日経新聞 経営「年末商戦、ネット通販が盛況」

2012年12月31日 07時57分42秒 | 経営
日経新聞 2012年12月29日(土) P.9 企業総合面
『ネット消費 12月は 1兆円』=年末商戦、楽天など盛況=

『民間試算 百貨店・ホテルにも浸透』

 年末商戦で消費のインターネットへの移行が進んでいる。

大規模なセールを実施した楽天などネット通販大手の取扱高が伸びているほか、実店舗を構える小売業やサービス業でもネット部門の販売が増加。

12月のネット消費額は単月としては初めて1兆円を超えるとの試算もある。
今後もスマートフォン(スマホ)などの普及が追い風となり、「消費のネット化」が加速しそうだ。


『スマホが後押し』
 ネット通販最大手、楽天の12月の取扱高は千数百億円に上りそうだ。

今月2日のセール初日は、取扱高が130億円超と1日当たりで過去最高を更新し、月間でも前年同月を1割以上上回る。
歳暮商品は前年比3割、家電製品では掃除機が9割増えている。

ヤフーの12月の取扱高は280億円程度の見込みで「スマホからの注文が3割伸びている」という。
ネット通販ではアマゾンジャパン(東京・目黒)も12月上旬から最大9割引きのセールを継続的に実施。

実店舗を持つ小売業の商戦に影響を及ぼしている。
大手百貨店や家電量販店の商戦は前年実績を下回る模様だ。

 
ただ百貨店もネット部門は堅調。
歳暮取扱額は高島屋で13%増、そごう・西武も5%増。
ともにネット受注比率が初めて1割を超えた。

混雑を避けられるだけでなく、「品ぞろえが店舗より2割多く、時間をかけて選べる点が30~40代に受けている」(高島屋)。

家電量販店のネット通販も理美容家電やスマホ関連商品などが好調で、関西地盤の上新電機は3割増収となっている。


サービスでもネット予約が広がる。
ホテル・オークラ東京(東京・港)の12月のネット予約件数は約3割伸び、全宿泊予約の20%に。

年末年始の旅行予約ではネット専業の楽天トラベルが25%増。
ネット取扱額が国内で8割増、海外で5割増のJTBは国内外合わせたネット予約比率が1割台に乗った。


『全体の4.8%に』

 第一生命経済研究所の永松利広主席エコノミストは、12月のネット消費の規模を前年同期比1割強増えて1兆300億円と試算する。

個人消費全体の4.8%を占める。
消費全般に停滞感が強い中で、好調ぶりが目立っている。

今冬はボーナス支給額が3年ぶりに減っており、消費者は「価格や機能を比較、吟味しやすいネット通販に向かっている」(電通総研)との見方もある。


 米国はネット消費で先行しており、年末商戦でもそれが顕著だ。

民間調査会社によると、11月はじめから12月中旬までのネット通販の売上高は338億ドル(約2兆9000億円)と前年同期比13%増。
商戦開始時の11月下旬の感謝際以降の4日間では、消費に占めるネット通販の比率は4割に上った。

日本でもスマホやタブレット(多機能携帯)などの普及に伴い、ネット消費の拡大に拍車がかかりそうだ。
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日経新聞 国際「中国新指導部の多くは60歳代半ば以上」

2012年12月31日 05時56分07秒 | 国際
日経新聞 2012年12月29日 P.7 国際面
『全人代、3月5日に開幕』

 (中国国営放送の)新華社電によると、中国の全国人民代表大会(全人代=国会に相当)は28日の常務委員会で、2013年の第12期全人代第1回会議を3月5日から開くことを決めた。

開催期間は約2週間という。
共産党が今年11月に開いた第18回党大会で、習金平総書記(国家副主席)らの新指導部を選出したことを受け、新しい国務院(政府)指導部の布陣がどう決まるかが最大の焦点となる。

(北京=共同)

日経新聞 2012年12月30日(日)P.9 日曜に考える面
連載『論客』=前米大統領補佐官 ジェフリー・ベーダー氏=

『アジア安定へ日米が軸』
=「核武装」発言歓迎されぬ=


(前段略)

ーー中国指導部の顔触れが大幅に変わります。 米中関係に影響はありますか。
「新指導部の多くは60歳代半ばか後半。
共産党の規定によれば、彼らは常務委員を1期しか務めることができず、5年後には(7人のうち)少なくとも5人のメンバーが退任する。

米国では国務、財務長官が交代し、来年3月には(現指導部の)王岐山氏らが政府部門の要職から外れる見通し(新指導部に政権が引き継がれる)。
米中とも個人的な信頼を高める必要がある」

(後段略)
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日経新聞 経営「失敗学から学ぶ:”思い込み”から抜け出せ」=工学院大教授 畑村洋太郎氏=

2012年12月31日 04時42分00秒 | 経営
日経新聞 2012年12月29日(土) P.1
連載『2013 展望』

『「思い込み」から抜け出せ』=工学院大教授 畑村 洋太郎氏=

 震災復興、デフレ脱却、高齢化への対応・・・。

新政権の前途には難題が山のようにある。
2013年の日本はどうすれば展望が開けるだろうか。


ーー原子力発電所事故からどんな教訓を引き出すべきでしょう。
 「事故の原因は『長時間の電源喪失は起こらない』との前提で運営していたことに尽きる。 

『あり得ることは起こる』『思いつきもしない現象も起こる』と考えるべきだ。

2000年に米国の原発の専門家にこう言われた。
『日本の技術屋は言わないといけないことを言わない。 いつか大事故を起こすぞ』と」

『狭い国民の視野』
ーー原発事故は衆院選の主要争点でしたが、具体的な議論にはつながりませんでした。

 「国民の反応は極端で視野が狭くなっている。
反対派は事故が起きた途端『脱原発』『放射能ゼロ』に傾斜し、電力需給の安定に気を配れなくなっている。

原発維持の側も多くの人が『安全基準さえあれば再稼働できる』と過信している。

日本人は『黙る』『考えない』『思い込む』のどれかに陥っている。
これらを正反対の姿勢に改めなければ、適切な技術開発はできない」

 「原発に関してだけではない。財政難の根っこにあるのも『あり得ることは起こる』と考えない姿勢だ。

国際収支が赤字になり、これ以上借金すれば、いずれ利払いができなくなる。

最悪のシナリオは米国や中国に金を借りる事態が起こること、日本国債を米中に大量購入されることではないだろうか。

消費税引き上げへの反対意見もわかるが、ほかの国に運命を左右される未来図に目をつぶるのも怖いことだ」


ーー高速道路の天井崩落事故も起きました。
 「原発もそうだが、日本が世界一の水準に近いと思える技術はいくつかある。

だが、ほかの国に大した技術がないと思うのは傲慢だ。

公共投資をみても、中国やインドは鉄道など必要なインフラの技術を猛烈な勢いで磨き上げている。

単に金をばらまくのではなく、明確に目標を絞り込んで取り組んでいる」

 「インドの地下鉄は100秒おきに列車を運行させる目標を立てているという。
今の日本でも最短120秒ぐらいかかる。

そう遠くない時期に日本は追い越されるところまできている」


 「中国やインドの技術者は、自前のノウハウを押し付けようとする日本の姿勢を嫌がっている。

彼らが望むのはノウホワイ(know-why)。
どうやるかでなく、なぜやるか。

それが分かれば、自国の風土や市場に合った技術を磨きあげられるというわけだ」


『「いい物」に固執』
ーー大手電機メーカーが苦戦するなど国際的な競争力低下は深刻です。

 「中国で液晶や半導体メーカーの担当者に話を聞くと、市場の声に即した製品なら技術は周回遅れでも構わないという。

日本は『いいものを作れば売れる』と自社製品に自信を見せるが、そういう発想に凝り固まっているから逆に市場の求めに応じきれていない面がある。

 例えば、中国製品が市場をほぼ独占した太陽パネルはどうか。
品質などに問題はあろうが、安さを求める消費者に素直に応えた結果にほかならない。」


 「日本の企業は欧米のまねをして高度成長を果たしてきたが、お手本がなくなり迷走している。

これからの日本には市場や社会の要求に謙虚に耳をすます姿勢が大切になってくる」

(聞き手は大滝康弘記者)


●はたむら・ようたろう
東大教授を経て、2001年に畑村創造工学研究所を開設。

失敗学を提唱、鉄道脱線など事故の再発防止策を企業に助言している。
原発事故では政府検証委の委員長を務めた。

東京都出身、71歳

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日経新聞 国際「韓国”安い電力政策”に矛盾」

2012年12月30日 09時10分08秒 | 国際
日経新聞 2012年12月18日(火) 
『韓国「安い電力」に矛盾』=赤字でも大幅値上げできず=

『政府と対立、公社社長が辞任』=投資遅れ停電懸念も=

 韓国内に電力を独占して供給する公企業、韓国電力公社は17日の臨時株主総会で新社長に趙煥益(チョ・ファンイク)元産業資源省次官を選任した。

 韓国は安価な電力料金で産業競争力を強めているが、韓国電力は原価割れで赤字が続く
大幅な値上げを認めない政府に不満を強めた前社長の辞任が今回の不定期人事につながった。
矛盾に満ちた韓国の電力政策を映しだした格好だ。


 趙氏は現在の知識経済省である産業資源省で貿易畑を歩んだ元通商官僚。
金重謙(キム・ジュンギョム)社長が今秋、青瓦台(せいがだい=大統領府)に辞意を表明し、政府が水面下で趙氏への交代に向けて調整していた。

金氏は(大手財閥の)現代建設の最高経営責任者(CRO)出身で任期3年のうち2年を残す。
民間出身者として損益を厳しく管理する方針を打ち出して赤字解消に動いたが、料金の値上げを嫌気する政府と対立。

このことが自ら辞任を決めた理由と受け止められている。


『国際競争力下支え』
 韓国電力は燃料費の高騰などで2011年12月期まで4期連続の営業赤字。

日本の約4割と安い電力料金は赤字を垂れ流して支えているのが実情だ。
政府が株式の51%持ち事実上、国家が保証しているため事業継続に支障は出ていない


累積した損失は最終的には納税者に跳ね返るのに、庶民の懐を直撃する公共料金の値上げに政府は一貫して慎重だ。
今年8月には金氏が求めた2桁アップの改定案を4.9%に抑え込んだ。


 「公企業は赤字を出してもいいという認識を改めるべきだ」。
金重謙氏の前任社長の金双秀(キム・サンス)氏もLG電子のCEO出身。
赤字を解消しようと値上げを求め、政府に強く抵抗した。

だが3年間の任期中、値上げは常に小幅。
退任間近の昨年8月には「安すぎる料金で会社に損害を与えた」と株主代表訴訟(そしょう)まで起こされた。

 
 民間出身の2人が韓国電力トップに就いた背景には、最終任命権を持つ李明博(イ・ミョンバク)大統領の意向があるといわれる。
韓国電力は金双秀氏がけん引し、09年末にアラブ首長国連邦(UAE)で原子力発電所の建設を受注。
輸出拡大を狙う李大統領の思惑通りの展開となった。


だが並行して進んだ燃料価格の高騰により業績が悪化。
損益に厳しい両元社長は政府との対立を深め、電気料金が原価を下回っているのに十分に値上げできないという矛盾が浮き彫りになった。

 韓国は法人税や通信費とともに電気料金が低く、鉄鋼業などの国際競争力を支え、製造業の直接投資も呼び込んでいる。
庶民生活への配慮ともなるため、政府は電力を「コストセンター」と割り切っているフシがある。

19日投開票の大統領選挙で争点にならず、次期大統領も大幅な値上げに踏み切るとの見方は少ない。


『安いから無駄遣い』
 一方、韓国電力は電力不足に直面。
昨年9月には大規模停電を強いられた。

 「安すぎるから無駄遣いする」構造に加え、政府の需要予測の甘さから設備投資が遅れていることも背景だ。
投資の遅れは値上げにつながらないようにしたい政府の意向もあるとされる。


 真冬の厳冬期を迎え、先月16日には金滉植(キム・ファンシク)首相が国民談話を発表し、節電に努めるよう呼び掛けた。
「料金を上げて電力消費を減らすのが原則だが、家計負担や産業競争力を考慮しないわけにはいかない」。
首相は苦しい本音も漏らした。
 
(ソウル=尾島島雄)
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日経新聞 経営「ヘリウムの供給安定を急げ」

2012年12月30日 08時13分14秒 | 経営
日経新聞 2012年12月29日(土) P.2 総合1面
社説『ヘリウムの供給安定を急げ』

 目立たないが、日常生活や経済活動に欠かせない資源がある。
半導体生産や医療機器に使うヘリウムガスもその一つだ。

 世界的な供給不足の影響が、日本でも広がりつつある。
政府と関連企業は連携し、供給の安定に努めてほしい。
調達先を広げ、代替(だいたい)採算事業の思い切った見直しは、市場が企業に最も期待していることの一つである。


 今年は中国で日本製品の不買運動が起き、市場が動揺する場面があった。
中国以外の新興国市場の開拓など、グル―バルな成長戦略を深めることも来年の課題だ。
技術を開発することも必要だ。

ヘリウムは半導体や光ファイバー製造の冷却工程に使う。
体の内部を画像化する磁気共鳴画像装置(MRI)や、娯楽用の風船に詰める気体など用途は幅広い。


 天然ガスを採掘する際の副産物として取れるが、生産国は数ヵ国に限られる。
日本は国内消費の全量を輸入し、その9割を米国から調達する。

工業化の進展やMRIの普及など新興国の需要が増える一方、最大の産地である米国の生産量が設備トラブルのために落ち込んでいる。

日本の輸入量は3割減り、遊園地が風船販売を取りやめるなど国内供給に支障が出始めている。


 工場の生産停止や、医療の現場でMRIが使えない事態を起こしてはならない。
販売企業は優先度の高い分野の供給を確保し、政府は買いだめや売り惜しみが起きないよう監視してほしい。

 資源の安定調達の基本は調達先の分散だ。
設備の不具合やストライキなど、米国側の事情によるヘリウムの需給逼迫は過去にも起きている。
調達先が米国に極端に集中する現状を見直す必要がある。


 岩谷産業はカタールでヘリウムの権益を取得し、2013年から輸入する。
大陽日酸はロシア産の調達を計画している。
こうした取り組みを広げてもらいたい。

産出国が限られ、調達先が特定の国に集中する資源はまだまだある。
自動車用の触媒に欠かせないプラチナは輸入の8割を南アフリカに、高性能電池に使うリチュウムはチリに9割近くを依存する。


 日本経済の弱点はいたるところに潜んでいる。
こうした資源を洗い出し、非常時に備える国家戦略が欠かせない。
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日経新聞 国際「資源頼みのロシア経済 限界」

2012年12月30日 05時43分12秒 | 国際
日経新聞 2012年12月27日(木) P.7 国際1面
連載『曲がり角のプーチン体制(下)』=資源頼みの経済 限界=

『国家管理、構造改革に逆行』

 ロシア北西部、雪景色に囲まれるフィンランド湾に、黒光りする天然ガスのパイプラインが伸びていく。

バルト海を通り欧州に向かう海底パイプライン「ノルド・ストリーム」だ。
欧ロのエネルギー協力の柱として昨年11月、鳴り物入りで稼働したが、1年間の利用率は約35%にとどまった。


『予測7%下げ』
 ロシア経済発展省は9日、今年の天然ガス輸出用の予測を7%引き下げた。
原因は欧州の景気低迷だけではない。
米国で新型ガスのシェールガスの生産が急増したあおりで、割安な中東産の液化天然ガス(LNG)が欧州市場に向かった。

 「シェールガス革命の進展をよく考えるべきだ」。
プーチン大統領は10月、市場の変化に遅れ、非効率さが目立つ巨大な国営ガス会社ガスプロムへの不満をあらわにした。

政府歳入の約5割を石油とガスが占め、資源輸出の減少は景気の減速に直結する。


 12月中旬、モスクワ中心部の自動車最大手アフトワズの系列販売店では、値引きの張り紙と販売員の姿が目立った。
ラム・プハエフ社長は「今年の販売台数は昨年より5%以上減る」と嘆いた。

 景気の先行きが不透明になり、個人消費に急ブレーキがかかる。
「これから10年間、最低でも年5~6%の経済成長が必要だ」。
プーチン氏は12日の年次教書演説で目標を掲げたが、現実とのかい離は広がる。

足元では欧州や中国への資源輸出が減った。
7~9月期の国内総生産(GDP)は前年同期比で2.9%増と減速が鮮明になった。


 欧州復興開発銀行(EBRD)は12月のリポートで、12年間のプーチン体制でロシアは資源への依存を強めたとし「経済構造の多様化は失敗」と結論。
米系シンクタンクのカーネギー・モスクワセンターも「(資源依存の)経済モデルは潜在力を失った」と分析した。


 政権がめざす「多様化」とは裏腹に、経済の国家管理は強まった。
GDPに占める国家部門の比率は約5割に肥大化。
石油産業では最大手の国営ロスネフチが10月、3位のTNK-BPを買収した。
政府系5社の生産量が6割以上を占める。


『銀行も国営拡大』
 金融界では今秋、米モルガン・スタンレーの現地法人幹部が相次ぎ引き抜かれ、話題をさらった。

ロスネフチが銀行を設立すると表明。
外資のトレーダーを囲い込んでいるという。
銀行部門でも国営の割合が資産量で5割を超え、資源がもたらす巨額の富を押さえる。


「すばらしい投資だ」。
ガスプロム傘下の大手銀行幹部は、チタン世界最大手VSMPO-アビスマへの投資決定に笑顔をみせた。

大株主の政府系企業は保有株の売却先に、政権に近い同行と現経営陣を選んだ。
民営化でも純民間の投資家を排除する「見せかけの民営化」が横行しかねない。


 株式市場ではPER(株価収益率)が約6倍にとどまり、新興国平均(約12倍)と格差が大きい。

「このままでは改革への期待がしぼみ、ロシア・パッシング(素通り)が強まる」(ドイツ系投資基金の運用担当者)。
投資家はプーチン政権の限界が示唆するリスクに及び腰になっている。

(モスクワ支局石川陽平、金子夏樹が担当しました)


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日経新聞 政治「海外から見た日本の金融緩和政策」

2012年12月30日 05時13分07秒 | 政治
日経新聞 2012年12月27日(木) P.17 マーケット総合2面
コラム『大機小機』=金融緩和の国際政治学=
 日銀の金融緩和はいまや経済政策の最大のテーマだ。

 金融緩和賛成者は、日銀がマネーの供給を増やせばインフレ期待が生まれ、それにつられて民間の消費や投資が増えて経済が成長するという。
反対の論者は、マネーを増やしても企業の生産性が高まらなければ、マネーは単に銀行部門に滞留するか国債に投資されて政府に戻ってくるだけで、デフレ脱却はできないと反論する。


 経済学的議論を整理すれば中長期的には「貨幣の中立性」が成立するので、中長期の経済成長に対して金融政策は影響を持たないとされる(多少の反論余地はあるが)。
 短期的には「ゼロ金利下での金融緩和が短期の景気にどういう効果を持つか、経済学的には分からない」というのが誠実な回答であろう。

ゼロ金利下での金融政策を記述する定説的な経済理論は存在しない。
データも乏しいので、賛否いずれの議論も決定打を欠く。


 現実の政策論として「大胆な金融緩和」を論じる際に重要なことのひとつが、政策が呼び起こす国際政治的な反応である。
海外の視点で見れば日本が極端な金融緩和を実施することは「極端な円安誘導」の為替介入を行うことと同じだ。

 「為替介入ではなく金融政策である」と主張しても、欧州のような金融危機が起きているわけでもないのに極端な金融緩和で円安にしようというのだから、日本が事実上の為替操作国になった、という認識が国際社会で広がるかもしれない。



 「日本が為替操作国になった」とみなされれば、日本政府と日銀は諸外国からのプレッシャーにさらされることになる。
日銀や財務省が極端なリフレ政策(注①)に消極的だった大きな理由のひとつがこれだが、世間ではこのことがあまり論じられていない。


 金融政策は法的には内政だが、円安を通じて諸外国に影響を与えるので、国際社会、特に米国に納得してもらえる政策の「大義」が必要である
たとえば「ドルやユーロの信認が下がる中で、国際通貨としての円に対する需要が世界的に高まっているから円を大量供給するのだ」と言えるのかどうか。


 関係者の反対でとん挫した鳩山由紀夫元首相の普天間問題の二の舞にならぬよう、金融政策も注意して進める必要がある。

(風都)

『ことば』日経新聞 2012年11月21日 P.3
(注①)リフレ政策:「
「リフレーション(reflation)政策」の略。

主に中央銀行による積極的な金融緩和を通じて景気の回復を図り、緩やかなインフレ(物価上昇)を生み出すことをめざす。

マネーの量が経済に及ぼす影響を重視しており、リフレは日本語で「通貨再膨張」と訳されることもある。

脱デフレ政策として一部の学者やエコノミストが主張している。 (後段略)



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日経新聞 経済「エコポイント 実は失策?」

2012年12月30日 04時37分40秒 | 経済
日経新聞 2012年12月29日(土) P.2 総合1面
コラム『真相深層』=エコポイント 実は失策?=

=需要先食い 痛み増幅=
『テレビ 国内出荷は7割減』

 国内のテレビ販売は年末商戦も決め手を欠き、2012年の出荷台数は前年比7割減の600万台強になりそうだ。

 主因は家電エコポイント制度の終了による反動減。
電機大手や家電量販店からは「需要の先食いを誘発しただけで、制度そのものが失敗」という恨み節が聞こえてくる。

 
 省エネ性能が高いテレビやエアコンを買うとエコポイントが付き、指定商品と交換できる家電エコポイント制度は、自民党の麻生太郎政権時代の09年5月、リーマン・ショック後で冷え込んでいた消費を喚起する狙いで始まった。

民主党への政権交代後も条件を厳しくしながら、11年3月まで2年近く続いた。
この間、地上波のデジタル化に伴う買い替えも加わり、10年の薄型テレビ国内出荷は前年比85%増の2519万台に跳ね上がった。


 空前の需要増を受けシャープやパナソニックは大増産に踏み切ったが、作っても作っても足りない状態が続いた。

 しかし制度終了と同時に販売は急降下。
11年は21%減の1982万台、12年は600万強と10年の4分の1に落ち込む見通しだ。

メーカーの倉庫には在庫が山積みされ、大赤字の原因になった。
8月下旬、2000人の希望退職を募ることを決めたシャープの奥田隆司社長は「エコポイントなどでテレビが売れたため、市場が回復したと判断を誤った」と釈明した。


『価格下落に拍車』
 家電エコポイント制度に最初から反対していたのが家電量販最大手のヤマダ電機の山田昇会長だ。
「太陽光パネルや発光ダイオード(LED)照明のような、いままでにない商品が対象なら、新市場の創出につながるが、すでに市場があるテレビのような商材を対象にしたら、需要の先食いが起きる」と警告を鳴らしてきた。

 結局「最盛期には1か月で1年分を売り、3年分は需要を先食いした」(山田会長)と見る。
しかも需要が盛り上がった時期には各社がシェアを競い、価格下落にも拍車がかかった。

家電に続き自動車でも補助金の反動減が起きている。
政府は今年9月にエコカー補助金を打ち切った。
反日暴動で中国向け輸出が減ったこともあり、10月の国内生産は12%減った。

 エコカー補助金は国内新車販売の十数%に当たる60万台程度の需要先食いを生んだとの試算もあり、日本自動車工業会の豊田彰男会長(トヨタ自動車社長)は20日の記者会見で「(13年の新車販売は)1月以降、当面は前年比マイナスが続く」と予想した。


『米車市場は回復』
 海外に目を向けると、リーマン危機後の09年に米国も補助金で古い車から新車に買い替えを促すスクラップ・インセンティブ制度を導入。
欧州各国も同様の制度を導入したが、いずれも1年で打ち切っている。

 その後、米国の自動車市場は毎年100万台ずつ回復し、健全性を取り戻した。
日本はエコカー補助金を断続的に3年間続けた。
その分だけ今後は反動減に苦しめられる懸念がある。

 
 前欧州委員会副委員長のギュンター・フェアホイゲン氏は「欧州にもエコポイントに似た制度があるが、補助金は出していない」と説明する。

 欧州版エコポイントは欧州委が毎年、各社の家電製品の省エネ性能を調べ、星を付ける。
相対評価なので今年三ツ星でも他社製品の性能が上がれば来年も三ツ星とは限らない。

 「政府がお墨付きを与えることで、メーカーに環境性能が高い製品を開発する動機づけをしている」(フェアハイゲン氏)。
日本のエコポイントはメーカーを救う保護政策の色合いが強かったが、欧州版は競争策である。


 家電エコポイント制度の事業予算は約3000億円。
薄型テレビやエアコンが飛ぶように売れた当時は政府も「3000億円の予算でも数兆円の市場を作った」と自画自賛したが、今となっては痛みを先送りして増幅させた感もある。

(編集委員 大西康之)


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日経新聞 経済「消費税増税前に住宅投資は増加」

2012年12月30日 04時15分53秒 | 経済
日経新聞 2012年12月27日(木) P.20 マーケット・商品面
『日経建設業調査から(上)』=戸建ての消費増税駆け込み需要=

『来年度「1割以上の増収」37%』

 2014年4月の消費税率の引き上げ前の駆け込み需要で、戸建て住宅メーカーの37%が1割以上増えるとみている。

日本経済新聞社の「建設業調査」でこんな実態が明らかになった。
ゼネコン(総合建設業者)86社、マンション関連26社、戸建て関連27社から回答を得た。


 税率は5%が8%になる予定。
戸建て業界では来年中に建てなれないかという相談が増えている(関西の中堅)。
戸建て業界の81%が駆け込み需要が発生するとみている。


 マンション業界も62%が駆け込み需要を予想。
「1割以上」の増収予想が23%、「数%~5%増」が38%だった。


 ゼネコンを含めた全体では52%が駆け込み需要の発生を予想。
1997年に消費税が3%から5%に上がった時との比較では「ほぼ同じ」の予想が47%、「小さい」が27%、「大きい」が18%だった。
駆け込み需要がすでに発生しているか聞くと「している」が12%だった。
調査は10月下旬から12月上旬に実施した。


 駆け込み需要への評価(複数回答)を聞くと「反動減を懸念」が66%と最多で戸惑う声が多かった。


父さんコメント:戸建て住宅やマンションの販売増は白物家電や家具・住設機器など関連業界にも広く影響し、13年には景気刺激効果が期待できる。 一方、需要の先取りの面もあり「駆け込み需要」が落ち込む14年4月以降は逆に景気にはマイナスに働く。

 

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日経新聞 経済「100年前は富裕国家だったアルゼンチン」

2012年12月29日 09時27分04秒 | 経済
日経新聞 2012年12月11日(火) P.7 投資・財務面
コラム『一目均衡』=米州総局編集委員 藤田和明=

『100年前は富裕国でした』

 12月5日、ニューヨークでのヘッジファンド投資の会合。

主催者が選んだ会場は歴史博物館だった。

 議論の合間には、2つの大戦間の経済情勢の資料を映し、司会者が当時を振り返った。
「100年前は、アルゼンチンが世界トップクラスの富裕国でした」

▲   ▲

 屈指の農業国として、20世紀初頭は1人当たり国内総生産(GDP)で欧州をしのぐ豊かさを誇ったアルゼンチン。

ところが、世界が工業化へ進む中で産業転換に乗り遅れる。
高福祉の放漫財政も重なり、急速に力が衰えていった。

 1980年代以降は財政危機を繰り返し、2001年には総額800億ドル超のデフォルト(債務不履行=国家が対外債務を支払わないと宣言)を起こした。

それから11年。
再びデフォルトの危機にある。

 引き金は一部のヘッジファンドへの債務返済を命じる米地裁の命令だ。

「ハゲタカ(=ヘッジファンド(注①))には一銭も払わない」と強硬姿勢を続けたアルゼンチンだが、今回の命令を拒否すれば、他の債権者にも同様に支払えない状況に陥りかねず、デフォルトリスクが再浮上。

その後、期限を来年2月に先延ばししたが、依然不透明だ。

 今なお国際金融市場に本格復帰できていない。

「(企業の同意を得ないまま、一方的に)国有化した(外国企業のアルゼンチン子会社である)石油大手YPFも、金融機関が資金を出せなければ経営の立て直しはできまい」。

南米のビジネス関係者の嘆きも聞こえる。


 アルゼンチンと日本。

かって、経済学者クズネッツはこう評したという。
「世界の国々は4つに分類できる。 先進国、発展途上国、そしてアルゼンチンと日本だ」。

没落したアルゼンチンと、工業化で奇跡の成長を果たした日本。
この2国は例外との意味だった。

しかし、いまの日本からその輝きは失われつつある。

工業化社会の次の姿を見いだせず、財政悪化に苦しむ姿は、対極どころか、このままでは後を追う側になるのでは、という懸念さえ頭をよぎる。


 少なくとも、一部ヘッジファンドが仕掛ける「日本売り(=日本国債の売り浴びせ)」は、日本の“アルゼンチン化”を見越した動きだろう。

代表格であるヘッジファンドの運用者、カイル・バス氏は最近の講演で「構造的な転換点を日本は迎えている」と訴えた。

(経済成長・拡大の政策なしでは)膨張した政府債務が持続不能になり、通貨は下落、高インフレが深刻化するーー。

こうした経路は、国や制度が違っても大差ないとにらんで、彼らは隙を突こうとする。


 日本の場合は、国債の90%強を国内で消化し、安定してきた。
ただ高齢化が止まらず経常黒字も減少が続けば、どこかで需給が崩れる懸念はある。

国際通貨基金(IMF)は、銀行の資産が国債に集中しすぎるリスクを警告する。

▲   ▲

 週末の衆院選は重要な節目になる。
「100年前は富裕国でした」。

未来の日本がそう呼ばれる日が来ないようにするには、市場にくすぶる不安を払拭する財政改革と、経済成長をもたらす産業構造の変革が必要だ。

時間的な余裕は少なくなっている。


●父さんコメント:(注①):
 国の経済成長が止まると輸出額が輸入額を下回るようになる。
 
赤字国は不足額を国債などの発行で借金をして、不足額を補てんする。
国の借金が過剰になると市場からの信認を失う。

その結果、国債や通貨が下落し、資金不足から金利は上昇する。
経済は疲弊し、多くの企業は資金不足や倒産の危機に瀕する。

そんな経済危機をチャンスとみて、先進国の投資ファンドは経営危機に陥った企業を安く買いたたき、資産売却、人員削減、事業縮小などを通じて縮小均衡させた上で企業を転売したり、他社と合併させる。

こうした短期に企業を売買し、莫大な利益を上げる投資手法の海外投資ファンドを別名「ハゲタカファンド」と呼称する。

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