.K.さんへ捧げます


(C)Kanon

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

大地への刻印

2017-07-27 | 
尖がっていたあの日のkokoro
ザラついていたあの時の想い
突き刺さった何気ない言葉の刃
そんな沈殿した記憶たちを
いつか大地へと還したい
残るのは愛だけだと
迷いながら揺れながら日々を歩く
そしていつか
大地を抱いて泣いてみたい
(C)Kanon

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

暑中お見舞い

2017-07-22 | 


素敵な週末を~♪

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

罠(最終章)

2017-07-19 | 自作小説
 女将は、麻耶が上京してから女将に宛てた手紙と、十数冊にもなる大学ノートを持ってきていた。二人の遺品になるだろうからあなたが持っていた方がいいと言って渡された。大学ノートは佳代子の日記だった。

結城は読む勇気がなかった。混乱した。そんな結城を見ながら女将は、麻耶はあなたの子供だと告げた。その事実を、佳代子は麻耶には告げてはいない、とも言った。でもあの子は利口で勘のいい娘だから、あなたが父親だとわかっていたのよ。あなたを慕っていることがこの手紙を読めばよくわかるわ。そう言って渡してくれたのだった。
手が震え、心が震えた。頭が混乱する。 結城は一人になりたかった。しかし、今は許される時ではない。

 開票速報が流れ始めた。スタッフは当確を信じ、今か今かと固唾をのんで待っている。一時間ほどで ”結城賢治当確" の知らせが入った。
その瞬間、事務所は大歓声に包まれ、万歳三唱を唱える者やダルマに目を入れる準備をする者たちで、お祭り騒ぎになった。
だが結城は、女将から告げられた話に打ちのめされ、当選を喜ぶ気持ちなど湧いてはこなかった。それでもなんとかマイクを持って、壇上で一通りの挨拶をすませた。これから、当選の祝賀とマスコミ対応や挨拶が待っている。そして、その後の数日間を魂が抜けたようになりながらも、スケジュールをこなすしかなかった。
麻耶の葬儀は何事もなく終えたが、ゲリラ紙の記者は、結城のスキャンダルが隠されているのではないかと疑いはじめていた。
10日ほどして、結城は一日だけ休養したいとホテルに部屋をとった。渡された佳代子の日記と麻耶の手紙を読むために。

 初めて目を通す佳代子の日記には、生い立ちに恵まれずいつも自分を卑下するように生きてきたこと。そこに結城が現れ、一瞬でも光が射したように感じたこと。そして、恥じるかのように遠慮がちに結城へのひたむきな愛を綴っていた。所々に、新聞や雑誌に取り上げられた結城の記事をスクラップのようにして貼り付けている。世に出て注目されていく結城を喜びながら、自分と麻耶が邪魔にならないようにしなければいけないと、随所に自分を戒めている。
結城は、読みながらたまらなかった。そして、麻耶の手紙を震える手で開いた。楽しげな女の子らしい文面で女将に話しかけるように綴ってあった。

 『お父さんはカッコイイ人なのよ。頭が良くて正義感が強くて、とっても優しいの。一生懸命働いて、仕事を覚えてお父さんの役に立ちたい。お父さんって、一生呼べなくてもいいの。お母さんができなかったことをお父さんの傍でしてあげられるのが嬉しいから。お母さんもそれを望んでると思う。今、とっても幸せで楽しいから心配しないでね。お父さんはきっと当選するから、そしたらお休みを頂いて女将さんに会いに行きますね。お母さんのお墓にも報告しなくっちゃ。』 
結城は慟哭した。 こんなことがあっていいものか。ひたむきな母娘を自分は…。卑怯で醜い自分のエゴが、自分で自分を追い込んでいたのだ。取りかえすことはもうできない。教育だって!政治で日本を変えるだって!おごっていた自分が恥ずかしかった。やりきれなかった。母娘にどう償えばいいのか。これからどうすればいいのか。佳代子!麻耶!
麻耶!
麻耶!
麻耶!
結城の慟哭する声は、いつまでも続いた。



あとがき

 人生には落とし穴がある。いや、その落とし穴は自分で造っているのかもしれない。結城は決して悪人ではない。高い志も持っていた。しかし、自ら招いた過ちにより、自分自身で、自分の中に弱みを作ってしまったのだ。
その罪の意識により純粋に相手を見ることができなかった。自分で造った落とし穴に、人生を狂わす罠を仕掛けたのは自分自身だったのだ。
 そんな結城賢治は、どこにでもいる。ほら、そこに、あなたの中にも。




-End-

この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係 ありません 


お読みいただきありがとうございました
(c)Kanon

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

罠(五)

2017-07-18 | 自作小説
 選挙戦も終盤に達していた。結城は疲れが溜まり、眠れない夜が続く。その原因の大半が麻耶にあることは自覚していた。
幼少時、父親を亡くしたという麻耶の話は嘘だった。麻耶は”非嫡出子”であった。
”麻耶は知っているはずだ、封筒の内容を知っている。そして、結城が父親ではないかと疑っている。きっとそうなのだ、きっとそうに違いない。
だがしかし、本当に自分の子なのだろうか?年齢からして辻褄は合う。しかし…たった一度の過ちだった… ”
 最近の結城は、ジッと自分をみつめる麻耶の視線が気になって仕方がない。あの時、黙って見つめていた佳代子に重なり、強迫されているように感じるのだ。負けてはいけない、選挙に勝たなければいけないのだ。考えるのは当選してからだ。全ては終わってからにしよう。自分に言い訳をする。が、もはや麻耶のことが離れなくなってしまっていた。今もどこからか、自分をジッと見ているかもしれないと思うと、神経が病んでいきそうになる。
 新聞では、結城賢治は「当選圏内」と書かれるほど優勢に闘ってきた。選挙は結果がすべて、勝たねばならない。

 明日が投票日という日の夕刻、最後の遊説を終えて戻ると、選挙事務所はごった返していた。選挙カーから降りて、事務所に入ろうとしたその時だった。刃物を持った男が物陰から結城目指して走り出てきた。不意打ちの暴挙に、結城は硬直したまま動けなかった。『やられる!』と思った瞬間、結城の身体にだれかがぶつかり、そのまま崩れ落ちた。麻耶だった。麻耶の脇腹から、血が噴き出している。暴徒の男は、血のついた刃物を持ったまま、その場で取り押さえられた。
あたりは駆けつけたパトカーや救急車や、やじうまで騒然となった。男は、結城の政治理念と異なる極左組織の構成員だったことが後でわかった。
そして結城をかばった麻耶は、救急車の中で息絶えた。

 『私を怨んでいたのではなかったのか?私の罪を断罪しに来たのではなかったのか?麻耶、なぜなんだ?なぜおまえは私をかばったのだ?』
 警察が麻耶の身元を調べ始めた。マスコミも一斉に報道を始める。結城は選挙どころではなかった。自分の過去が明るみにされてしまうのではないか。いや、しらを切りとおせばいい、だれも真実は知らないのだから。だが、麻耶の死が歴然とした事実となって迫ってくる。自分をかばった麻耶の心がわからない。
恨んでいたのではないのか。直面する現実とわが身の保全との間で結城は揺れた。麻耶の亡骸はいったん葬儀社にあずけ、聡子が付き添うこととなった。

 慌ただしい一夜が明けた。投票日当日である。疲れ切った結城を皆が気遣い励ましながら、夜の開票を待っていた時、中山明子と名乗る女性が訪ねてきた。
菅平の旅館の女将であった。結城は、もはや覚悟を決めるしかなかった。16年ぶりに会う女将は、少し老けてはいたが当時の姿そのままの小太りで、人の良さそうな顔は変わっていなかった。報道関係者が旅館に押し掛けてきたらしい。取るものもとりあえず上京したが、本当にあの子は死んでしまったの?麻耶の突然の訃報に泣き崩れる女将の姿を見ながら、結城は、まだ自分の身の保全を考えていた。女将は何をどこまで知っているのだろう?


To be continued

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

著作権は夏音Kanon に帰属します

                 Copyright (c) 2014 Kanon All Rights Reserved.