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日立、英国の高速鉄道デビューでこける?

2017年10月19日 10時57分56秒 | 日記

10月16日、日立製作所が手がける英国向け高速車両が営業運転を開始したが、ロンドン行きの一番列車にトラブルが続出。そのデビューは苦々しいものとなってしまったという。(東洋経済オンラインニュースの報道による)

英国では、主要幹線を走る長距離用車両の老朽化が著しく、順次新車へと更新する都市間高速鉄道計画(IEP)が進められているが、今回の日立製新車の導入はその先駆けとなる。

10月16日にデビューした日立製英国向け高速車両「クラス800」。この上り一番列車が大きな混乱を引き起こした(レディング駅にて、東洋経済社の写真)

この日、営業運転が始まったのは「クラス800」と呼ばれる車両で、日立は英国からIEPで更新される車両866両の納入および、現在から27年半にわたるメンテナンス事業を一括受注している。うち、最初の12編成は山口県下松市の同社笠戸事業所で生産され、現地に船で運ばれたが、残りの110編成は同社が2015年9月に運営を開始したイングランド北東部のニュートンエイクリフ工場で造られる。

新型車両は、この日からクラス800を導入した鉄道運行会社グレートウェスタン鉄道(GWR)に369両、ロンドンからスコットランド方面に延びる東海岸本線を運営するヴァージントレインズに497両、それぞれ納入されることが決まっている。

GWRのクラス800は「くまのパディントン」で日本でも広く知られるロンドンのパディントン駅を発着する。ロンドン発の一番列車は朝6時半過ぎ、多数のメディア関係者が見守る中、パディントン駅3番線へと現れた。ロンドン・パディントン駅は、ロンドンとウェールズ南部、イングランド西部とをそれぞれ結ぶGWRの拠点駅となっている。GWRの路線はブリストルで2手に分かれるが、新型車両はそのうちのロンドンーウェールズ南部を結ぶ区間に使われる。

これまで使われてきた車両は、1976年に導入が始まった「インターシティ125」と呼ばれるものだ。125とは「時速125マイル(201km)で走れる」という特徴から名付けられたもので、非電化区間を走る列車では当時最高速を誇った。しかし今では、地盤が悪いのか、台車の作りの問題なのか、横揺れや縦揺れがひどく、車内で本を読んだり、パソコンのキーボードを叩いたりするのはとてもつらい。そのうえ、ドアの開閉はすべて手動で、停車駅を示すデジタル掲示板などの備え付けがない。一方で、鉄道会社にとっても、発車前に係員が車両を歩いて席が指定済みであることを示す短冊を座席の頭に付けて回る作業が強いられる。さらに行き先表示も「印刷された紙を毎回両面テープで貼る」仕組みとなっている。

今回の新型車両導入はあくまで「既存車両の更新」であって、スピードアップを図る目的で製造されたものではない。最高運転速度は時速201kmにとどまる。

 

それでも、乗り心地など車内設備はインターシティ125と比べ格段に向上している。1編成当たりの乗客定員が約25%増加、ラッシュ時の輸送力を増強するほか、座席のシートピッチの拡大、荷物や自転車などが置けるラックの増加、一目で空席状況がわかるデジタル表示などが施された。

クラス800は、電化区間だけでなくディーゼル発電機の搭載で非電化区間への乗り入れもできる「バイモード」が最大の特徴だ。ロンドンからの下り一番列車は予定どおり午前7時にパディントン駅を発車、順調にブリストルに向け走行を続けた。英国で交通アナリストとして活躍するサイモン・カルダー氏は乗り心地について「英国ではこれまでになかった素晴らしいもの。日本で新幹線に乗ったときのスムーズさを思い出す」とその性能に太鼓判を押した。

ところが、早朝6時にブリストルを出発した上りの一番列車では、発車時刻の遅れ、天井から水が流れ落ちる、バイモードの故障など、大きく分けて3つの問題が発生。

まず、ブリストル出発時に発車が20分ほど遅れたトラブルについてである。、「トレインマネジメントシステムにかかわるもの」で、システムの立ち上げ時の設定に異なっている部分があったという。「問題は特定できたが復旧まで時間がかかってしまった」としている。

続いて、走行途中には、クーラーパネルから「滝のように」水が流れ落ちるトラブルが発生。英紙デイリーメール(電子版)は、乗客のラップトップがずぶ濡れになったと報じている。これについて「空調の水冷に使う水の排水管の先端に逆流防止弁があるが、それがうまく働かなく、たまりすぎてあふれてしまったため」と説明する。

ただでさえ遅延を起こしていた一番列車に第3のトラブルが襲う。クラス800最大の武器ともいえるバイモード機能の「切り替わり」がうまく作動しなかったのだ。

 

非電化区間から電化区間への進入の際、走行中に無停車で「モードの切り替え」ができるはずが、パンタグラフが上がらず立ち往生してしまう事態となった。正井COOは、「バイモードの設定が間違っていたため、自動でモードが切り替わらなかった」と説明している。

以上のようなトラブルが重なった新型車両の一番列車は、最終的にパディントン駅に定刻の約40分遅れで到着。その影響で後続列車に大幅な遅れが出て、ダイヤが大混乱しただけでなく、先に起こっていた「水の落下」のため、一部車両では空調が停止しており、新型車両での快適な通勤を楽しみにしていた人々に対し、文字どおり「水を差す」結果となってしまった。

ロンドン・パディントン駅に入線した「クラス800」。40年ぶりの新車登場にスタッフたちは歓喜で沸いていたのだが(東洋経済社の写真)

影響はさらに広がった。クラス800のウェールズへのお輿入れが延期となったのだ。ブリストルからの車両が折り返し、ウェールズの中心都市・カーディフに向かうはずの列車が一連のトラブルを受け、急遽キャンセル。ウェールズの鉄道ファンの間で失望が広がった。

GWRは30分以上の遅延に対し、支払い済み運賃の全額を返す補償サービスを行っている。この日、遅延や取り消しに巻き込まれた乗客は賠償請求ができるものの、新型車両の初乗りを楽しみにしていた人々にとっては「お金を返されても全然うれしくない」ことになってしまった。

今回のトラブルを巡っては、車両メーカーである日立が自ら、運行オペレーターおよび利用者に対し、事情説明と陳謝を行った。これは、GWRとの契約で車両のメンテナンスを日立が受け持っているという事情による。GWRはツイッターで「メーカーである日立の素早い対応に感謝する」という声明を発表している。なお、その後当該車両は運行に復帰し、営業運転2日目の17日は無事に終えることができた。

日立はこの先英国で、スコットランド向け車両「AT200」に加え、イングランド西部などに投入される長距離車両「AT300(クラス802)」の納入を控えている。さらに「暑くて狭い」と不評なロンドン地下鉄の更新用車両への入札も行っている。同社によれば、営業運転までに行った5000マイル(約8000km)に及ぶ試験をトラブルなしで実施できていたという。にもかかわらず、トラブルは起きた。今回の一件を教訓に、安全・安定運行のために万全を期すことが、今後の日立の鉄道戦略にとって最優先の課題となる。

新列車の初運転でのトラブルで、しかも、電化機関と非電化区間の切り替えができなかったり、クーラーから滝の様な水漏れ、パンタグラフが動作しないというトラブルは、イギリス人からの不信感を買ったのは間違いない。最近多発している日本の大企業で生じている不祥事と同じ、マネージメントの気の緩みによるものではなければよいが。

 

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