『今日の一冊』by 大人のための児童文学案内人☆詩乃

大人だって児童文学を楽しみたい、いや、大人こそ読みたい。
ハッとする気づきのある絵本や児童文学をご紹介♪

訂正:眠れる野生がくすぐられる『ジャングルの少年』

2016-11-22 20:15:02 | 南米文学
以前(10月後半)、以下のような記事をアップしたのですが、コメント欄で原書の表紙は違うとご指摘いただきましたので、再度アップいたしますね。このように間違いを指摘していただけるの、本当にありがたいです!
原書の表紙はコチラです↓



赤バージョンもあるようですね。ちなみに以前書いた記事はこちらです↓




『ジャングルの少年』 チボル・セケリ作 高杉一郎訳 松岡達英画 福音館書店


う~ん、これはカテゴリーは何になるんでしょう?作者はチェコスロバキア生まれ、舞台は南米。出版からいうと東欧文学なのだろうけれど、エスペラントで脱民族だし、アマゾンの印象が強いので、南米文学に入れてみました。これは、子どもたちが安心してワクワク読める児童書。小学校中学年から。かつては、課題図書だったようですが、今はやはり絶版のようです


≪『ジャングルの少年』あらすじ≫

ある日アマゾン河で定期船が難破!乗客たちはボートで向こう岸に緊急避難します。ところが、食べ物も船を引き寄せるロープも何もない。困っているところにいきなり頭上から落ちてくる七面鳥のごちそう。驚いたみなの前に現れたのは、インディオの少年クメワワでした。クメワワと意気投合した民族調査員の作者ニイクチャップ(ひげづら男)は、みなの食料を確保すべく、毎日クメワワと釣りや狩りに出かけます。アマゾンの大自然に圧倒される、ワクワクの冒険物語!


作者のチビル・セケリは邦楽・考古学・民族学などを学び、9か国語&エスペラントを自由に操って世界を旅する探検家で、この物語はそのフィールドワークのときに出会ったカラジャという部族の少年をモデルに描いた物語です。なんだかNHKの『ダーウィンが来た!生きもの新伝説』を見ているかのような錯覚に陥るほどの、ジャングルの生き物のすさまじさ!圧倒されます!その中で原始的に生きる少年クメワワがいいんですよねえ。ただ、個人的には格調高い(と私が勝手に思っている)『イシ』を読んだ直後にこちらを読んだので、作者チボル・セケリの西欧人的な傲慢さがちょっとだけ鼻についたりもしました。まあ、冷静になれば少年の心を持ったチボル・セケリは『イシ』に出てくる成熟した人類学者とは違って、愛すべきちょい浅はかな(失礼)冒険野郎なだけなんですけどね
馴染みのないアマゾンに思いを馳せる手助けになる挿絵もいいです。これは断然日本語版のほうがいいな~。だって、原書の表紙は大人っぽすぎて子ども向きに見えないもの↓



ね?
『イシ』と違って、追われる民族の悲壮感はないので、純粋に楽しめます。葉っぱの繊維を取り出して寄り合わせ、ロープを作ったり、喉が渇けば水蔓を伐って飲んだり。クメワワの観察力ってすんごいんです。動物たちの足跡見て何の動物たちがいたかを知る、ここまではフツー、ただ、そこでどの動物がいつ来たか、時間の前後まで把握したりするんです。ばくの鼻にパイナップルの小さなトゲが刺さっていたのも見逃しませんヨっ。胃の中にまだ新しい葉っぱが残ってるから食べたのは死ぬ2時間前と推測、だから近くにパイナップル畑があるはずだ、と!!!

はちみつ取りも面白いです。自分の両足のうらに永井ロープを8の字型にかけ、そのロープで強く木を抑えながら登るの。見えるかな?8の字ロープってこんな感じ↓



トツトツと話すクメワワの話にはハッとさせられることもあります。

「長老マロア言った。人間なんでも考える。けもの考えない。しかし、なんでも知ってる。」
「もってるもの、だいじにとっておけ。知ってること、みんなにわけてやれ。なくなることない。」
「・・・長老マロア言った。けもの、腹がへったときだけ、ほかのけもの殺す。人間、けものより悪くなってはいけない」

などなど。朝と夕方には動物たちは休戦状態にある、ジャングルの平和という原始林の秘密には感動したなあ
自分の中に眠れる野生がくすぐられる物語です。

最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
原書の表紙 (gothit)
2016-11-21 17:42:27
検索から失礼します。
「原書の表紙」なる画像を拡大すると、下の方に "Note: This is no the actual book cover"と書いてあるようです。
実際の原書の表紙は以下のようなものです。
http://images.gr-assets.com/books/1340285596l/15715626.jpg
http://www.geocities.jp/akvoju/kovrilfotoj/kumewawa.gif

ご参考まで。
感謝です (Shino(管理人))
2016-11-22 20:08:04
≫gothitさま

ご指摘本当にありがとうございます。気づきませんでしたので、さっそく修正して再度アップしたいと思います。エスペラントの普及活動に仙台が貢献していたことなど、存じ上げませんでした。のちほどゆっくりと論文読ませていただきます。コメントありがとうございました。

コメントを投稿