『今日の一冊』by 大人のための児童文学案内人☆詩乃

大人だって児童文学を楽しみたい、いや、大人こそ読みたい。
ハッとする気づきのある絵本や児童文学をご紹介♪

目指すはツバメ号の母!

2016-06-13 22:30:04 | イギリス文学
昨日はお誘いがかかったので、近所の海へ。海好きだけれど、室内から眺めているのが好きな断然インドア派の私。誘っていただかないとなかなか重い腰が動かないのでありがたや~

で、しばらく子どもたち楽しそうに遊んでたのですが、張り切っていた長男の様子がなんかおかしい。知らないおじいさんと何か一緒にやってるな~、と遠目で見ていたのですが、あれ?長男の顔が険しいぞ。どうも濡れ衣を着せられたようで、悪ガキ呼ばわりされていました。仮に長男が本当にそのおじいさんの言ってる通りのことをしたとしても、「え?それって悪いか???」と思うようなことだったので、長男に「気にしないでいいよー」と言ったのですが・・・その場にいるのが耐えられなくなって長男一人で怒り心頭で帰ってしまいました

で、私何にびっくりしたかっていうとですね、長男を(誤解から)悪ガキ呼ばわりされたことに対して自分の中で沸き起こった“ざわざわ感”にですよ。あれ?意外とさらっと流せないぞっ。「決めつけられ」「誤解される」ってこんなにもいや~な気持ちになるものなんだなあ、って。うん、確認できて良かった。そのおじいさんは変な人だったけれど、同じように状況をよく把握せずに、先入観で子どもたちに色々「決めつけ」を自分も知らず知らずのうちにいっぱいしてるんだろうなあって思ったら、うわーん、ゴメン、子どもたち!って思いました

そこで、思い出したのがこちら↓



『ツバメ号とアマゾン号』アーサー・ランサム著 神宮寺輝夫訳 岩波書店


熱烈なファンの多いこのシリーズ、ついに新訳が完結しましたね。ランサム愛好家のことをランサマイトと呼ぶそうで、アーサー・ランサム・クラブも存在しています。(昨年私も会員になりました!)
最初読んだときは衝撃的でした。だってね、子どもだけで無人島でキャンプに行い、帆船を操縦するんですもの。無人島といっても、湖に浮かぶ小さな島で対岸には親がいるんですけどね、それでもスゴイ。ウォーカー家の4兄弟は夏休みにバカンスとして来ているのですが、ここで地元っ子のナンシイ&ペギイ姉妹から海賊としての挑戦を受けたり、『ロビンソン・クルーソー』や『宝島』をベースにしたごっこ遊びの冒険が始まります。海賊ごっこなので、レモネードをラム酒と呼んだり、対岸の農場は土人、川はアマゾン川などなど、設定が面白い。ごっこ遊びって結構大きくなってからでもしていいんだ~、って妙に励まされました

ところが、ある日ウォーカー家の長男のジョンがフリント船長のハウスボートに花火をつけたと思いこまれ、挙句の果て泥棒の疑いをかけられてしまうんです(←長男の件でココを思い出したっていうわけ)。そのときの友人の立場を守るため口を閉ざしたジョンの態度も立派だったのですが、母親の対応がまたね~、すんばらしくて先日の児童文学ピクニックのテーマが『素敵な母親像』だったので、もちろんウォーカー家の母もリストに入れました♪普段はひたすら見守っていて(でも、ごっこ遊びにはつきあい)口は出さない母親。けれど、事は深刻で子どもだけでは何とかならなさそうだと判断したとき、大人が介入したほうがいいかジョンに聞くんですね。子どもにまず確認するんです。いきなり怒鳴りこんでいく現代のモンスターペアレントとの違いたるや!そして、なんとジョンはそこで助けを断るんです。それもスゴイけれど、その意志を尊重する母がまた素晴らしくて。だってねー、息子がそんな疑いかけられたら、いくら息子が介入しないでくれって言っても陰でコソっと親が動いちゃいそう。モノ申したくなっちゃいそう

子どもを信じる

ウォーカー家の母はさらっとやってるけれど、これ内心かなりヤキモキしたんじゃないかと思います!信じてるからこそ見守れる。子どもの意志を尊重できる。すごいなあ、私にはできるかな?と自問してしまいます。子どもだけの遊びの世界がメインのこの物語だけれど、時々ちらっと登場する母がとっても素敵で、かくありたいと思うのでした

夏が近づいてくると読みたくなるこのシリーズ。はじめは帆船の説明などが多くてちょっと読みづらいかもしれないけれど、読み終わった後のワクワク感といったらもうね~、たまらない。小学校高学年から男女共におすすめです

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