日経新聞 経営「日本の100年企業に学ぶ」=「三方よし」 アジアで共有=

2015年03月31日 10時26分58秒 | 経営
日経新聞 2015年3月30日(月) P.11 企業面
連載コラム『経営の視点』=編集委員 宮内禎一=

『日本の100年企業に学ぶ』=「三方よし」 アジアで共有=

 「バントー」「サンポウヨシ」。

とあるセミナーでタイ人経営者が習ったばかりの言葉を口々につぶやく。

老舗(しにせ)の経営を支える「番頭」、近江商人(おうみしょうにん)の経営理念でもある「売り手よし、買い手よし、世間(せけん)よし」の「三方よし」のことだ。

 2月23日、一般財団法人海外産業人材育成協会(HIDA、本部・東京)と大阪市の中小企業支援機関「大阪産業創造館」が同市で開いたセミナーにタイの中堅・中小7社の経営者が参加した。

テーマは「日本の長寿企業」。
創業125年の製版会社、渡辺護三堂(大阪市)の5代目、宮田玲社長らが講師を務めた。

 同社は明治時代に新聞社などに挿絵(さしえ)の彫刻を納めて以来、製版一筋で技術を磨いてきた。

今は段ボール箱やパッケージの製版・デザインが主力だ。

社名に創業時の社是(しゃぜ)「愛情」「技術」「信頼」の3つを護(まも)る決意を込めた。

 「企業の基本は人の育成。 125年で一度もリストラをしていない」「人のつながりがものづくりの力になる」「ものづくりは奥が深い。 究めるに多角化は不向きだ」。

宮田社長の話に参加者が耳を傾ける。

 タイ産業界では多角化で事業拡大が進む一方、経営者と従業員のつながりが弱いとされる。
「拡大より存続を重視し従業員や取引先との関係を大切にする考えに驚いたようだ」。

HIDA関西研修センターの宮本真一館長は語る。

 1985年のプラザ合意以降、タイには日本企業が多数進出し現地企業も育ったが、2代目への事業承継が課題になっている。

 韓国・中央日報が発行する経済週刊誌は昨年12月、日本や欧州の長寿企業の特集を掲載した。

韓国では100年以上続く企業はわずか7社程度。
日本の2万7330社(2014年の帝国データバンク)と格段の違いだ。

同氏は成長を急いだ大規模投資の失敗や相続税率の高さが韓国企業の存続を妨げていると指摘し、技術蓄積のために企業の継続が必要とまとめた。

 企業存続への関心に目を付け、HIDAと大阪産創館はアジアの経営者に日本の経営理念を学んでもらう有料研修を始める。

産創館の山野千枝チーフプロデューサーは「永続性を重視する日本のファミリービジネスは、実は中小経営の王道なのでは」と話す。

 HIDAは前身の組織も含めると1959年以来、研修や専門家の派遣で発展途上国の産業人材を育成してきた。

研修修了者は170カ国の37万人に上り、43カ国に71の同窓会があるという。
同窓会が日本の中小とつながる窓口になる。

 日本の中小企業も海外進出が求められる時代。
アジア企業の中にも韓国企業の迅速な経営判断など見習うべき点は多い。

アジアに進出する日本の中小企業が現地企業と互いに学び合う機会も増えつつある。

 日本のものづくりの力は多角化に走らずに力を磨いてきた中小企業の集積に支えられている。

アジアで価値観を共有すれば、現地産業の裾野の広がりと安定化につながり、アジアを基盤に成長を目指す日本の大手にとってもメリットは大きい。

アジアで「サンポウヨシ」が広まるのも夢ではないはずだ。

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日経新聞 インターネット「医師向け交流サイト運営」=メドピア社長 石見 陽氏=

2015年03月31日 09時49分03秒 | インターネット
日経新聞 2015年3月30日(月) P.13 新興・中小企業面
連載『起業の軌跡』=メドピア社長 石見 陽氏=

『医師向け交流サイト運営』=医師同士 知恵集める=

 「MedPeer」は現役の医師でもある石見陽が立ち上げた医師専用の交流サイト。

医師同士が医薬品や医療機器を論評したり、様々な議論をしたりする。
会員数は日本の医師の4分の1に相当する7万人超。

運営するメドピアは昨年6月に東証マザーズに上場した。

「医師が前向きに情報交換し、外部にも発信する場をつくる」という起業の初志を忘れず、さらに使いやすいサイトを目指す。

 石見は医師となった後、循環器内科医としての専門性を磨くため東京女子医科大学の門をたたいた。

ところが、ほどなく同大で医療事故が起こり患者が激減した、
「自分たちは頑張っているのだが」。

医師という職業への一般からの評価と自らの気持ちの差に驚き、もっと”世間”を知ろうと異業種交流会に積極的に参加した。

折しもIT(情報技術)を中心とする起業ブーム。

石見も気軽な気持ちで会社を立ち上げた。

 医師に病院などの勤務先をあっせんする人材紹介会社があるが、複数の企業のサービスに登録するのは手間がかかる。

石見はワンストップで登録できるサービスを考えつき、月に数百万円の利益が出るまでになった。

ただ、サイドビジネス感覚に変わりはなかった。

 2006年に次の転機が訪れた。
福島県で出産中に妊婦がなくなり、産婦人科医が逮捕されたのだ。

石見を含めた多くの医師が避けられない事故だと考えたが、メディアなどの捉え方とは差があった。

「医師同士がしっかりと情報交換し、発信していく必要がある」。
07年に現在につながるサイトを立ち上げた。

 ただ、「医師のためのサイト」とアピールしても簡単には会員は増えなかった。
石見は医師の集まる学会などに出向いて説明を繰り返した。

多い時には月の半分を学会の場で過ごすこともあった。
熱意は徐々に伝わり、1年半で会員は7千人に増えた。

広告収入を中心に売り上げも伸びた。

 現在は会員同士が意見交換するコミュニティー機能や、医薬品や医療機器の効果や使い勝手を評価する掲示板などを提供する。

石見は現在も週1日は内科医として診療の現場に立つ。
常に医師目線を忘れず、医師と世間をつなぐ企業を目指す。


▲いわみ・よう

 1999年信州大学医学部卒。

2004年にメディカル・オブリージュ(現メドピア)設立。
千葉県出身。

41歳。

●『診療に欠かせぬ存在に』
 2015年9月期見込みの売り上げは14億5千万円。

製薬会社などからの広告収入が9割を占める。
今後は電子カルテなど、より臨床業務に入り込んだ事業の展開も視野に入れる。

電子カルテは医師同士がつながる為のメディアにもしたい考え。
「現在のサービスは診療を行うのに便利だが必須ではない。これからは日常の診療にはメドビアが欠かせないというレベルまで機能を高めたい」と意気込む。

(山崎大作記者)


◆関連日経記事:
2015年4月8日グー・ブログ「息子たちに読んで欲しい日経記事」投稿記事参照
 『日経新聞 健康「産科医・外科医の数が減少」(2011年11月17日付)』

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日経新聞 自己啓発「倒産の修羅場に立つ ①」=弁護士 瀬戸 英雄さん=

2015年03月31日 09時00分56秒 | 自己啓発
日経新聞 2015年3月30日(月) P.28 生活面
連載『人間発見』=弁護士 瀬戸 英雄(せと・ひでお)さん=

『倒産の修羅場に立つ ①』=管財人の道 原点は一冊の本=初仕事、警官に守られながら=


 株主、銀行、取引先、経営陣。

我執(がしゅう)と欲がむき出しになる事業再生の現場に乗り込む倒産弁護士の第一人者だ。

「困ったときの瀬戸」と呼ばれ、ヤオハンジャパン、マイカル、日本航空(JAL)などの大型案件で管財人を歴任。

「やり直しのできる社会」の実現を目指してきた。



 高校生の時、遠縁の人に「英雄くん、日本で一番難しい試験は何だと思う」と聞かれ子供らしく返答に困っていたら「司法試験だよ。自分の背丈ほどの本を読み、それでも一握りしか受からない」と言われました。

「それは面白そうだ」と思い、弁護士を目指すようになりました。

 大学は学園紛争で荒れていたので、ジャズ喫茶で本を読んでいました。
1976年(=昭和51年)、4回目のチャレンジで司法試験に合格。

そのころ「再建の神様」といわれた経営者、早川種三(はやかわ・たねぞう)氏の本を読み「会社再生の管財人こそ男の仕事だ」と考えるようになりました。

 4年間、イソ弁(法律事務所に雇われる「居候(いそうろう)弁護士」)をやった後、83年に仲間と事務所を開きました。

無名の弁護士に大型の倒産案件の依頼が来ることはまずないのですが、その年の8月、運よくある化学プラント設計・施工会社の破産管財人の仕事が回ってきました。

多分、お盆でベテランの弁護士が休みだったのでしょう。

 筋のよくない金融業者が80万円の不渡り手形で会社が持つ1億8000万円のビルを占拠していたので、地元の警察に警護をお願いしてビルに入り、封印執行と明け渡し要求をしました。

これが法人の破産管財人として最初の仕事でしたが、たまたま事件が全国紙で報道されたため、「倒産をやっている瀬戸というやつがいるらしい」と知られるようになりました。

 とはいえ、駆け出しの弁護士ですから仕事を選べる立場ではありません。
原則として来る仕事は何でも引き受けました。

 85年9月、先輩の弁護士に声を掛けられ。米ロスアンゼルスで殺害された日本人女性の夫による保険金殺人容疑、いわゆる「ロス疑惑」の弁護人を引き受けました。

 「そんな事件をやると、お前の子供がいじめられるぞ」と忠告してくれる人もいましたが、私はあえて引き受けることにしました。

どんな事件でも、職業として弁護に全力を尽くすのが弁護士の仕事だと思ったからです。
みんなで被疑者を「けしからん」と責めるだけでは法治国家は成り立ちません。


 「事件はダイヤモンド同じ。 別の方向から光を当てれば、違う光り方をする」。
ある刑事法学者の言葉です。

もっともこの事件は公判が始まって半年強で弁護人全員が被告人に解任されました。
少しホッとしたのも事実です。

・・・・・・・・・・
 この連載は編集委員の大西康之が担当します。


●ことばのメモ:
『封印執行』
~封印執行とは、破産財団(=債務者)に属する財産の持ち出しや他者による不法占拠のおそれがある等、破産管財人が破産財団の(=財産の)保全の必要があると認めたとき、破産管財人が、裁判所書記官、執行官または公証人に対して、破産財団に属する財産に封印をさせることをいう。対象物件に封印票と公示書が貼付され、その物件が破産管財人の占有下にあることが公示される。

(「弁護士法人さくら北総法律事務所」のネット資料より引用)

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日経新聞 教育「高校入学までに『200~300万円』目標」=早めの準備 重要=

2015年03月31日 08時22分57秒 | 教育
日経新聞 2015年3月30日(月) P.27 大学面
『待望の学生生活…でも家計負担重く』=奨学金 賢く使おう=

『給付型』~私大で充実、『貸与型』~自治体でも

 子どもの大学進学を考えると、入学金や授業料などの出費が気になるという親は少なくないだろう。

親の収入が伸び悩む一方で学費は高止まりしており、いまや奨学金を利用する学生は5割を超すとの調査もある。

お金が足りない時は少しでも有利な支援制度を使い、家計に役立てたい。

(本文略)

▲大学が用意する給付型奨学金の例
(大学・奨学金名):(対象者や給付額など)      (人数)

・早稲田大
 「めざせ!都の西北奨学金」:地方出身者が対象。年40万円給付  約1200人

・立教大
 「自由の学府奨学金」:地方出身者が対象。年50万~70万円給付  約250人

・明治大給付奨学金:最大で授業料の半額を給付    約1440人
・立命館大修学奨励奨学金:授業料の25~50%を給付    約1500人

・金沢工業大
 「スカラーシップフェロー」:国立大授業料との差額を給付    約40人

・お茶の水女子大
 「みがかずば奨学金」:1、2年次に30万円ずつを給付    約25人

・輝け未来!!新潟大入学応援奨学金:
 入学手続き時に40万円を給付。学生寮の優先確保なども    約50人


『高校入学までに「200万~300万円」目標』=早めの準備 重要=
 日本政策金融公庫の調査によると、大学在学中にかかる授業料や入学金、教材費、通学費などの学費の総額は国公立大で平均511万円、私立大理系では同788万円に達する。

子どもの大学進学を前提とするなら、早めの準備が欠かせない。

 もっともお金がかかるのが、受験の追い込みから入学関連の費用がかかる時期。

ファイナンシャルプランナーの豊田真弓氏は「この間を貯蓄で乗り切れるかで、将来の負担が大きく変わる」と指摘する。

貯蓄が少ないと奨学金や教育ローンへの依存が大きくなり、返済が重くなる。

 貯蓄の目標額は「高校入学までに200万~300万円」(豊田氏)。
塾代や部活の費用などは学年が上がるにつれ高くなる。

子どもが高校生になると貯蓄が難しくなりがちで、小さいうちから備えることが重要だ。

 例えば児童手当を標準で全額ためれば総額は約200万円。
毎月5000円ずつ積み立てれば15年間で90万円になる。

学費保険を使うなど、普段の家計と切り離して貯めるのも一案だ。


●関連日経記事:2015年3月12日グー・ブログ「息子たちに読んで欲しい日経記事」投稿記事参照
 『日経新聞 社会「給与天引きでお金持ちに」=投資賢者の心理学=』(3月11日付)

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日経新聞 国際「辛亥革命から100年」=中華思想に戻る中国=(2011年10月8日付)

2015年03月31日 04時50分25秒 | 国際
日経新聞 2011年10月8日(土) P.6 国際面
特集連載『辛亥(しんがい)革命から100年 (中)』=息吹き返す中華思想=
   
『カネ・領土 米に気後れせず』

 8月、四川(しせん)省成都の四川大学を訪れたバイデン米副大統領に一人の医学生がかみついた。 

「米国債は本当に安全なのか。 言葉でいくら『大丈夫』と言われても、我々は安心できない」。

「1.2兆ドルの米国債」
 中国は約1兆2千億ドルの米国債を保有する。 

米国に大量の資金を供給する最大の債権者だ。

 その中国で、米国債の格下げを機に「貸した金は本当に戻ってくるのか」との懸念が広がる。 

副大統領は財政赤字の削減策を説明し、「あなた方の資金は安全だ」と訴えたが、医学生は納得した風がない。

 辛亥革命が起きた100年前、米中の立場は逆だった。 

日米欧列強は1900年に北京を襲った義和団の乱を鎮圧し、清朝(しんちょう)政府に39年の分割払いで巨額の賠償金をのませた。 

米国は列強の一員としてカネを取り立てる側に回り、清朝に財政資金を担保として差し出すよう要求。

首が回らなくなった清朝は、滅亡への坂道を転げ落ちていく。

 あまりに過酷な賠償金の請求には、米国内でも「やり過ぎではないか」との批判が出た。 

米政府は11年、賠償金の一部を中国に返す形で、米国への留学希望者の訓練学校「精華(せいか)学堂」を北京に設立。 

後に胡錦濤国家主席ら多くの指導者を輩出した精華大学の前身だ。

 バイデン副大統領が訪中した際にホスト役を務めた習近平国家副主席も精華大の卒業生。 習副主席は来年秋の共産党大会で、胡主席を継いで最高指導者に就くことが確実視される。

 米国がつくった学校の卒業生が2代続けて中国のリーダーになり、輝きを失いつつある米国に挑戦する構図は歴史の皮肉だ。 

医学生の強気の発言には、世界2位の経済大国へと復権した中華民族の自負がにじむ。 
米国への気後れはもはやない。

 「清朝は英国に香港を渡し、日本に台湾を奪われたではないか」。 
中国で公開中の映画「辛亥革命」の一場面。 

孫文率(ひき)いる革命派の若者が、「革命に大義はない」とうそぶく清朝の官憲に言い返したセリフだ。

 1840年のアヘン戦争で英国に敗れるまで、中国は世界の国民総生産(GDP)の3割を占める超大国だった。 

「世界の中心」だと思っていた祖国が列強に踏みにじられる衝撃。 
領土の回復は辛亥革命の大義の一つになった。

 1997年の香港。 
99年のマカオーー。 

失った領土を次々に取り戻した
中国共産党は、89年の天安門事件で失墜した自らへの信認も回復した。 

次は、自国の一部と見なす台湾の統一を狙う。

「武器売却に反発」
 米政府が9月、台湾への武器売却方針を議会に通告すると、中国政府は「13億人の中国人民の民族感情にかかわる問題だ」(張志軍外務次官)と激しく反発した。

 今回の売却は、台湾が求める新型戦闘機を含まない。 
専門家の多くは「台湾海峡の軍事バランスは中国優位のまま変わらない」と分析する。 

にもかかわらず中国側が「これ以上の自制は難しい」(人民解放軍の関係者)と怒るのは、領土関連で弱腰だとみなされると、辛亥革命のように国民の不満のはけ口が体制に向かいかねないためだ。

 「精華大の創設と同じ年に辛亥革命が勃発し、中国は『中華』の振興に向けた奮闘の道を歩み始めた」。 

胡主席は4月の精華大100周年記念式典でこうあいさつした。
世界の中心を意味する「中華」。 

むき出しになった民族意識は、世界を不安定にしかねない。

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日経新聞 人物紹介「『建国の父』が残した座標軸」=シンガポール初代首相・クアンユー氏=

2015年03月30日 14時39分25秒 | 人物紹介
日経新聞 2015年3月29日(日) P.13 日曜に考える面
連載コラム『羅針盤』

『「建国の父」が残した座標軸』

 シンガポールの初代首相、リー・クアンユー氏が23日未明に死去した。

株式市場は同日も通常通り取引を続け、株価は小幅な動きに終始した。

「建国の父」を失って(シンガポール経済や政治に=)混乱が生じるとの懸念もあったが、市場の反応は拍子抜けするほど落ち着いていた。

 リー氏は50年前の建国時から同国を率い、「独裁」と批判する声もあった。
だが強力な指導者が退場しても同国経済にはほとんど影響は生じていない。

大型商業施設は買い物客でにぎわい、オフィス街の通勤風景は普段と変わらない。

 強い権力を握った指導者は、国内の指揮命令系統をすべて掌握しようとするのが常だ。
権力者が去ると意思決定が滞り、社会や市場は混乱に陥りやすい。

リー氏も経済活動の端々に口をはさんだが、強固な市場システムが確立した後は企業の自主性に委ねた。

 1990年代後半に発生したアジア通貨危機への対応には、リー氏の哲学が色濃く反映されている。

通貨シンガポールドルも外国資本による売りにさらされたが「(外国ファンドが)売るのは防げなかった」(リー氏)。

銀行が抱える不良債権の分類基準を厳格化し、情報開示の対象も広げた。
結果的に同国市場の信頼性が増し、アジアの金融拠点としての地位固めにつながった。

あわてて資本規制を導入した周辺国とは対照的だ。

 マレーシアに住む40歳代男性は「シンガポールの存在は東南アジアに勇気を与えた」と話す。

熱帯の小国でも世界有数の富裕国になれることを証明し、周辺国の住民に明確な目標を与えた。

各国はリー氏が導いた経済成長を追いかけ、市場整備を急ぐ。

 世界経済を取り巻く環境は複雑さを増し、リー氏の足跡をたどるだけでは成長は難しくなった。

それでもシンガポールの50年の歴史は、新興国の将来をはかる座標軸として残る。

(シンガポール=吉田渉記者)


●関連日経記事:2015年3月27日グー・ブログ「息子たちに読んで欲しい日経記事」投稿記事参照
 『日経新聞 国際「一党支配、もろ刃の剣に」=リー・クアンユー後のアジア (下)=』(3月25日付)

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日経新聞 海外メディア「ウォーレン・バフェット氏 50通目の手紙」

2015年03月30日 14時04分11秒 | 海外メディア
日経新聞 2015年3月29日(日) P.13 日曜に考える面
連載『海外メディアから』=編集委員 三反園哲治=

『バフェット氏50通目の手紙』

 米国の著名投資家ウォーレン・バフェット氏は毎年春、経営する投資会社バークシャー・ハザウェイの株主に宛てた手紙を公表する。

マーケットや経済に関する鋭い考察にあふれる手紙は、世界中の投資家や経営者が注目する。
今年2月末に出した手紙がちょうど50通目で話題となった。

 今年の手紙では、米ウォール街の投資銀行が高いアドバイス料を稼ぐために、企業に割高なM&A(合併・買収)を盛んに勧めていると苦言も呈した。

金融界は貪欲だと以前から厳しく批判してきた。

3月3日付米紙ニューヨーク・タイムズは「バフェット氏のこうした考え方が一般大衆にも慕われ、庶民にも愛される数少ない富豪の1人となっている」と記した。

 5日付英紙フィナンシャル・タイムズは投資家としての資質を高く評価した。

「30年後にも生き残る強いブランドを持つ会社を見つけて買うべきだと理解できても、それをバフェット氏のように、こだわりと一貫性を持って実行するのはほとんど不可能に近い」と指摘した。

 16日付米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、米マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ氏のブログでの発言も伝えた。

「ウォーレンの手紙50通をすべて読んできた。 今年の手紙はこれまでの中で最も重要だと思う」と。

2人は日ごろから親交がある。

 英誌エコノミスト(7日号)は不満をみせた。

「50通目となるがバフェット氏の株主への手紙は例年と異なり、疑問を解消するより問題を曖昧にしている」と評した。

 株式投資が事業の中心だったバークシャーは、M&Aによりコングロマリット(複合企業)に変身した。

バークシャーの成長はバフェット氏個人の才能のおかげなのか、複合企業という事業モデルそのものに起因するものなのか説明が欲しいと指摘。

さらに、84歳と高齢のバフェット氏が引退の時期や方法を明らかにしないのも不透明だという。


●関連日経記事:
2015年3月3日グー・ブログ「息子たちに読んで欲しい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 人物紹介「バフェット氏、強気の投資」=米にチャンスの鉱脈=』(3月2日付)

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日経新聞 国際「ロシア 文豪の苦悩再び」=「大国主義」西欧と衝突=

2015年03月30日 13時08分39秒 | 国際
日経新聞 2015年3月29日(日) P.13 日曜に考える面
連載コラム『地球回覧』

『ロシア 文豪の苦悩再び』=「大国主義」西欧と衝突=

 「またもやヨーロッパとの衝突である」ーー。

1876年、「作家の日記」(川端香男里訳)にこう書き記したのは、ロシアが生んだ文豪、ドストエフスキーだった。

 ロシア帝国はその翌年、露土戦争に突入する。
オスマン・トルコの支配に反乱を起こしたバルカン半島のスラブ系民族の支援を開戦の理由に掲げた。

ヨーロッパからは勢力圏の拡大を狙っているとして「またもやロシア人が不審の念をもって」見られた。

 当時、ロシア経済は国際的な信用を失い、通貨ルーブルは暴落した。

ドストエフスキーは、スラブ諸民族を見捨てさえすれば「信用は回復し、ルーブルはその本来の価値を持つようになる」と分析しながらも、西欧の圧力に屈すべきではないと主張した。

    ◆    ◆

 それから140年足らず。

クリミアを一方的に編入した後もウクライナへの介入を続け、ヨーロッパと激しく対立する今のロシアは、ドストエフスキーの時代と重なる。

 ロシア社会では今、反欧米感情が渦巻く。

最新の世論調査によると、約8割が米国に反感を抱き、欧州連合(EU)との関係にも約7割が否定的だとの結果が出た。

冷戦後では最悪で、亀裂は再び修復が困難なほどに広がった。

 いつごろから西欧とロシアは衝突を繰り返すようになったのか?
 
 モスクワ国立国際関係大学のユーリー・ドビーニン教授は「18世紀後半、啓蒙専制君主エカテリーナ2世の治世に本格化した」と指摘する。

ロシア帝国がポーランドなどに領土を広げ、クリミア半島を併合。
欧州の主要なプレーヤーとして頭角を現した時期だ。

その後、ロシアは大きく分けて3度、西欧と衝突した。

クリミア戦争や露土戦争が続いた19世紀後半、ソ連に国名を変えた冷戦期、そして今のプーチン政権。

ドビーニン教授は「地政学的争いがロシア特有の社会思想やイデオロギーによって増幅される時、対立が深まる」と話す。

 領土を急速に広げたロシア帝国は露土戦争で同胞を救う「汎スラブ主義」を訴えた。
ソ連は共産主義を目指した。

21世紀のロシアが唱えるのは「保守主義」だ。

プーチン政権の保守主義は、欧米の影響力が国内に入り込むのを阻み、国の主権と勢力圏を守る中心的な社会思想になった。

 ロシア外交・政治専門家のドミトリー・トレーニン氏も「(プーチン政権の)ビジョンの根本には正教の伝統に根ざした保守的な価値観がある」と分析する。

プーチン大統領は、保守主義を宣言した2013年12月の演説で「多くの国で倫理規範や道徳が修正されている」と語り、中東諸国などに「内政干渉」を繰り返す欧米を批判した。

 プーチン氏は正教を利用するのが巧みだ。

14年3月にクリミア編入を表明した演説では「古代ヘルソネス(クリミア南部)でウラジミル聖公が洗礼を受けた」と述べ、クリミアが正教会の始まりとなった聖地だと強調した。

今年1月には、ロシア正教会のキリル総主教が初めて下院で演説し保守的な価値観を訴えた。

    ◆    ◆

 プーチン氏の主張には、ロシアの伝統を守るという保守主義を、対外強硬姿勢にすり替える危険な試みが透けて見える。

欧米こそ世界を混乱させていると非難し、ウクライナへの介入を正当化した。

正教諸国の盟主ロシアこそキリスト教世界を救うという近代の社会思想「ロシア・メシアニズム」の影もちらつく。

 西欧との衝突に絶望したドストエフスキーは「なぜヨーロッパの信頼を求めなければならないのだろうか?」とロシア独自の道を説き、「ロシアの翼下に全スラヴ民族を団結させる」との「大義」を掲げた。

今のウクライナ問題でもこれに似た身勝手で大国主義的な論理が見える。
ロシア自身が変わらなければ、欧米との和解は難しい。

(モスクワ=石川陽平記者)


●関連日経記事:
2014年3月19日グー・ブログ「息子たちに読んで欲しい日経記事」投稿記事参照
 『日経新聞 国際「クリミアに関わる歴史メモ」=ウクライナ紛争=』(2014年3月18日付)

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日経新聞 国際「米CA州『水はあと1年分』警告」=日経電子版より=

2015年03月30日 12時10分18秒 | 国際
日経新聞 2015年3月29日(日) P.10 日曜に考える面
連載『電子版 セレクション』

『「水はあと1年分」警告』=カリフォルニア州、干ばつ4年目=

 全米最大の人口を抱えるカリフォルニア州で水不足が深刻さを増している。

今年で4年目に入った干ばつは、野菜や果物、アーモンドの主要産地である同州の農家を直撃。
米航空宇宙局(NASA)は「州内の水源に残された水はあと1年分」と警告する。

非常事態を宣言した州政府による水の利用制限が強化される中、海水を飲み水に変える技術に注目が集まっている。


『NASAが衝撃的データ』=海水の淡水化 急ピッチ=
 「あすからでは遅い。 今すぐに給水制限などの対策を講じるべきだ」。

今月12日付の米紙ロサンゼルス・タイムズへの寄稿で「残り1年分」という衝撃的なデータを突きつけたNASAの化学者、ジェイ・ファミグリエッティ氏はこう訴える。

 カリフォルニアでは通常、冬場が「雨期」で1月は年間を通じてもっとも雨の多い月とされる。

だが、今年は例年の半分も雨が降らなかった地域が続出。
サンフランシスコでは観測史上初めて、計測可能な降雨量がゼロだった。

山間部の降雪量も場所によっては例年の約1割にとどまる深刻さ。
雪止け水も期待薄の状況だ。
 
『芝生の水まきも制限』
 州政府は昨年1月に非常事態を宣言して以来、「水の使用量の20%削減」を目標に掲げて節水を呼びかけてきた。

だが、十分な成果を上げられていないため、今月17日に水の利用制限の強化を決定。

州民が庭の芝生に水をまく日数を週2日に制限したほか、レストランには客が求めた場合を除いて水を出すことを禁じた。

 長引く干ばつの被害が最も大きいのは、「セントラルバレー」と呼ばれる内陸部に多い農家だ。

カリフォルニア大学デイビス校の試算によると、十分な農業用水を確保できない農家が作付面積を減らした結果、昨年だけで1万7000人の雇用が失われ、経済損失は22億ドルに達した。

 州当局から農業用水の供給を絞られた農家は地下水をくみ上げてしのいでいるが、多くの農家が猛烈な勢いで地下水をくみ上げた結果、地下水源の水位も急速に低下。

各地で地盤沈下が相次いでいる。

 こうした中、州内では飲み水などを確保するため、海水を淡水化するプラントの新設や再稼働を目指す動きが広がっている。

 サンディエゴから太平洋に沿って車で30分北上したカールズバッドでは、民間資本による全米最大の海水淡水化プラントの建設工事が急ピッチで進む。

逆浸透膜方式でくみ上げた海水を処理し、1日あたり約1億9000万リットルの飲料水を供給する能力を持つ。

総工費は約10億ドルだ。

2012年末に始まった工事は年内にも完了し、サンディエゴとその周辺地域の約300万世帯への水の供給が始まるという。

 カリフォルニアでは1970年代から海水淡水化プラントの導入が幾度となく検討されてきたが、他の方法に比べてコストが2倍以上割高なことや、プラントの周辺海域の生態系に悪影響を与えるとの懸念から、本格的な普及には至っていなかった。

『背に腹は代えられず』

 だが、干ばつの長期化などを背景に風向きは変わりつつある。

NASAとコーネル大学、コロンビア大学の科学者は先月、コロンビア大学の科学者は先月、カリフォルニアを含む米西部各州で2050年以降、1回が10年から数十年続く大規模な干ばつ「メガドラウト」が発生する「極めて乾燥した時代」に突入するという予測を発表した。

 「海水淡水化プラントは、雨や雪など自然条件に左右されず、地元で安定的に水を確保できる唯一の供給源だ」。

カールズバッドのプラントの事業主体である米ポセイドンウオーター(マサチューセッツ州)のジェシカ・ジョーンズ氏はこう強調する。

環境保護団体などの懸念はなお根強いが、背に腹は代えられないというのが、州民の本音だろう。

カールズバッドの案件を含め、10件以上の新設計画が州内で進んでいるという。

(シリコンバレー=小川義也記者)

▲ビジネスリーダー→海外発→米州Frontline

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日経新聞 国際「『アラブ合同軍』を討議」=イエメン情勢巡り首脳会合=

2015年03月30日 08時38分04秒 | 国際
日経新聞 2015年3月29日(日) P.5 国際面
『「アラブ合同軍」を討議』

『イエメン情勢巡り首脳会合』=暫定大統領が支援要請=

 アラブ連盟の首脳会合が28日、エジプト東部のシャルムエルシェイクで始まった。

サウジアラビアによる26日の軍事介入で緊迫するイエメン情勢が主な議題で、加盟国による「合同軍」の創設などを話し合ったもようだ。

ただ、加盟国の一部はイエメンへの軍事介入に否定的。

イスラム教スンニ派を中心とする国(=サウジアラビアなど)がシーア派勢力を標的とする軍事作戦に乗り出したことで、中東各地の宗派対立をあおる懸念がある。


 29日までの首脳会合には治安の悪化で国外退避したイエメンのハディ暫定大統領も出席した。

ハディ氏はシーア派の武装組織「フーシ」の攻勢を受けているとして、加盟国に一段の支援を要請した。

 合同軍の創設は地域の紛争などに迅速に対応することを目的としている。

開催国エジプトのシシ大統領は会合冒頭に「アラブ(諸国)はかってない脅威に直面している」と強調し、加盟国に連携を呼びかけた。

 合同軍が議論されるのは初めてではない。
過去には指揮命令系統や本部の場所などを巡って各国の主導権争いが続き、実現しなかった。

今回は過激派「イスラム国」の台頭やイエメン情勢の緊迫を受け、シシ大統領が改めて提唱した。

 地域内の問題に軍事介入することを巡っては加盟国に大きな温度差がある。

イエメンへの介入はスンニ派の盟主を自認するサウジアラビアが主導し、エジプトやアラブ首長国連邦(UAE)などが軍事作戦への参加を表明した。

一方、シーア派主導の連立政権を樹立しているイラクは否定的な立場だ。

 シーア派の大国イランがフーシを支援し、サウジが介入に踏み切ったことで、戦闘はイエメンを舞台とするサウジとイランの覇権争いの様相が強まっている。

オバマ米大統領は27日にサウジのサルマン国王と電話協議し、同国への支持を表明した。

 イエメンで長期独裁を指揮、2012年に政権の座を追われたサレハ前大統領は27日、エジプトのメディアとのインタビューで「私は中立の立場だ」として、仲介の用意があると述べた。

サウジなどの軍事介入を「市民を巻き添えにしている」と批判した。

 サレハ前大統領とその支持勢力はスンニ派系が中心だが、フーシの支援に回っているとの情報もある。

サウジの今回の空爆はサレハ氏を支持する勢力が拠点とする施設も標的とした模様だ。


▲アラブ連盟

 アラビア語を母語とするアラブ諸国の独立と主権を保護する目的で1945年に設立された。

本部はカイロで、21カ国とパレスチナ解放機構(PLO)が加盟している。
シリアのアサド政権は自国民に対する弾圧を理由に加盟資格が停止されている。

(カイロ=押野真也記者)



『宗派対立あおる懸念』=イエメン介入=
 サウジアラビアなどがイエメンのイスラム教シーア派系の武装組織「フーシ」を標的とする軍事介入に乗り出したことで、イエメン国内の権力闘争が宗派対立色彩を強める懸念が出ている。

スンニ派のサウジがシーア派のイランの支援を受けたフーシを警戒して介入したことで、国民同士が異なる宗派への敵意を強める恐れがある。

 イエメンからの報道によると、サウジなどが26日に始めた空爆で市民39人以上が死亡した。

首都サヌアではフーシ支持者によるデモが発生した。
空爆に加わるスンニ派諸国への反感が広がっている。

 イエメンでは2月にフーシが政権掌握を一方的に宣言し、ハディ暫定大統領が抵抗を続けてきた。

復権を狙うサレハ前大統領もハディ氏の追い落としに動くなど、混乱の本質は権力争いとみられていた。

ところがスンニ派諸国が結束してハディ氏につき、シーア派系のフーシを攻撃したことで、スンニ派とシーア派の報復の連鎖につながる恐れが強まっている。

 宗派間の対立感情は国境を越えて波及しかねない。

サウジはスンニ派が主体だが東部の石油地帯を中心にシーア派住民も暮らしており、こうした自国内の少数派を刺激する可能性もある。

(ドバイ=久門武史記者)

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