たしたりひいたり

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の店主が綴る日々の出来事、コラム

梅次郎と春子 その3

2006年06月13日 | たしたりひいたり
春子はあっけにとられた。思いもかけず再会した梅次郎は、今自分が
乗っていたあの同じ電車にいたのだ。私を見つけて慌てて降りようと
したのだろう。背中で2度、ドアの開け閉めの音を聞き、なにげなく
振り返った時、梅次郎と目が合った。動き始めた電車から、何かを訴える
ように私を見つめていた梅次郎・・・

春子は改札を抜け、時刻表を見上げた。もし、梅次郎が次の駅で降り、
この駅まで戻ってきてくれるなら、あと26分後。
まさか、という気持ちと、来てくれそうな気持ちと。
来てくれるほうに賭けて待っていたい。
けれど、仕事の途中で、今からクライアントとの打ち合わせで、約束の
時間まであと15分ほどしかない。

どうしたらいい? 自分で自分に問いかけるが、答えは明白だ。
仕方がない・・・諦める。
折角会えたのに、でも気付かなかった・・・
文庫本など開かずに周りを眺めてたら、気付いたかも知れない、梅ちゃんに・・・
腹立たしいような、悲しいような気持ちのまま、打ち合わせに向かうのは
やりきれない気分だったが、春子は出口へ向かって歩き出した。

ふと、立ち止まる。伝言板が目に入った。

伝言板・・・・・賭けてみよう!

少し照れくさい気もしたが、中学生の時以来の伝言板記入。


「梅ちゃんへ 17日(土)13時 ここの改札の前で待っています。春子」




つづく


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