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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

日下紗矢子&クレメンス・ハーゲン&河村尚子

2017年01月12日 | pocknのコンサート感想録2017
1月10日(火)Vn:日下紗矢子/Vc:クレメンス・ハーゲン/Pf:河村尚子
~トッパンホール ニューイヤーコンサート 2017~
トッパンホール

【曲目】
1.ベートーヴェン/チェロ・ソナタ第2番ト短調 Op.5-2
2. コダーイ/ヴァイオリンとチェロのための二重奏曲 Op.7
3.シューベルト/ピアノ三重奏曲第2番 変ホ長調 Op.100 D929


ハーゲン・クァルテットのメンバーでもあるベテランのチェリスト、クレメンス・ハーゲンに、世界を舞台に活躍を広げる日本の若手アーティスト、ヴァイオリンの日下紗矢子とピアノの河村尚子によるトリオとデュオの演奏会。若々しくダイナミックな日下、河村の演奏と、ハーゲンの気合のこもった熱いチェロが向き合い、エキサイティングな演奏がくり広げられた。

ベートーヴェンは冒頭の序奏のシリアスな表情から聴き手を惹きつけた。その後、2人が本気の対話をやり取りする。硬質で磨きのかかった河村のダイナミックなピアノと、アグレッシブでありながら包容力のあるハーゲンのチェロとの火花を散らすバトルで、ベートーヴェンの音楽のリアルな表情が浮き彫りになった。コダーイでは、日下の凛として瑞々しく、どこまでも伸びのあるヴァイオリンの存在感、ダイナミズムが光った。ハーゲンとのデュオで、民族色の奥に潜む普遍的なスピリッツが赤裸々に表現されていた。

シューベルト晩年のトリオでも、3人の冴えた演奏が瑞々しく弾けた。自然で生き生きとした息遣いが、明快なストレスを伴ってかっちりと噛み合い、「生きた音楽」を鮮烈に伝えてくる。行きつ戻りつたゆたい、哀愁のあるグラデーションを描くはずのシューベルト晩年の音楽が、3人の鮮やかで切れ味のいい演奏ではもっと透明でキラキラと、シーンごとに印象的に飛び込んできた。それらのシーンはどれも生き生きと自信に満ちて輝き、お互いが有機的に繋がり、シューベルトの音楽では希薄になることも少なくない全体の構成感も明瞭に伝えていた。

哀愁を滲ませ、はにかむ「シューベルトらしい表情」も聴きたかったが、だからと言って今夜の演奏は元気一点張りというわけではなく、チャーミングな表情やたっぷりとした抒情、優美な歌にも事欠かず、また異なるシューベルトの魅力を聴かせる充実した演奏だった。日下紗矢子と河村尚子という期待の日本人アーティストの実力を改めて確かめられたことも収穫。
CDリリースのお知らせ
さびしいみすゞ、かなしいみすゞ ~金子みすゞの詩による歌曲集~

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