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作曲をするpocknが週1以上ペースで通っているコンサートの感想録を中心に、クラシック音楽を追求します。

2016年10月B定期(トゥガン・ソヒエフ指揮)

2016年10月30日 | N響公演の感想(~2016)
10月27日(木)トゥガン・ソヒエフ指揮 NHK交響楽団
《2016年10月Bプロ》 サントリーホール


【曲目】
1. ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第3番ハ短調 Op.37
 【アンコール】
 ベートーヴェン/テンペスト・ソナタ~第3楽章
Pf:エリザベート・レオンスカヤ
2.ドヴォルザーク/交響曲第9番ホ短調 Op.95「新世界から」

トゥガン・ソヒエフは、今年のN響1月定期で聴いたばかり。このときも、そして2013年のN響客演時も、チャイコフスキーで「名演」と呼べるに素晴らしい演奏を聴かせてくれたため、今夜の名曲プログラムも期待大。

前半はベートーヴェンのピアノ・コンチェルト。ソリストにはリヒテルとも深い親交があったという旧ソ連領ジョージア出身のベテランピアニスト、レオンスカヤが登場した。レオンスカヤのピアノは、去年の4月にボロディン弦楽四重奏団との共演で聴いているが、そのときと同様の好印象を与えてくれた。

レオンスカヤが弾き始めるやすぐに、音色と語り口で聴き手を魅了した。その音色は、代々大切に受け継がれ、磨きのかかった木製の高級な家具の味わい。温かく格調高い光沢を静かに放ちつつ、現役で活躍を続ける家具。それを大切に磨きながら、静かに自分の人生を語り聞かせるレオンスカヤ。その話は、少女時代の胸ときめく話もあれば、人生そのものを語る重い話まで、音楽のシーンに合った話を、味わい深く、情熱を込め、歓びや哀しみの感情を交えて語り聴かせてくれた。

それは、上述した希有の音色、微細なアゴーギクやディナミークの移ろい、細やかな呼吸、巧みな声部の弾き分けといった、レオンスカヤがこれまでの人生経験と音楽の経験を総動員して初めて実現する境地に思えた。それは決してひけらかすものではなく、ごくプライベートで親密なやり方で届けられる。撫でるようなソフトなタッチで弾かれながら、オケから浮き上がって存在感を示する弱音が、そうした親密さに光を当てている。今の若い世代のピアニストにはいないタイプの魅力を持っている。アンコールに「テンペスト」を弾いてくれたのは思わぬ嬉しいプレゼントだった。

ソヒエフ指揮N響は、集中力のあるドラマチックな演奏でレオンスカヤのピアノを盛り立てていたが、もっと弱音で演奏して欲しいと思う部分や、ドラマチック過ぎでは、と感じることもあった。そもそもレオンスカヤのようなピアノには、オケの編成が大きすぎる気がした。

後半は、B定期では珍しいポピュラーな名曲「新世界」だったが、これは可もなく不可もなくといった印象。切れ味鋭いというタイプの演奏ではないが、かと言って熱血突進型の演奏でもない。第4楽章では、音符をその音価いっぱいに伸ばし、躍動感よりも「すり足」効果を出そうとしているようにも聴かれたが、ソヒエフはそれでオケから何を引き出したいのかはよくわからなかった。それでも第1楽章や第4楽章での終盤の追い上げのパワーなどは心に迫るものを伝えてきたが。

実は、途中でお腹が痛くなってきて、終演後にトイレに駆け込むという予期せぬことがあり、トイレに流れる音声モニターで会場の様子を聴いていたが、盛大な拍手がいつまでも続き、ブラボーも度々かかっていたので、もしかしたらお腹が痛かったせいで演奏への集中力が十分に保てなかった可能性もなくはないが、やっぱり、素晴らしかった過去2回の演奏会と同レベルとは言えないと思う。

2016年1月B定期(トゥガン・ソヒエフ指揮)(2016.1.21 サントリーホール)
2013年11月B定期(ソヒエフ指揮)(2013.11.21 サントリーホール)
ボロディン弦楽四重奏団 with エリーザベト・レオンスカヤ(2015.4.10 東京文化会館小ホール)
CDリリースのお知らせ
さびしいみすゞ、かなしいみすゞ ~金子みすゞの詩による歌曲集~

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