日経新聞 国際「新興国減速、企業に影」=コマツ:アジアで4割減収、ダノン:中国・中南米に不安=

2013年07月31日 06時38分13秒 | 国際
日経新聞 2013年7月30日(火) P.3 総合2面
『新興国減速、企業に影』

『コマツ:アジアで4割減収』=ダノン:中国・中南米に不安=

 中国など新興国の景気減速で、日米欧のグローバル企業が思わぬ苦戦を強いられている。

米マクドナルドや仏ダノンも中国や中南米といった新興国での販売に不安を抱える。
景気が上向く米国では国際的に事業展開する企業より内需型の底堅さが目立っている。


 建設機械大手のコマツが29日発表した4~6月期の連結決算は、本業のもうけを示す営業利益が前年同期比6%減収となった。

中国での景気減速の影響がアジア各国に及び、建機部門のアジア売上高が約4割減と落ち込んだためだ。

 中国での需要の鈍さから国際資源価格は弱含んでいる。
石炭の主要産地であるインドネシアなどで採掘に使う鉱山機械需要が低迷し、コマツの業績に影響した。

日立建機でも鉱山機械を中心にアジア太洋州の売上高が2割減となっている。

『消費伸び悩む』
 世界経済をけん引してきた新興国の変調が鮮明になっている。

国際通貨基金(IMF)は今月に入って2013年の新興国の成長率予測を5.0%と、4月から0.3ポイント引き下げた。

中国の成長率が8%割れとなるなか、中国と貿易取引が多いアジア各国(豪州、インドネシア、韓国など)も成長率の下振れに直面。

インドやブラジルは物価高と消費低迷の悪循環に見舞われている。

 
 世界中で事業展開するマクドナルドの4~6月期決算は小幅な増収増益にとどまった。
米国での事業は底堅いが、これまで成長を支えてきたアジア太平洋など新興国が振るわず、全体も伸び悩んだ。

7月の世界の既存店売上高は横ばいとなる見通しで、「年内は厳しい販売環境が続く」(ドン・トンプソン最高経営責任者=CEO)と慎重な判断を示す。


 キヤノンも高級一眼レフカメラの有力市場である中国での販売低迷にさらされている。
「中国景気は想定以上に冷え込んでおり、さらに減速感が強まった」(田中稔三副社長)。

5月からの回復を見込んでいたが、ここにきて、今年12月期の連結業績予想を引き下げざるを得なくなった。


 景気低迷と雇用悪化に直面する欧州企業はけん引役の新興国での需要減に身構える。

 29日に発表された仏ダノンの4~6月期の地域別売上高。
主力の欧州は前年同期比3%減と相変わらず振るわず、2ケタ増の北米と新興国が補った。

だが景気減速の影響から中國や中南米などでは1~6月期の営業利益率が0.5ポイント低下。
将来に不安材料を残した。

『欧州も回復遅く』
 オランダのフィリップスは、欧州市場の需要の鈍さにいら立つ。

ビル向けの照明が伸びず、スペインでは医療機器の販売が落ち込んだ。
「南欧の立ち直りが遅く、欧州全体でも今年中の回復は見通せない」。

今後は2ケタ増収を続ける新興国での需要も見込めなくなる恐れがある。


 多くの世界企業を抱える米国。
4~6月期決算では、グローバルに展開する企業より、米国内を中心とする企業の底堅さが際立っている。

 例えば、北米に収益を頼る自動車大手のフォード・モーター。
米国内で(利益率の高い)大型車の販売が伸び、4~6月期は2ケタの増益を確保した。

業種別に見ると、米国市場での販売が中心の小売りなど「一般消費財」が8%増益、日用品など「生活必需品」が3%増益を維持しており、これらの企業の業績が、最高値圏にあるダウ工業株30種平均を支えているとみられる。
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日経新聞 社会「シニア活用:困りごと解決」=小さな手助けの輪が生活潤す=

2013年07月30日 10時36分36秒 | 社会
日経新聞 2013年7月30日(火) P.1 
特集連載『シニアが拓く』=地域を支える ③=

『困りごと解決』=小さな手助け 生活潤す=

 「のどがへらひら(いがいが)する」 「おなかがにやにや(なんとなく不快)」。

お年寄りの言葉をすんなり理解できるまでに「数年かかった」。

 青森県下北半島の東通村にある白糠診療所。
医師の石堂哲郎(71)は白糠・老部地区に住む2200人の健康を支える。

日々訪れる患者たちの大半は同世代以上だ。

『過疎地医療に道』
 泌尿器科の専門医として神奈川県内の病院に30年勤務。

「定年間際になり、学生時代に医師がいない地域の診療を手伝った経験を思い出した」

 思いを新たに石堂が定年退職の翌日から参加したのは地域医療振興協会(東京・千代田)の「再研修プログラム」。

研修では専門外の薬の名前を覚え、各地の診療所で現場の感覚を身に付けた。

白糠診療所に着任して9年目。
「薬の量や種類を減らすため、厳しいことも言う」石堂を患者たちは優しい先生と慕う。

 協会で研修を積み、へき地などの診療所に赴(おもむ)いたシニア医師はこれまでに12人。
国内ではまだ10万人以上が医師のいない「無医地区」に住む。

取り組みは道半ばだが、過疎地の医療を支える形は見えつつある。


 人口減少が続くなか、地域が活力を失うことがないようにするためには医療に限らず、多くの世代が支え合う仕組みが必要だ。

 2万3000人の市民の3分の1が65歳以上という鹿児島県阿久根市。
過疎が進む地方都市で24時間営業の大型スーパー「A-Zあくね」を運営するマキオは11月、「こどもおとな園」と呼ぶ新しい”塾”を立ち上げた。

 スーパーと同じ敷地内に設ける校舎には40~50畳ほどの広さの学習室が4つ。
竹細工や陶芸、料理、体操などを教える。

先生役を務めるのはマキオのシニア社員だ。
松尾忠(74)はかまどの使い方や火の起こし方、ヒーター工場で働いた経験があるという最高齢の長井良典(78)は機械の修理術と一風変わった授業も用意する。

 「子供に何か学ばせている間に働きたい」
 「高齢の父に日中、息抜きをできる場所を用意してあげたい」

 過疎化が進むとともに人々が集う場所は減っている。
こどもおとな園の設置を決めたのは顧客や社員から寄せられた声がきっかけだった。

「託児と高齢者向けのデイサービスのような役割を併せ持ち、利用料は2~3割安くする」。
社長の牧尾英二(72)は計画の詰めを急ぐ。

『お手伝い3万人』
 それぞれの地域が直面する「困りごと」。

シニア世代のボランティア団体、ニッポン・アクティブライフ・クラブ(ナルク、本部=大阪市)では3万人の会員が全国126の拠点で活動し、それぞれの地域が抱える課題に取り組んでいる。

 道路や河川の清掃、小学生の登下校の見守り、演奏会や紙芝居の上演と活動の幅は広い。
北海道の江別支部では高齢者の買い物の手伝い、愛媛県の今治市部では病院への送迎から墓参りの代理まで引き受けている。

 一つ一つはちょっとしたこと。
「住みよい地域をつくるためには、小さなお手伝いの輪が広がることが大切」(ナルク本部)だ。

 活動は1時間あたり1点に換算。
その蓄えが将来、自分自身や配偶者のためにボランティアを頼める権利になる。

2012年の活動は全国で17万時間、17万点に達した。

 地に足を付けて、地域の課題に取り組むシニアたち。
小さな活動も仕組みとして根付けば、暮らしに潤いが生まれる。
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日経新聞 雑学「お役立ちグッズ:LED点滅ライト」=雨の日や夜の外出も安全=

2013年07月30日 10時15分45秒 | 雑学
日経新聞 2013年7月20日(土) 土曜特版 P.S3 生活美人面
連載『お役立ちグッズ』

『雨の日や夜の外出も安全』

 雨の日や夜間など視界の悪い日に外を歩いていると、すぐ横を車が通ってひやりとすることがある。

こちらの存在を早めにドライバーに知らせるのにグリーンフィールド(東京都台東区)の発光ダイオード(LED)ライト「Antomo(アントモ)レイン」が便利だ。

Antomoレインは簡単につけ外しができるフックタイプと、しっかり固定できるアジャスタータイプがある。

シリコン製で、傘やカバンなどにサッと装着できる。

 スイッチをオンにしてから、少しでも振動が加わると、それを感知してLEDライトが点滅する。

ライトは明るく、約100メートル先からでも認識できる。
電池は交換可能で、動作時間は約360時間と長寿命だ。

 傘の先に取り付けておけば、暗い雨の日も安全だ。
逆さまにするとオフになるので、スイッチを切り忘れても、傘を下に向ければ光らなくなる。

 コンパクトで邪魔にならないので、ベビーカーやペットの首輪、子供の自転車など装着場所は様々。

幅広く使えそうだ。

▲価格:1260円
▲材質:シリコンほか
▲付属品:交換用電池
▲取扱店:東急ハンズ、エンチョーほか。
▲問い合わせは:グリーンフィールド Tel:03・5825・1341

(ライター 石井和美)
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日経新聞 ことば「フォワード・ガイダンス」=中銀が市場に対して政策の先行きを明らかにする指針=

2013年07月30日 07時35分36秒 | ことば
日経新聞 2013年7月28日(日) P.7 国際面
『英低金利 長期化宣言へ』=中銀カーニー新総裁、指針を検討=

『緩和効果の拡大狙う』

 英中央銀行イングランド銀行は8月1日の金融政策委員会で「フォワード・ガイダンス」と呼ばれる政策の先行きを明示する指針について議論する。

今月就任したカーニー新総裁が主導する市場との対話術で、政策をめぐる誤解を避け、金融緩和の効果を大きくする狙いだ。

世界経済が不安定な現状を踏まえ新指針は低金利政策の長期化を約束する手段になる可能性が高い。

(中・後段略)

●ことば:「フォワード・ガイダンス」
 中央銀行が金融政策の先行きを明示する指針。

政策金利を据え置く期間を示唆したり、将来の政策変更の条件を設けたりする。
市場参加者の予想や期待に働きかけ、政策が市場金利に及ぼす影響を強めるのが目的だ。

 米連邦準備理事会(FRB)は失業率が一定水準に下がるまで事実上のゼロ金利政策を続けると表明。

カーニー氏が総裁を務めたカナダ中銀は低金利政策の継続時期を具体的に示したことがある。

日銀は1999年にゼロ金利政策を導入した際、ゼロ金利継続の条件を示し「時間軸政策」と呼ばれた。
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日経新聞 国際「世界的な資源高ブームは終わり、しばらくは沈静化」=メルボルン大 ロス・ガーナー教授=

2013年07月30日 06時39分40秒 | 国際
日経新聞 2013年7月29日(月) P.4 オピニオン面
連載コラム『グローバル オピニオン』=豪メルボルン大教授 ロス・ガーナー氏=

『豪、輸出競争力回復を』

 オーストラリアのラッド(新)首相は6月の就任直後、重要なメッセージを発した。

(世界中の資源を爆食するといわれた)中国の資源ブームは終わり、豪州は経済を多様化させるべきだという内容だ。

この認識は正しい。
ギラード前首相(女性)は「豪経済はすべてうまくいっている」としか語らなかったが、ラッド首相は問題を認識するという最初の一歩を踏み出した。

ただ、(総選挙を控えているため)どう対応するかは多くを語っていない。


 豪経済が難しい局面にあるのは明らかだ。
(鉄鉱石などを高値で輸出できた)資源ブームは2011年に終わった。


資源依存からの転換を図るため、政府は国民に指針を示し、注意深く経済運営する必要がある。
改革は痛みを伴い、改革に残された時間は多くない。

 過去1年半も総労働時間が増えていないなど、すでに景気後退の兆候があると見ている。

豪州は移民の流入や高い出生率で労働人口が増えており、雇用を拡大しなければ失業率上昇は避けられない。

 14年度の経済成長率は13年度(推定値2.75%)を下回るだろう。
1991年に不況を脱して以来、豪州は22年間も成長を続けて、08年の世界金融危機でも影響を受けなかった。

中国の資源需要のおかげで景気後退を免れたが、その副作用として高コスト体質が染み付いてしまった。

 まず政府は、豪ドル高を是正する必要がある。
物価変動の影響を除いた実質為替レートは3月時点に比べて10%下落したが、さらに10~30%低い水準が必要だ。


豪準備銀行(中央銀行)は5月の利下げに続いて、追加の利下げを実施する必要がある。


 資源投資はピークを迎えたが、完了までには時間がある。
市場の立つ日に豚を突然太らせることはできないから、前もって豚を太らせる必要がある。

同じように、資源ブームが終わる前に他の産業を発展させる必要(=雇用の増大)がある。
通貨安で輸出産業の競争力を回復させて、輸出を促進すべきだ。

資源ブームの前に主要な産業だった教育(=海外留学生の受け入れ)や観光も有望だろう。

 今後も雇用や経済成長を維持しようとすれば、社会の変化を受け入れるべきだ。
00年から13年続いた繁栄の時代は終わった。


この間、人々は右肩上がりの生活を楽しみ、賃金は上昇した(=生産性の向上に伴う人件費の上昇ではなく、単なる世界的な資源ブームの恩恵による失業率の低下・賃金の上昇であった)。
企業は高収益や減税の恩恵を享受した。

 今後は収入の低下が避けられず、企業は競争にさらされる。
独占状態の電力や交通などはもっと競争が必要だ。

豪ドル安で輸入物価が上昇しても、給料はその分上がらない。
資源から新産業へと成長のバトンをうまく渡すには、こうした犠牲も必要なのだ。

 
 政府は(こうした不人気な政策を正しく実行するには)幅広い理解と支持を得られた場合にのみ、改革を実行できる。

調整の重荷を社会全体で分かち合うことが重要だ。

(近く予定されている)総選挙の後、豪政権を担うのが誰であれ非常に難しい仕事が待ち受ける。
(談)


●Ross Garnaut
 1983~85年にホーク首相(当時)の主席経済アドバイザー。

その後の中国大使時代、部下には外交官だった現ラッド首相がいた。
67歳。

●聞き手の記者コメント:
 意外だが、豪州の経済人の中には「資源ブームがない方がよかった」との意見もある。

中国の驚異的な需要の伸びに供給が間に合わず、コストを度外視して輸出を増やした。

その過程で(人口が少ないオーストラリア全体の平均)人件費が上昇し、他の産業の成長は(上昇した人件費コストに耐えきれず)抑制された。

若者らには資源頼みの風潮が強まった。

 ガーナー教授はこうした「コンプレースンシー(自己満足)」の時代は終わったと指摘し、議論を呼んだ。

競争力や生産性の向上を急ぎつつ、どう「正常」な経済への道筋を描くか、転機に直面している。

(シドニー=高橋香織記者)
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日経新聞 経済史「IJPC清算(1990年)」=イラン革命・戦争が翻弄=

2013年07月29日 23時48分57秒 | 経済史
日経新聞 2013年7月28日(日) P.11 日曜に考える面
連載『経済史を歩く (63)』=編集委員 松尾博文=

『IJPC清算 (1990年)』=イラン革命・戦争が翻弄(ほんろう)=

 イラン・ジャパン石油化学(IJPC)は、三井物産を中心とする三井グループがイランで進めた巨大石油化学事業である。

ペルシャ湾に望むコンビナートは全体の85%まで建設を終えながら、革命、戦争と予期せぬ困難に次々見舞われ、日本側は完成を見ることなく撤退した。

    ▲    ▲

大桟橋に停泊する大型客船。
山下公園を散策する子供連れ。

ホテルニューグランド(横浜市)の窓の外にはあの日と同じ横浜港が広がる。

 1989年9月11日、ホテルでは極秘の協議が最終日を迎えていた。
出席者は三井物産社長の江尻宏一郎とイラン国営石油化学会社(NPC)総裁のラフゴザール。

IJPCプロジェクトの日本、イラン側それぞれの代表である。

『揺らいだ王政』
 「ようやく大詰めに来た」。

三井物産元常務で、日本側投資会社の社長を務めた和多田寛(85)は振り返る。
会談ではイランに支払う清算金の額などを除き、合弁事業の「友好的解消」を確認した。

 IJPCは三井物産、三井東圧化学(現三井化学)など5社を中心に、(親米的であり、かつ米国の支援も手厚く、中東では一番盤石な政権と信じられていた)パーレビ王制下の71年に合弁契約を交わして始まった。

イランの豊富な天然ガスを使い様々な石化製品を生産する狙いだった。

 現場は夏の気温がセ氏50度になる厳しい環境(厳しいイスラム国家だけに酒類はご法度!)。
膨らむ建設予算にも悩まされた。

しかし、「いざ着工すると工期や予算をクリアし、建設は順調だった」。
三井物産元常務の伊藤淳(85)は言う。

76年に始まった工事は、78年秋には作業員が1万人に達した。

 この時、すでに王政は揺らぎ始めていた。
イスラム革命である。

三井東圧出身の石和田四朗(80)は稼働に備え人材教育に奔走していたが、「現場でも集会が始まり、建設どころではなくなった」と語る。

80年にはイラクと戦争が始まり、プラントは繰り返し空爆を受ける。
日本側は建設続行は難しいと判断、84年には現場から撤収した(現場で作業する日本人とイラン人。 同じ人間だが、命の価値観/金額が日本人/三井側のそれとイラン革命政権のそれとは大きな隔たりがあった。 それが中断か継続かの戦略的判断をする際に両者の大きな溝となり、徐々に広がったと推測する)。

 事業からの撤退を探り始めた日本側に対し、(大義優先の)革命政権は続行を主張した。
革命から戦争へと変遷を見続けてきた前イラン大使の駒野欽一(66)は政権が続行にこだわった理由を「革命の実績を示すにはシャー(国王)の出来なかったことをやり遂げることが必要だった」と指摘する。

 身動きの取れないIJPCは三井物産などの経営に重圧となった。
その状況下で粘り強く続けてきた交渉がようやく実を結ぼうとしていた。

『土壇場で波乱』
 横浜会談から1ヵ月後の89年10月7日、江尻とラフゴザールはテヘラン北部の政府施設で最後の交渉に臨んだ。

残るのは清算金の確定(イランの工事続行希望に対し、撤退を決めた日本側。 清算金はいわばイランに渡す”手切れ金”と考えれば分かりやすい)。

日本側株主5社の社長は最終交渉を前に「清算金は1250億円が限度」と確認していた。

 ところが土壇場で波乱が起きる。
イラン側が事前の調整を覆し、清算金は1400億円と言い出したのだ。

7日は結論が出なかった(商売の駆け引きは中国人がうまい、といわれるが、その中国人もインド人にはかなわない、という。 そのインド人はペルシャ人にはとてもかなわない、という。 世界で一番の交渉上手はペルシャ人ということになる。 イランはペルシャ人種に分類される)。

 「どう思う」。
翌朝、朝食の席で江尻から尋ねられた和多田は、得ていた感触から「イランは1300億円以下では受けません」と答えた。

 江尻は8日午後、株主5社の合意を越え、イラン側に1300億円を提示した。
返事をためらうラフゴザールに江尻が「これで無理なら今回は打ち切りで・・・」と言いかけると、「受け入れます」と応じた。

6000億円超を投じた合弁事業の解消が決まった。

 IJPCは90年2月に正式に合弁を解消した。
日本側の投資会社の損失総額は3000億円を超えていた。

三井物産現会長の鎗田松瑩(70)は「IJPCの教訓はカントリーリスク。
この一点だ。 重大な経験を経てリスクを見極めるようになった」と語る。

ロシアの天然ガス、ブラジルの鉄鉱石・・・。
IJPCを乗り越え、三井物産は海外の大型事業に挑み続けている。

IJPCは日本の撤退後、名前を変えて建設を続け、94年に完成した。
石和田は2004年、現地を再訪した。

旧本社や稼働するプラント群に目を奪われていると「イシワダさーん」と呼びかける声が響いた。
かっての仲間だった。

灼熱(しゃくねつ)の大地にまかれた種は確かに育っていた。


●IJPCの推移
    (IJPC)             (年)    (イラン、中東情勢)
10月:イラン石油化学事業合弁契約  1971年  
4月: IJPC設立           73年  10月:第4次中東戦争、石油危機

6月:現場で試験くい打ち開始       76年
10月:工事従事者約1万人        78年 5月:国王打倒運動、全土に拡大
7月:工事再開の覚書           79年 1月:パーレビ国王出国
                          2月:ホメイニ師帰国、イラン革命
                          11月:テヘランの米国大使館占拠
10月:IJPC、不可抗力宣言      80年 9月:イラン・イラク戦争

5月:事業再開・継続で合意        83年
10月:日本人全員、テヘランへ避難    84年 

                     88年 8月:イ・イ戦争停戦
10月:合弁事業解消で合意        89年 6月: ホメイニ師死去
2月:合弁解消合意が発効         90年   


■重み増すリスク把握
20年に及ぶIJPCは、「実際に建設工事が行われたのは5年間に過ぎず、あとはひたすら事業の再検討と交渉に費やされた」(IJPCプロジェクト史)。

巨大事業は踏み出すより、幕引きのほうが難しい。
日本企業の海外事業比率は年々高まり、カントリーリスクを見極める重要性は一段と増している。




**いま起きている出来事には出発点がある。
源流をたどると忘れていた断面が見える。
経済史を歩く。 次回は「コメの生産性向上にブレーキ~減反開始」。
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日経新聞 書籍紹介「現代社会と漫画」=家族の絆と少女の創造力=

2013年07月29日 23時11分28秒 | 書籍紹介
日経新聞 2013年7月28日(日) P.22 読書面
連載『半歩遅れの読書術』=精神科医 斉藤 環=

『現代社会と漫画』=家族の絆と少女の創造力=

 今回まず取り上げるのは真鍋昌平の漫画『闇金ウシジマくん』(小学館)の最新刊(28巻)。

10日5割(トゴ。20日間で借りた金額と同額の金利が付くという暴利)の超暴利闇金融「カウカウファイナンス」を経営する丑島馨を狂言回しとして、社会のダークサイドに堕(お)ちた人々の姿を身も蓋もなく描き続けてきた作品だ。

 金融ものの漫画には傑作が多く、本作もその一つ。
綿密な取材に基づくハードな描写は読者を選ぶが、本書を素材として難波功士『社会学ウシジマくん』(人文書院)が書かれるほど、リアリティには定評がある。

 最新刊「洗脳くん」編は、2002年に発覚した北九州監禁殺人事件や、11年に表面化した尼崎事件を連想させるストーリーだ。

一人の詐欺師が言葉巧みにある家庭に入り込み、資産を奪い尽くして崩壊させる。

とりわけ被害者の罪悪感を刺激しながら心理的密室を作り上げ、家族の相互不信をあおって行動を束縛していく過程が胸が悪くなるようなリアリティで描かれる。

 たまたま家族の一人が闇金に借金していたことが、結果的に外部との接点となって解決につながるという皮肉な結末。

私は本作を「絆(きずな)」の負の側面を描き切った傑作として読んだ。


 次はダークな作品から一転して、漫画界きっての抒情派、今日マチ子の新作を取り上げよう。

彼女は自らのブログで連載している『センネン画報』(太田出版)で注目され、精力的に新作を発表し続けている。

少年少女の日常を、確かな画力で裏打ちされた淡い水彩でつづる作風は、ひめゆり学徒隊のエピソードに触発された戦争もの『COCOON』(秋田書店)によってさらなる進化を遂げた。

 本作は太平洋戦争末期、南の島で傷病兵の看護に動員された少女たちが、自らの”創造力の繭(まゆ)”で過酷な現実と”戦う”話だ。

映画「ライフ・イズ・ビューティフル」にも似たモチーフだが、少女の創造力をテーマにしているぶん普遍性があり、最後には驚愕のどんでん返しが待っている。

 今日マチ子は最新作『アノネ、(下)』(秋田書店)において、このテーマをさらに発展させ、『アンネの日記』を入り口とした強制収容所の物語を描いている。

多重世界の入り組んだ複雑な物語だが、私には「為政者(いせいしゃ)もまたおのれの空想の繭に封じ込められている」という物語として読んだ。

 二つの対照的(にみえる)漫画が、それぞれの角度から鋭く「いま」を切り取っている。
現代社会の多様なリアリティと向き合うためにも、漫画というメディアからは、やはり眼が離せそうにない。
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日経新聞 海外メディア「デトロイト市の破綻とミドルクラス衰退の関係」

2013年07月29日 10時25分56秒 | 海外メディア
日経新聞 2013年7月28日 P.13 日曜に考える面
コラム『海外メディア』

『デトロイト破綻と中間層再興』

 ゼネラル・モーターズ(GM)の本社がある米デトロイト市が18日に米連邦破産法を申請し、荒廃した同市の映像や写真が繰り返し流れた。

英紙ガーディアン(23日付)は同市の破綻を受け、「デトロイトの転落は資本主義者の失敗」とする社説を掲載した。

 「米自動車産業の隆盛は賃金引き上げなどを通じ、1950~60年代に米国に大規模なミドルクラス(中間所得者)を生み出した」としつつ、「過去40年は、生産を移し、同市の人口減と荒廃を招いたばかりか、ミドルクラスを壊した」と指摘する。

 そのうえで「労使協調の仕組みがあったなら、配当や経営幹部の報酬は抑えられ、現場からの生産性向上策で生産移転は回避され、デトロイトは全く別の進化を遂げたのでは」と問題提起している。

 デトロイト破綻が象徴するミドルクラスの衰退は深刻な政治課題だ。
オバマ大統領は24日に演説し、その再興を最優先課題にすると宣言した。



 米紙ニューヨーク・タイムズ(25日付)は社説でこれを取り上げ、1期目に課題としながら果たせなかった、荒廃する学校施設、道路、送電線網の整備や4歳児教育の充実などがテーマになると指摘。

(野党である)共和党保守派とぶつかるのは確実だが、同市は「大統領が意思を強く持ち続ければチャンスはある」とする。

米国政治の主戦場となるだろう。


 これらの施策の実行には米政府の財政状況が絡むだけに米国の経済状態がカギを握る。

英誌ユーロマネー(7月号)は「米経済回復を支えているのは住宅市場の改善」としたうえで、住宅ローンの90%を支える住宅金融公社2社の問題を取り上げた。

 金融危機直後に米財務省は2社に公的資金を注入したが、「再民営化が米上院などで論議され、ヘッジファンドが2社株を買い増している」と指摘。

その上で改革策は「緒についたばかり」と説明する。
米国経済を左右しかねないだけに、気になる動きだ。

(編集委員 土屋直哉)

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日経新聞 国際「デトロイト市の財政破綻」=公務員の年金給付債務の拡大が主因=

2013年07月29日 09時26分55秒 | 国際
日経新聞 2013年7月27日(土) P.6 国際1面
『デトロイト破綻(はたん)』

『米自治体 年金債務重く』=削減狙い破産申請 追随も=

 米中西部にあるミシガン州デトロイト市の財政破綻を受け、地方自治体の財政への警戒が強まっている。

格付け会社が警鐘を鳴らし、地方債の利回りに上昇圧力がかかっている。
公務員年金の債務拡大に有効な対策が打てるかが焦点だ。


 デトロイト市の連邦破産裁判所は24日、同市が申請した連邦破産法第9条の適用を認めるかどうか審理を始めた。

10月中旬にも最終判断を下す。

裁判所の審理に先立ち、同市の年金基金は、財政破綻に伴う年金給付の削減はミシガン州法に違反すると主張し、同市を訴えた。

24日の審理で破産裁判所は、同市への訴訟を停止するように命じ、年金基金の訴えを退けた。

■積立不足8342億ドル
 デトロイト市の破産手続きの焦点は、公務員の年金給付に切り込めるかどうかだ。

 デトロイト市を拠点とするゼネラル・モーターズ(GM)の経営が金融危機後にV字回復したのは、米連邦破産法11条の適用で年金債務や医療費負担など「レガシーコスト」(負の遺産)を一掃できたことが大きい。

 これに対し、公務員は雇用契約どおりに年金や医療費を受給する権利が法律で手厚く保護されている。

制度見直しには法改正が必要だが「法律面の不透明性が高い」(米連邦破産裁判所のクリストファー・クライン判事)うえに、利害関係者の合意も難しい。

このため、地方自治体は財政が悪化しても年金給付の削減に踏み切れずにいた。

 教育や警察・消防などの公的サービスの支出を削っても財政健全化には限界があった。

格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスが最近、イリノイ州シカゴ市の格付けを一気に3段階引き下げたのも年金債務問題が理由だ。

カリフォルニア州ロスアンゼルス市の年金基金も「積立不足が300億ドルに上る」(米運用会社ニューヨーク・キャピタル)。

膨大な年金債務に苦しむ地方自治体はデトロイトやシカゴ以外にも多いというのが専門家の見立てだ。

 米コンサルティング大手のウィルシャー・アソシエーツによると、全米の州政府が公務員向けに運営する109の年金基金の積み立て不足額は2012年には8342億ドル。

11年比で2割増えた。

■手続き「先例に」

 08年の金融危機後、年金資産総額は回復しつつあるが、それを上回るペースで将来の年金給付債務が膨らんでいる。

市などの地方自治体が運営する年金基金の年金債務も膨らんでいるようだ。

 「先例となる」。

著名アナリストのメレディス・ホイットニー氏は、デトロイト市破綻の裁判所審理が、反発の強い公務員の年金給付削減に切り込む最初の例になるとの見方を示した。

デトロイト市の破産手続きが「ひな型」となり、年金債務に苦しむ地方自治体が続々と破産申請に動く可能性があるという。

 デトロイト市の破産管財人に任命された弁護士ケビン・オーア氏は14年秋までの早期解決をめざす。

市場関係者の間では「破産の法的手続きの完了には数年かかる」(ムーディーズ)と長期化を予想する声も多いものの、デトロイト市の動きには単に同市の財政問題にとどまらない意味合いがありそうだ。


●デトロイト市の財政破綻
 デトロイト市は総額180億ドル(約1兆8千億円)超の負債を抱え、今月18日に米連邦破産法第9条を申請し、財政破綻した。

同市に本社を置くゼネラル・モーターズ(GM)が海外に生産拠点を移し、人口が減少したことなどで税収が減少。

市の財政難で街灯は4割が消えたままという。
治安悪化で富裕層は郊外に脱出し、市中は荒廃している。


(ニューヨーク=蔭山道子記者)



『米地方債市場に動揺』=破綻警戒、資金流出続く=

 デトロイト市の財政破綻を受け、米地方債市場に動揺が広がっている。

地方自治体の破綻が増えるとの警戒感が浮上。
投資マネーが流出し、地方債の利回りに上昇(価格は下落)圧力がかかっている。

米調査会社のトリムタブスによると、地方債で運用する投資信託は19日までの1週間に約3億5000万ドルの資金が流出した。

米量的緩和の縮小観測が浮上した5月下旬から8週連続の流出超を記録した。

 デトロイト市のあるミシガン州の10年債利回りは足元で3%超と、2%前後だった5月初旬から大幅に上昇した。

米国債利回りの上昇に影響されている面もあるが、市場では地方財政への懸念が広がりつつある。

地方債には税制の優遇措置があり、個人投資家の比較的安全な投資先となってきた。

 だがデトロイトの財政破綻をきっかけに地方自治体の抱える年金債務に焦点が当たり、個人マネーのリスク回避を招いている。

 デトロイトをめぐっては、スイスのUBSなど欧州の銀行大手も債権者に名を連ねていることが明らかとなった。

破綻処理による債務の強制削減で、損失が膨らむ可能性も指摘されている。

(ニューヨーク=川上穣記者)


●関連日経記事:2013年7月19日グー・ブログ「息子たちに読んで欲しい日経記事」投稿記事参照
 『日経新聞 政治「住むべき市は黒字財政」=社会インフラ老朽化時代に備えて=』(2011年12月6日付)
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日経新聞 人物紹介「マーケティング分野の世界的権威:フィリップ・コトラー氏」

2013年07月29日 09時09分04秒 | 人物紹介
日経新聞 2013年7月28日(日) P.9 日曜に考える面
『マーケティング分野の世界的権威』

『フィリップ・コトラー氏』=米ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院教授=

Philip Kotler

マーケティング分野の世界的権威。
現在も米ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院で教壇に立つ。

ベストセラーとなった「マーケティング・マネージメント」の重版は14回を数え、マーケティングについて、多くの日本の経営者に直接、教えを説いたこともある。

 日本文化への造詣(ぞうけい)も深く、趣味の一つに「ねつけ」(小さな象牙などに細かな彫刻を施した留め具)や刀のツバの収集がある。

 最近はソーシャルメディアが企業と顧客の関係を大きく変えることを指摘。

アジア地域にも活躍の場を広げているほか、貧困撲滅など社会問題解決のためのマーケティングの活用も提唱する。

82歳。
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