日経新聞 開発「競合と模倣しのぎを削る」=「スタートアップ大競争」 ここまで来た ③=

2017年08月31日 09時17分04秒 | 開発
日経新聞 2017年8月30日(水) P.1 
特集連載『スタートアップ大競争』=ここまで来た ③=

『4億人サバイバル』=競合と模倣しのぎ削る=

 自動車部品大手、シマノの株価が7月26日、前日比1割近く急落した。

震源地は中国のシェア自転車。
モバイクとofoのスタートアップ企業2社が覇権を争う。

現地では計1千万台のシェア自転車が街にあふれ、新車をあえて購入する消費者が減った。
スタートアップ企業の台頭が「中国での販売に水を差した」(シマノ)。

『急速に汎用化』
 サービス開始から1年で世界1億人の会員を獲得したモバイクは、事業拡大の手綱を緩めない。

ネット大手の騰訊控股(テンセント)などから約650億円を調達すると発表、日本にも進出した。

 チューブをなくしたタイヤでパンクを防いだり、全地球測位システム(GPS)で違法な放置を防いだりする自転車を開発。

日本でもライバルの先を行く独自のビジネスモデルで「渋滞緩和など都市が抱える課題を解決する」(モバイルのクリス・マーティン国際展開本部長)。

 「1割」。
スタートアップ企業が設立後10年で生き残れる確率だ。

世界で4億人の起業家がしのぎを削り、新製品が1年もたたずにコモディティー(汎用)化する。

ビジネスモデルを改善し続けなければ、競争で埋没してしまう。


 今年3月に新規株式公開した動画共有アプリの米スナップ。

送った動画が相手の閲覧後に消える機能を米フェイスブックにそっくりまねられ、利用者は伸び悩む。

スタートアップ企業が開発した有望な製品やサービスを模倣して稼ぐビジネスモデル・トロール(怪物)も手ぐすね引く。

『ウーバーを駆逐』
 「誰が最初にやったかではない。 ビジネスを理解し柔軟に振る舞うことが重要だ」。

6月末、ベルリンで開かれた投資家向けイベント。

独ロケットインターネットのオリバー・ザンバー最高経営責任者(CEO)はまくしたてた。

 ロケット社は米国で成功したビジネスモデルをまねたサービスを他の国や地域で立ち上げる。

東南アジアでは2012年、米アマゾン・ドットコムに先んじて、アマゾンをまねたインターネット通販サイト「ラザダ」を開設。

アマゾンの勢力拡大を阻む有力サイトに育て上げた。

 中国では配車アプリ大手の滴滴出行が本家の米ウーバーテクノロジーズの中国事業を買収し、市場撤退に追い込んだ。

 「配車アプリは生活に欠かせないが、ウーバーである必要はない」(滴滴の利用者)。
ライドシェア(相乗り)世界最大手も手を緩めれば、競争の波にさらわれる。

 パリ郊外。

介護世界最大手、仏コリアングループの施設で6月、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」を使った介護が始まった。

高齢者の下腹部に付けたセンサーで体内の尿を測り、排尿のタイミングを知らせる。
介護士の負担が減り、高齢者の自尊心も保たれる。

 世界初のなる排尿予知センサーを開発したのは、トリプル・ダブリュー・ジャパン(東京・渋谷)。

起業から2年半で日本国内約150施設に導入し、海外展開を急ぐ。

 「世界初でいられる期間は短い」。
中西敦士社長は現状に満足しない。

きょうの勝者があすの敗者になる世界のスタートアップ競争。
その厳しさが活力を生む。

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日経新聞 国際「地球温暖化と資産価格」=温暖化による気象変動の激化が経済を不安定化=

2017年08月31日 04時17分41秒 | 国際
日経新聞 2017年8月29日(火) P.19 マーケット総合2面
連載コラム『大機小機』

『地球温暖化と資産価格』

 日本各地では集中豪雨による水害が増加しているが、地球温暖化がその背景にあると指摘されている。

長期的な資産運用には技術や地球環境の傾向的な変化を見込んでおく必要がある。
そこで長期的な資産価格の変動を考えてみたい。

 地球温暖化は、徐々に海面を上昇させるとともに、台風などの低気圧の発達を促すため、大規模な水害を発生させるだろう。

世界の多くの主要都市は、大河川や沿岸部に発達しており、洪水に見舞われた地域の不動産価格を下落させる可能性が高い。

例えば国土交通省のハザードマップは、東京の荒川と江戸川周辺の広範な地域に水害リスクがあることを示している。

 海面上昇は、インダス、ガンジス、ナイルなど世界的な大河川のデルタ地帯に塩害を発生させている。

非常に傾斜が緩やかなデルタ地域では、わずかな海面上昇でも広大な農地の生産を大きく低下させてしまう。

 さらに地球温暖化は干ばつを悪化させる。

温暖化は海面からの水蒸気発生を増大させ降雨量を増やす半面、陸地の乾燥を促進し、差し引き干ばつを激化させる。

地球全体の気象を予測するシミュレーション分析では、東海岸を除く北米大陸全域、東海岸を除くオーストラリア大陸全域、地中海沿岸の広範な地域で、干ばつの激化が予想される。

これは、多くの農産物価格を上昇させる可能性が高い。

 発展途上国においては、干ばつや塩害で耕地を失った農民は難民となって都市に流入し、食糧価格の上昇と相まって政治を不安定化させる。

アフリカのチャド湖の消滅がその周辺諸国で深刻な紛争を発生させ、アラブの春と呼ばれたシリア、エジプト、チュニジア、リビアなどの紛争激化も、干ばつが重要な要因となっている可能性がある。

 温暖化対策のための技術進歩も企業価値や1次産品価格に大きな影響を与える。

太陽光や風力発電のコスト低下と電池の性能向上は、化石燃料生産や原子力発電の採算を悪化させ、電気自動車のシェアを大幅に拡大させる可能性がある。

 こうした環境変化は、地域間の不動産価格の相対価格を変化させる。

また化石燃料や内燃機関に特化した企業の価値を低下させる半面、高性能電池や強力なモーターなどの技術の価値を上昇させるだろう。


▼父さんコメント:
ベトナムは米の一大産地だが、塩害で大きな被害が広がっているとのTV番組を見たことがある。

タイやベトナムでの塩害の広がりは農民の離農を促し、政治が不安定化するだけでなく、世界の商品市場価格も大きな影響を受ける。

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日経新聞 経済『「適温相場」忍び寄る影』=株価下落サインに身構え=

2017年08月31日 03時10分45秒 | 経済
日経新聞 2017年8月29日(火) P.18 マーケット総合1面
連載コラム『スクランブル』

『「適温相場」忍び寄る影』=米株下落サインに身構え=

 米国の経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)を受けた28日の株式相場は小動きだった。

注目イベントを通過してもなお、ゴルディロックス(GOLDILOCKS ECONOMY、適温、適切な経済)の名を借りた膠着(こうちゃく)から抜け出せない。

だが、株価下落の可能性を示唆するテクニカルなサインもちらほらと出始めている。
敏感な一部の投資家は早速、リスク回避の姿勢を強め始めている。


 「(日経平均株価が)1万8000円台のプットオプション(売る権利)を大量に買った」(シンガポールのヘッジファンドの日本株運用担当者)。

「外国人持ち株比率が50%を超えるファナック株を空売りした」(50歳代の男性個人投資家)。

いずれも28日に聞かれた投資家の声だ。

悲観の根拠は「ヒンデンブルグ・オーメン(ヒンデンブルグの予兆)」と呼ばれるサインが先週、米市場で点灯したから、だという。

 このテクニカル指標は、第2次大戦前に爆発事故を起こしたドイツの飛行船ヒンデンブルグ号に由来し、よくないことの前兆を意味する。

過去1年間の高値・安値の更新銘柄数など複数の条件からはじき出される米国株の急落のサインだ。

    ◆    ◆

 サインがともると77%の確率で株価は5%以上下落、41%の確率でパニック売りにつながるとされる。

リーマン・ショックなど近年の株価急落時の前には同指標がほぼ点灯していた。

 米国株は割高感が指摘されながらも過去最高値圏にあり「いつ下がるかという不安を抱えながら買った投資家も増えている」(米系証券会社)。

こうした投資家はちょっとしたきっかけでも売りに回りやすい。
こうした背景にあるのも警戒が強まる理由のようだ。

 予兆の有効期間は約30営業日とされるので、9月中は急落リスクを抱える。

間の悪いことに、9月は「経験則上、5カ月周期で大幅に上昇する米VIX指数(恐怖指数)の次の上昇月と重なる」(大和証券の木野内栄治氏)という。

 機敏な投資家は早速(さっそく)、備えに入った。

日経平均の9月物のプットオプション(売る権利)を見ると、先週から1万8500円(28日終値比で4.9%安)や1万8000円のプットの人気が高まっている。

予兆が現実になれば日本株も影響が避けられないからだ。

    ◆

 問題はどの程度のエネルギーを伴って日本株に波及するか、だ。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の宮田直彦氏は「日本株は米株と違ってすでに割安。 日経平均の下げはPER(株価収益率)13倍の1万8400円程度が下限だろう」と予想する。

 みずほ総合研究所の高田創氏も「米株が急落すれば年内の利上げがなくなり、米景気回復期間がより長くなるかもしれない」とみる。

短期的にはダメージでも「災い転じて福となす」可能性もあるとの指摘だ。

 ヒンデンブルグ・オーメンは前回、6月に点灯した。
その後に米国株が急落した形跡はなく、絶対的なサインではもちろん、ない。

「米国にしては珍しく、科学的根拠に乏しい指標」との指摘もある。

それでも話題に上る背景には、上にも下にも動かない東京市場の何ともいえない気味の悪さが横たわっているのかもしれない

▼ヒンデンブルグ・オーメンの発生条件
①52週(=1年間)の高値、安値更新銘柄数が共にその日の値上がり、値下がり銘柄合計数の2.8%以上

②NYSEの株価指数が50営業日前を上回る
③短期的な騰勢を示すマクラーレン・オシレーターの値がマイナス

④52週(=1年間)高値更新銘柄数が同安値更新銘柄数の2倍を超えない

(奥貴史記者)


●関連日経記事
:2017年7月26日グー・ブログ「息子たちに読んで欲しい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 経済「やまぬ音楽 踊るマネー」=金融の蛇口を締めるのは容易ではない!=』(7月24日付)

◆父さんコメント:
 プロの投資家は短期の相場変動で利益を狙う。

投ずる資金が億~10億円単位になるため数%の値動きも大きな損金・益金につながる。
そのため数日から1週間の単位で売買を繰り返すのがプロの投資スタイルだ。

それに対して数カ月~数年の長期で運用して利益を狙うのが一般の投資家だ。
一般の投資家が恐れるのはリーマン・ショックのような暴落だ。

上記の記事は短期の相場急落を警告しているが、長期に続く暴落はない、との解説。
しかし、日米欧の市場には超緩和政策でマネーがあふれている。

あふれたマネーが資産バブルを醸成している。

望むらくは、緩やかな引き締め金融政策が経済を軟着陸させ、「暴落」の引き金にならないことを祈るしかない。

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日経新聞 経営『ファンドが変える「おやつ」』=「おやつカンパニー」が導入を図るグローバル経営=

2017年08月31日 02時24分28秒 | 経営
日経新聞 2017年8月29日(火) P.12 投資情報面
連載コラム『一目均衡』

『ファンドが変える「おやつ」』=編集委員 西條 都夫=

 「ベビースターラーメン」と聞けば懐かしさを覚える読者も多いだろう。

そのベビースターのキャラクターが今年初めに切り替わったのをご存じだろうか。

 中国風の衣装を着た「ペイちゃん」「ピーちゃん」という兄妹から、星柄の帽子をかぶったポップな若者の「ホシオくん」にバトンタッチしたのだ。

(どんなキャラか気になる人はコンビニのお菓子売り場をのぞいてほしい)

    ◆    ◆

 およそ30年ぶりのキャラ変更の裏側にあるのは、経営権のシフトである。

ベビースターの製造元はおやつカンパニー(津)という売上高が200億円前後の中堅メーカーだ。

会長の吉田好旦氏(69)は、戦後すぐに会社を立ち上げた創業者の次男。

1978年から経営の陣頭指揮を執り、もともと駄菓子屋中心の販路をスーパーやコンビニに広げ、棚の一角を占める定番商品化に成功した。

 だが、松田氏は3年前に重大な決断をした。
「おやつ」の過半の株式を投資ファンドのカーライル・ジャパンに売却したのだ。

会社に特段の問題が生じたわけでもないのに、なぜ人手に渡したのか。

「会社が発展し続けるためには、新しいことに常に挑戦する必要がある。 同族経営にこだわっていては、飛躍できない」という。

 実は松田会長には息子が2人いるが、彼らの「おやつ」への入社を許さなかった。

自分の父親が創業し、全株式を保有していた会社であっても、「私物ではなく社会の公器」という感覚があるのだろう。

    ◆    ◆

 ファンドを受け入れるメリットは何か。

一つはカリスマ(松田会長)の勘に頼った経営から、より科学的な経営に脱皮させることだ。

カーライルのつてで日本コカ・コーラやミツカン出身のマーケティングの専門家を要職に迎え入れ、市場調査を繰り返した。

 従来より大人びた「ホシオくん」キャラ採用の背景にあるのも、商品の認知度こそ高いが、「子供向け」「昔ながら」のイメージが強すぎて、スナック成長領域である若者・大人向けの購買に結びついていない、という発見だった。

 もう一つは海外展開の加速だ。

7月に初の海外工場を台湾で立ち上げ、同地や香港、韓国市場の攻略を目指すが、ここでも世界に根を張るカーライルのネットワークが威力を発揮するだろう。

松田会長としては、ファンドの力を借りることで自分の引退後までを見すえた会社の再出発の土台を整えたのだ。

 ポスト・カリスマ時代にどう備えるのかは「おやつ」のような中堅企業だけの課題ではない。

かって松下電器産業(現パナソニック)やソニーが失速したのは、松下幸之助や森田昭夫といった巨星が姿を消した後、経営の基軸が定まらず、内部抗争のような混乱が生じたことが一因だった。

 経営のモードチェンジを円滑に進めるためにも、ファンドのような外部資本の役割は重要である。


●関連日経記事
:2017年7月5日グー・ブログ「息子たちに読んで欲しい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 経済「ファンドバブルの足音」=世界的なカネ余りが背景に=』(7月4日付)

●関連日経記事:2014年6月8日グー・ブログ「同上」投稿記事参照
 日経新聞 経済「首相は投資家と対話を」=米カーライル創業者 ルーベンスタイン氏=』(2014年6月2日付)

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日経新聞 国際「豪銀、不祥事相次ぐ」=最大手、資金洗浄の疑い=

2017年08月31日 01時47分29秒 | 国際
日経新聞 2017年8月29日(火) P.8 国際1面
『豪銀、不祥事相次ぐ』=最大手、資金洗浄の疑い=

『「監督不備」政権に批判』

 オーストラリアの四大銀行で不祥事が相次いでいる。

最大手のコモンウェルス銀行では資金洗浄(マネーロンダリング)・テロ資金供給防止法に違反した疑いが浮上。

豪健全性規制庁(APRA)は28日、調査を開始すると発表した。

野党は当局による監督の不備を巡って攻勢を強めており、ターンブル政権のアキレスけんとなりかねない。

 「銀行に対する社会の信頼がここ数年で損なわれている」。
APRAのウェイン・バイヤース会長は調査開始にあたってこう述べた。

実際は提供していないサービスの手数料を顧客から取るなどの不正が表面化。

中でも問題が多く指摘されるコモンウェルス銀について企業統治が機能しているのかなどを調べ、半年後に報告をまとめる。

 豪金融取引報告・分析センター(AUSTRAC)は今月3日、資金洗浄の疑いがある取引について報告義務を怠ったなどとして、同行を連邦裁判所に提訴した。

不正の温床とされるのは2012年5月に同行が導入した新型ATMだ。

 1回に最高2万豪ドルを1日に何回も入金でき、利用額が急増。

他行のカードを使えば預けた人の身元が明らかになりにくいなどの特徴があり、資金洗浄に使われやすいが、同銀は15年半ばまで対策を取らなかったとされる。

 AUSTRACによると、14~15年に起きた香港の犯罪組織が関与したとみられる事件で、容疑者らは同行のATMから30の口座に2059万豪ドルを入金。

大半が即座に海外に送金された。
休暇で豪州を訪れた外国人が開設した口座や偽名口座を悪用していたという。

 また、違法薬物に絡む資金洗浄に同行のATMが使われたケースも豪連邦警察の捜査で明らかになっている。

AUSTRACは1万豪ドル以上の入金について、10日以内の報告を銀行に義務づけているが、コモンウェルス銀は5万3千以上のケースでこれに違反。

今年1月には5日間で1口座に32万豪ドルが入金されたが、報告していなかったという。
 
 同行のイアン・ナレブ最高経営責任者(CEO)は「間違いはあったが故意ではなかった」と説明し、関係当局に協力する姿勢を示している。

ただ、裁判の結果次第では「巨額の罰金を科される可能性がある」(地元紙)。
情報開示が不十分だったとして株主集団訴訟の準備も進む。

 豪州は金融先進国とされ、最大行を舞台にずさんな取引が横行していた実態が浮かび上がったことに国内では衝撃が広がっている。

ターンブル首相は28日、「APRAはコモンウェルス銀の問題に迅速に対応している」と強調し、事態の鎮静化を図った。

一方、野党は四大銀行への本格調査を要求。
金融当局任せにする政権の対応を不十分だと批判を強めている。

▼豪銀を巡る近年の不祥事
【コモンウェルス銀】
・14年3月、終末期患者への保険金不払いを内部関係者が告発

・14年6月、フィナンシャルアドバイザーの不正を巡り豪議会が調査
・17年8月、資金洗浄の疑いがある金融取引の報告を怠った疑いで調査

【ナショナル・オーストラリア銀】
・15年2月、顧客のサイン偽造がメディア報道で発覚

【オーストラリア・ニュージーランド銀、ウエストパック銀など】
・16年10月、提供していない相談サービスの手数料の返還を当局が命令

(シドニー高橋香織記者)

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日経新聞 海外メディア「トランプ氏、人種差別主義者の元保安官に恩赦」=三権分立への攻撃=

2017年08月30日 07時06分52秒 | 海外メディア
日経新聞 2017年8月29日(火) P.8 国際1面
連載『英フィナンシャル・タイムズ特約』=8月28日付、社説=

『トランプ氏、元保安官に恩赦』=三権分立への攻撃=

 ジョー・アルパイオ氏は、自分を国の法律よりも上に位置づけて名をはせた。

米アリゾナ州マリコパ郡の保安官としての24年間、同氏は被疑者への権利侵害と飽くなき自己宣伝で際立っていた。

「米国で最もタフな保安官」を自負し、屋外の拘置所を設置して多くの人を砂漠の熱暑の中に閉じ込めた。

2008年には裁判所の判事が、マリコパ郡の他の拘置所の環境は過酷で憲法違反にあたるとの判断を示した。

アルパイオ氏は不法滞在の疑いがあるとみなせばだれであろうと仰々しい「警護隊」ともに追いかけて身柄を拘束した。

 これが連邦当局と頻繁なもめ事につながり、しばしばマリコパ郡の納税者が多額の和解金や罰金を負担する結果になった。

11年には連邦判事がアルバイオ氏に対し、不法滞在している疑いがあるというだけで人々を拘束するのをやめるよう命令した。

この判事は13年、同郡の保安官事務所に中南米系住民を標的にすることを禁じる命令を下した。

 先月、アルパイオ氏は命令に従わなかったことで法廷侮辱罪の有罪判決を受けた。

トランプ大統領は先週、アルパイオ氏は「自分の仕事をして有罪判決を受けた」として恩赦を与えた。

米大統領は事実上、恩赦に無制限の権限を持つ。

トランプ氏の行動が際立っているのは、法執行官が公然と司法に逆らったことに報いている点だ。

これは、米国の制度の根本的原則である三権分立に対する攻撃だ。

トランプ氏の側近が米連邦捜査局(FRB)の捜査を受ける中、このことはより差し迫った問題になっている。

 トランプ氏の狭い視野で捉えると、この恩赦は依然として素晴らしい政策だ。
トランンプ氏が集会で恩赦をほのめかしたときには大歓声が沸き起こった。

バージニア州で白人至上主義者らと反対派が衝突した後のトランプ氏のコメントは、もはや疑いようのない同氏の基本戦略を物語る。

白人の怒りをかきたてることだ。

熱心な支持者を活気づける一方、大統領選で同氏に票を投じた、より広い層の支持を幾らか損なうだけで済む。

 トランプ主義を拒否している共和党員と保守派も多い。

共和党主流派は中南米系市民を取り込もうとしていたが、右寄りの社会観を持つ中南米系市民が多いことを考えると(=この判断は)理にかなっている。

共和党とこの重要な集団との関係に、トランプ氏がどれほど長期的な打撃を与えたのかはわからない。

中南米系市民はトランプ氏と共和党、保守主義と(トランプ支持者の=)ナショナリズムを区別するかもしれない。

他の共和党員は向こう見ずな大統領と距離を置き、違いをはっきりさせることで党に貢献できるだろう


●関連日経記事:2017年8月29日グー・ブログ「息子たちに読んで欲しい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 人物紹介「猜疑心の強い独善家、トランプ大統領」=パリ協定離脱と米国 (上)=』(7月24日付)

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日経新聞 経済「対外投融資 邦銀が突出」=3月末3.8兆ドル、将来のリスクにも=

2017年08月30日 06時14分22秒 | 経済
日経新聞 2017年8月29日(火) P.7 金融経済面
『対外投融資 邦銀が突出』=3.8兆ドル、国内需要低迷で=

『将来のリスクにも』

 邦銀の海外投融資の拡大が続いている。

国際決済銀行(BIS)の最新データでは3兆8363億ドル(約420兆円)と世界最大の規模にのぼり(=英国:約3兆ドル〈長期には減少傾向〉、米国:約3兆ドル〈安定して大きな変化なし〉、ドイツ:約2兆ドル〈長期には減少傾向〉)、金融大国である英米を約2割上回る。

日銀のマイナス金利政策などで国内の事業環境が悪化するなか、邦銀が海外事業の拡大に力を入れてきた成果だ。

その半面、海外企業への融資などには特有の難しさがあり、将来のリスクにもなりかねない。

 
 BISがまとめた各国の海外投融資残高統計(最終リスクベース)によると、邦銀の対外投融資残高は今年3月末までの3カ月間でさらに600億ドル程度伸びた。

英国(3.17兆ドル)、米国(3.06兆ドル)を上回る規模の投融資マネーを世界に供給している。

 2008年のリーマン・ショックまでは欧州勢が首位に立っていた。

欧州債務危機が追い打ちとなって経営体力が低下し、金融規制も強化されて対外投融資を縮小せざるを得なくなった。

5年前比では英国は25%減り、ドイツも31%減った。

 この部分を埋める形で邦銀は同38%増やした。

国内では資金需要が低迷し、マイナス金利政策の影響で貸出金利や余資運用の柱である国債の利回りも落ち込んでいる。

海外に活路を求めざるを得ないという事情も重なった。
三菱UFJフィナンシャル・グループの場合、融資残高の約4割を海外向けが占める。

鉄道や発電などアジアのインフラ事業向け融資が多い。

 国・地域別では米国向けが最も多く、1~3月に3%近く増えて1.66兆ドルにのぼる。

邦銀による米国債への投資もカウントされているものの、現地企業への貸し出しが伸びている影響が大きい。

例えば三井住友フィナンシャルグループは17年3月で米国向け融資などが2230億ドル(現在の為替レートで約24兆円強、融資枠なども含む)あるのに対し、米国債も含めた外債の保有高は7兆円にとどまる。

 2番手の英領ケイマン諸島は1~3月に5%増加。
税務上のメリットを狙い、同島籍での投資信託を組成することが多い。

こうした投信を日本国債での運用が難しくなった邦銀が購入している。

 中国向けは同1%弱増え、700億ドル台を回復。

経済の先行き不安から16年は減少基調にあったが、「世界第2位の経済大国でやはり外せない」(メガバンク幹部)といい、再び増加した。

タイ向けは5年間で倍増し、全体で9番目の規模だ。

新興国向けの伸びを映し、欧米など先進国向けは69.5%と過去5年間で初めて7割を下回った。

 邦銀にとって海外展開は長年の課題だが、一定のリスクもある。

現地企業の信用力の見極めなどは容易でないうえ、世界経済の浮き沈みの影響を受けやすくなってしまう。

リーマン・ショックの際に米国の投資銀行業務が打撃を被るなど、邦銀が過去に海外事業で損失を被った経緯もある。

▼邦銀の投融資が向かう上位10カ国・地域
・米国: 1.66兆ドル

・ケイマン諸島: 4783億ドル (低税率国)
・英国: 1702億ドル

・フランス: 1584億ドル
・オーストラリア: 1213億ドル (資源国)

・ドイツ: 1197億ドル
・ルクセンブルク: 753億ドル  (低税率国)

・オランダ: 752億ドル
・タイ: 737億ドル

・中国: 713億ドル


●関連日経記事:2017年8月26日グー・ブログ「息子たちに読んで欲しい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 経営「海外M&A べからず集」=経産省、作成へ検討会=』(8月25日付)

●関連日経記事:2017年8月27日グー・ブログ「同上」投稿記事参照
 日経新聞 国際「ドルむしばむトランプ氏」=米CA大サンタバーバラ校 B・コーヘン教授=』(8月25日付)

●関連日経記事:2017年8月29日グー・ブログ「同上」投稿記事参照
 日経新聞 経済「米、緩和の出口に残る難所」=編集委員 滝田 洋一=』(8月28日付)

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日経新聞 開発「国籍・国境に意味はない」=「スタートアップ大競争」 ここまで来た ①=

2017年08月30日 05時38分09秒 | 開発
日経新聞 2017年8月28日(月) P.1
特集連載『スタートアップ大競争』=ここまで来た ①=

『ボーン・グローバル』=国籍・国境に意味はない=

 隅田川沿いにある都内の雑居ビル。

技術的にまだ難しい全自動で着陸する小型無人機(ドローン)を見て、大企業の社員は舌を巻いた。

『社員7割外国人』
 広さ1千平方メートルの倉庫を数台のドローンで警備できる精緻な制御システムを開発したのは、ラピューター・ロボティクス(東京・中央)。

スリランカ人モーハナラージャー・ガジャン最高経営責任者(CEO、37)ら外国人3人が2014年に創業した。

 日本での留学中に創業メンバーの一人と出会ったモーハナラージャーCEO。
「省人化投資が旺盛な日本はドローン需要が世界で最も急拡大する」と語る。

 最先端のロボティクス研究が進むスイスとインドにも研究拠点を構える。
研究や市場の最適地であれば、オフィスの場所は世界中どこでも構わない。

インドやスペインなど世界各国から人材を引き寄せ、社員約40人のうち7割が外国人だ。
モーハナラージャーCEOにとって「国籍に意味はない」。

『すぐ市場の覇者』
 ボーン・グローバル(世界生まれ)。

国籍や国境に縛られず、創業時から世界展開を前提にしたスタートアップ(起業)が相次いでいる。

優れたアイデアや技術を生み出すスタートアップ企業が世界を変え、市場の覇者になる時代が来た。

 スマートフォン(スマホ)で国際送金できるモバイルマネーで7割以上のシェアを占める”巨人”が、英ワールドレミット(ロンドン)。

デンマークやケニア、バングラデシュ……。
送金網は、世界140カ国以上に広がる。

 「国内送金の習慣を変えた」。
ソマリア出身のイスマイル・アハメドCEOは語る。

英国留学中に国際送金の不便さに疑問を持ち、国連勤務などを経て10年に起業した。

 現金を店舗に持ち込むのが一般的だった国際送金をいち早くデジタル化し、高額だった手数料を低減。

家族や友人にショートメッセージを送る感覚で、世界中に送金できるようにした。

かっては1カ月に1回が一般的だった送金が、「毎日できるようになった」(アハメドCEO)。

 社員が3人だけのKAKAXI(カカシ)は今春、食品世界最大手のネスレ(スイス)との商談をまとめた。

ネスレがコロンビアで運営するコーヒー豆農場で、半年前に製品化したばかりの農作物監視システムを納入した。

 大塚泰造CEOは起業の地に縁もゆかりもない米シリコンバレーを選んだ。
「米国は農業関連の市場が大きく、世界中の投資家から資金を集められる」。

商談相手のほとんどが、欧米のグローバル企業だ。

 グローバル経済の進展やIT(情報技術)化の波が世界を覆い、各国に散らばる人材や技術を簡単に集められる。

世界中のどこにでもアクセスできる中、日本に閉じこもっていては成功のチャンスはつかめない。

    ◆

 スタートアップ企業の常識が変わろうとしている。

投資家を引き寄せるユニコーンと呼ばれる未上場企業が世界でひしめき、教育や医療など国のインフラも支える。

過去の失敗こそが、起業家の資産となる。
スタートアップは、ここまで来た。


●関連日経記事:2016年12月25日グー・ブログ「息子たちに読んで欲しい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 開発『国際送金「高くて遅い」』=「手数料にメス」 謎の内訳 (上)=』(2016年12月22日付)

●関連日経記事:2017年8月28日グー・ブログ「同上」投稿記事参照
 日経新聞 経済「投資家が抱える2つの課題」=歴史的な企業環境の変化は企業の優勝劣敗を加速=』(8月15日付)

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日経新聞 経営「人を基軸に、機械を脇に」=コンビニ 生産性向上の鉄則=

2017年08月30日 05時06分39秒 | 経営
日経新聞 2017年8月28日(月) P.5 企業面
連載コラム『経営の視点』=編集委員 田中陽=

『コンビニ 生産性向上の鉄則』=人を基軸に、機械を脇に=

 千葉県松戸市の水戸街道沿いのコンビニで昨年9月、一風変わった看板替えがあった。

中堅の「スリーエフ」が「ローソン・スリーエフ」に。
スリーエフの名を残すが、運営はローソンが担う。

オーナーも従業員もそのまま。
店も駐車場の大きさも変わらないが、劇的に変わったことがある。

女性の客数が大きく伸び、1日あたり売上高が1年前に比べ2割も増えたのだ。

 コンビニは24時間営業が原則、扱う商品は弁当など食品が中心。
外見も似たり寄ったりだが、運営主体によって業績は差がつく。

店のオーナー、佐々木一弘さん(49)も「同じコンビニ、同じ24時間なのに」と驚いた。

売上高が伸びたからだけではない。
仕事の進め方が別物だったからだ。

 新製品が毎週、棚に並び、3000に満たなかった品目数が独自商品を軸に4000に増え、売り場づくりに追われた。

佐々木さんたちは当初、ローソン流の働き方を覚えるのに「悲鳴を上げた」という。

 だが、混乱が収まり、結果が数字で分かると疲労感が充実感に。

スリーエフ時代、周辺の競合コンビニの充実した品ぞろえを見たときの徒労感とは大きく違う。

 足の踏み場もなかった店内倉庫は片付き、今では打ち合わせもできる。
商品力、精緻な情報システムで商品回転数が上がり、無駄な在庫が消えたためだ。

見切り品の選別や廃棄という後ろ向きの仕事が減れば、接客時間が増える。
感じるのは働く手応えだ。

佐々木さんの妻は「笑うことが多くなった」と振り返る。

 有力コンビニは狭い店でも高収益をたたき出す。

自動化、省力化の努力を惜しまないが、最大手のセブンーイレブン・ジャパンはあえて聖域を残している。

商品や数量を決める発注業務だ。

天候、販売傾向、地域情報などを参考に仮説を立て、端末に発注量を人が判断して入力する。

実際に仮説通りだったかを検証し、次の発注に生かす。

 セブン本社1階の店で働く大学生の姉崎拓弥君(22)は今夏、スープ総菜の発注量を2倍にして売り上げを増やした日がある。

天気予報で、猛暑から一転して翌日の気温が低下することを知り、強気に発注。

「度胸もいった」が、データを参考にスープ総菜は体感する温度差で売れ行きが決まると読み、当たった。

 流通業界は省力化のために自動発注の導入が進むが、セブンは一線を画す。
「商人(あきんど)」の意思を発注に込めれば、生産性向上を狙えるからだ。

仮説と検証を繰り返し、発注の精度を高める。
自身の成長も実感し、仕事も楽しくなる。

姉崎君のバイト暦は3年になる。

 ダイエー創業者の中内功氏は「私とコンピューターとパートがいればいい」と語り、社員をグループ企業に大量出向させたことがある。

人心は離れ、本体の業績は傾いた。

8時間労働のパートの勤務体系を休憩(1時間)の必要ない4時間刻みにすると、長く働きたい優秀なパートは同社を去り業績は一段と悪化した。

 労働集約的な小売業の生産性向上の議論は人の仕事を機械に置き換えることに進みがちだが、小売業で働く意味、醍醐味を知らないと机上の生産性向上になりかねない。

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日経新聞 経済「米、緩和の出口に残る難所」=編集委員 滝田 洋一=

2017年08月29日 08時49分25秒 | 経済
日経新聞 2017年8月28日(月) P.6 オピニオン面
連載コラム『核心』

『米、緩和の出口に残る難所』=編集委員 滝田 洋一=
「政権、議会に波乱の芽」


 米西部ワイオミング州の保養地ジャクソンホールの朝晩は、もう秋のようで肌寒い。
今年も先週末、この地に世界の中央銀行トップが集まり、シンポジウムが開かれた。

 仲間内の集まりだからだろう。

8月24日夕、ゆっくりした足取りで会場入りしたイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長の表情は、通常の記者会見の時に比べてずっとくつろいでいた。

黒田東彦日銀総裁も待ち受ける記者に余裕の笑顔を浮かべた。

 そんな中央銀行トップに世界中の市場関係者の目がくぎ付けになるのはほかでもない。
金融の量的緩和からの出口が各国の焦点だからだ。

イエレン議長、黒田総裁、そしてドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁の位相は異なる。

 すでに国債の買い入れをやめているFRBはいつ保有残高を減らすか。
ECBは買い入れをいつから減らすか。

日銀にとって出口がまだまだ先なのに対し、米欧は具体的な日程に注目が集まっている。

 先頭を走るFRBは、中央銀行というつっかい棒をなくした債券市場がどう反応するか、という難題に直面する。

イエレン議長は、あらかじめ保有債券の減額のスケジュールを示し、市場がそれを日常の出来事として織り込めるようにしようと狙っている。

    ◆    ◆

 FRBだけの問題ではない。

国債の発行者である米財務省や、国債を扱う民間金融機関、保有する機関投資家にとっても、量的緩和からの出口はど真ん中の課題である。

財務当局や民間金融界は、どんな姿勢を取っているのか。

 8月1日午前11時15分、ワシントンのホワイトハウスの真向かいにあるヘイ・アダムズ・ホテルの一室。

金融界の有力者15人が顔をそろえた。

 米財務省に国債管理政策を助言する、資金調達諮問会議の面々だ。

ブラックロック、JPモルガン・チェース、ゴールドマン・サックスなどの市場担当責任者で構成する。 

この日の議題は、ずばりFRBのバランスシート(貸借対照表)正常化である。

 諮問会議の内容は翌2日、ムニューシン財務長官に報告書として提出された。

 ▼FRBは9月にもバランシートの縮小を決定するはずだ。
2%の物価目標の達成に手間取っているので、利上げの再開は12月になろう。

 ▼バランスシートを縮小し始めるのは10月。

FRBの準備預金の適正水準は6500億ドル程度なので、バランスシートの適正化が完了するのは2021年の1~3月期だ。

 ▼その時点でFRBの国債保有額は1.7兆ドルと、現時点の2.5兆ドルから大幅に減少する。

正常化の過程で、期間が長い10年物国債を保有することに対して投資家が要求する上乗せ金利は、控えめに見て0.4%高まる(=債券価格は今より大きく下がる)。 

 ある程度の金利上昇は避けられない。

目先の財政資金の調達コストを抑えるだけなら、FRBの出口政策をけん制してもおかしくないが、諮問会議の参加者の念頭にはない様子だ。

 国債発行額を主に左右するのは財政赤字の動向だと割り切っているからだ。

金融政策のかじ取りは経済実態に沿うべきで、リーマン・ショック後の非常手段として膨らませたFRBの保有資産はは波風を立てずに縮小させたい。

この辺りが「ワシントン・ウォール街共同体」の共通認識だ。

    ◆    ◆

 もちろん、FRBを「身代わり地蔵」とすることで、金融機関はバブル処理の荷を下ろし、民間企業も低利で潤沢な社会発行や借り入れを楽しんできた(=ちょうどいい湯加減の経済情勢)。

今年のジャクソンホールのシンポのテーマは「金融の安定」。

量的緩和であふれ出したマネーが資産価格のバブルを作り出したのでは、との心配が背景にある。

 8月に入ってからの米国株の波乱は、量的緩和の出口を巡るぎくしゃくの予兆といえる。
ただし、水鳥の羽音に驚く平家のように市場に動揺が広がっているとまではいえない。

先の諮問会議ではこんな議論もあった。

金利の上昇は株式などリスク資産に対し投資家が求める超過収益(リスクプレミアム、=金利差を拡大しないとリスク資産からマネーが逃げていく状態)の大幅な拡大を招きかねない。

大規模な債券と株式のダブル安が起きる可能性もあるが、金融システムに危険を及ぼすほどではあるまいーー。


    ◆    ◆

 リーマン・ショックの導火線となった07年8月のパリバ・ショック。
信用力の低い個人向けの米住宅ローンの焦げ付きが引き金となった。

住宅ローンという金融機関や投資家にとっての「資産」側の不良債権化が問題とされた。

 だが当時、言いしれぬ不安を醸成したのは「負債」側の問題だった。

米金融機関が住宅ローンなどを担保に、コマーシャルペーパーといった形で、市場から短期の資金調達をしていた。

この分が回らなくなったのだ(=どの金融商品がどのくらいサブプライムローンを包含しているか、どの金融機関がどのくらいの額をサブプライムローンに投資しているのか、外からうかがい知ることができない状態。 どこに、どれだけの危険が存在しているのか、誰も分からなくなり、疑心暗鬼が急速に金融界全体に広がった)。

金融規制の強化で、10年後の今はそうしたリスクは相当に軽減した。

 足元で火種がくすぶるのは、経済や金融の「内部」ではなく、(米国のトランプ=)政権と議会という「外部」の波乱だろう。

 米国では9月29日に連邦政府の債務上限の引き上げ期限が迫っている。

上限を引き上げられず、国債を発行できなくなると、米政府のデフォルト(債務不履行)という事態に陥りかねない。

 まさか。

でもメキシコとの壁を作る予算が認められないなら「政府閉鎖もいとわない」と大統領自身が脅しをかけるなど、トランプ政権ではそのまさかが頻発する。

イエレン議長も胸の内では「何もこの微妙な時期に」と気が気ではあるまい。

(ジャクソンホールにて)


●関連日経記事:2017年8月27日グー・ブログ「息子たちに読んで欲しい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 国際「ドルむしばむトランプ氏」=米CA大サンタバーバラ校 B・コーヘン教授=』(7月25日付)

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