日経新聞 スポーツ「微差は大差」豊田 康光

2012年11月30日 16時48分37秒 | スポーツ
日経新聞 2012年11月29日(木) P.45 スポーツ面
連載『チェンジアップ』野球評論家 豊田 康光

「『微差が大差』の人生観」

 コーチとして長く“番頭役”を務め、晴れて監督にーー。

オリックス・森脇浩司新監督の足跡はこの球団の先輩監督、

仰木彬の経歴と重なる、と思った。

 新監督として「週刊ベースボール」に語った抱負の一節に、

施政方針が端的に表れていた。

「僕は微差は大差だと思っている。 その日だけで見ればほんの

わずかなことで、取り上げるまでもないちょっとしたことでも、

それらが積み重なれば大差になる」

 今季、最下位になったオリックス。 個々の試合をみれば紙一重の

差だったかもしれないが、実はその紙一重に大差があった、というとらえ方だ。

常勝軍団といわれる球団は日々細かいことを積み重ね、少しずつでも前進している。

それを見逃したら、永遠に追いつけないというわけだ。

 ソフトバンクや巨人にも籍を置き、強者の楽屋裏を見てきた人ならではの哲学だろう。

「微差が大差」の考え方は名人芸といわれたノックにもみてとれる。

 狙ったコースに狙ったバウンドで打てるのはもちろんのこと、

投手と内野手の連係プレーのノックにうならされる。

投手が実際に投球しない「擬投」だけの練習でも、球が本塁に達したであろう

頃合いを見計らい、実践と同じタイミングでゴロを転がす。

 それこそ取り上げるまでもないことのように思われるかもしれないが、

連係プレーの成否は投手と野手の一瞬の呼吸にかかっているわけだから大事だ。

練習は実戦の再現であり、実戦は練習の再現でなければならない。

 ソフトバンクにいた時分、王貞治監督(当時)の病気治療の間などに代行を託された。

「安心して任せられる」と王監督から信頼をえていたのもわかる。

 新監督のコーチ時代、キャンプ取材で訪れると、どんなに忙しくても必ず

「豊田さん、ようこそ」と言って、丁寧に応対してくれたのを思い出す。

コーチとして下積みをしたといっても勝てるとは限らないけれど、

その下の選手たちが「微差が大差」など、たたきあげならではの

人生観を学ぶのは間違いない。
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日経新聞 経営「攻略すべきはニッチ市場」エイチ・アイ・エス ③

2012年11月30日 16時19分15秒 | 経営
日経新聞 2012年11月29日(金) P.27 経営教室面
連載『経営塾』=新たな市場を拓く=ヘエイチ・アイ・エス ③ 会長 沢田 秀雄

「基幹事業、全社一丸で育成」

 旅が好きで、若い頃から世界各地を飛び回っていた。 

そこで気が付いたのは同じ商品やサービスでも

日本より海外の方が極端に値段が安い場合があるということだ。

この“ゆがみ”を正せばビジネスになると考えた。

 1976年に帰国して始めたのは内外価格差が

特に大きかった毛皮製品の輸入販売だ。

野生動物保護の動きで困難になると、80年には個人の海外旅行客に

格安航空券を販売する旅行会社インターナショナルツアーズを設けた。

当社の前身だ。

 当時の米欧航空会社はオフシーズンに正規の半額程度の格安航空券を売っていた。

日本でも需要が膨らむと確信した。

 そのころの日本の航空会社はシーズンごとに大きく運賃を

変える柔軟性をもたなかった。

大手の旅行会社も売上高や利幅が大きな団体旅行に力を入れ、

個人旅行は見過ごしていた。

格安航空券は当社のようなベンチャー企業が攻略すべきニッチ(隙間)市場だった

 格安航空券は外国航空会社や、団体用にまとめ売りされた航空券を

ばらして売る卸売会社などから仕入れた。

お金に余裕はないが外国に行きたい若者に売り込んだ。

形を見せ始めた新たな市場に大手旅行会社が関心をもたないように、

なるべく目立たないように心がけた。

広告を控え、マスコミの取材も避けた。

 新たな市場では先行企業が長く優位でいられるケースが多い。

若い社員は個人旅行の企画作りに意欲をみせたが

格安航空券でナンバーワンの地位を固めるまでは許さなかった。

創業時には全社をあげて基幹事業を育てなければならないからだ。
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日経新聞 経営「新事業は逆張りで参入」エイチ・アイ・エス ①

2012年11月30日 15時50分23秒 | 経営
日経新聞 2012年11月27日(火) P.33 経済教室面
連載『経営塾』=新たな市場を拓く=エイチ・アイ・エス ① 会長 沢田 秀雄

「ビジネスの『土砂降り』は好機」

 1980年、東京都新宿区の雑居ビルの一室を本社に、エイチ・アイ・エス

の前身となるインターナショナルツアーズを設立した。

海外旅行といえば団体ツアーが全盛だった時代に、格安航空券を使った個人旅行という

新しい市場を拓いた。

現社名に変更したのは90年で、95年には株式を店頭公開した。

2011年10月期の売上高は連結で3800億円に達した。

 この間にさまざまな新事業に挑んだ。

格安航空会社(LCC)の先駆けとしてスカイマークエアラインズ

(現スカイマーク)を96年に設立。

03年にはモンゴルのハーン銀行を買収した。

テーマパークのハウステンボスは10年に子会社化し、

11年9月期には開業後初めて営業収支を黒字にした。

 困難な事業ばかりにみえる。

だが、いずれも成長分野だと判断した投資ばかりだ。

見込み通りに、LCCは日本で設立ラッシュを迎え、

モンゴルの鉱物資源は世界の注目を集める。

長崎県佐世保市のハウステンボスは訪日客の多い中国、韓国、

台湾に近く、再生は可能だと判断した。

時代の変化をとらえ、10年先に伸びる分野に投資しなければ

ならない。

 誰の眼にも好調に映る産業は、すでに衰退が始まっている

困難に見える分野への進出は誰もがためらうので、私のような

チャレンジャーには好都合だ。

ビジネスにおける“土砂降り”はむしろチャンスなのである

 参入するならば広く社会のためになる事業を選ぶとよい。

こうしたビジネスは監督官庁や周辺業界の協力を得やすく、

成功につながりやすい。

ただ、新事業への挑戦は失敗が許される範囲に抑えるべきだ。

仮に失敗しても、その経験は必ず次の事業に生きる。

だが本業が致命傷を負えば、無謀と言わざるを得ない。
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日経新聞 社会「東電、4社から電力融通を受ける」

2012年11月30日 15時08分44秒 | 社会
日経新聞 2012年11月27日(火) P.11 企業総合面
『東電、4社から電力融通』=思わぬ気温低下、需給逼迫=

「最大100万キロワット、昨年春以来」

 東京電力は26日、東北電力や中部電力など4社から

最大100キロワット(原子力発電所1基分に相当)の

電力融通を受けたと発表した。

昨年3月、東日本大震災の直後から3月28日までは融通を受けたが、

昨年4月以降では初めてとなる。

気温が予想を下回り、暖房向け需要が膨らんだことが主因。

火力発電所の点検やトラブルで供給力がもともと低下していたため、

一気に需給が逼迫した。

 東北電、中部電、北海道電力、関西電力の4社から融通を受け、

最大4532万ワットの供給力を確保した。

受電時間は午後3時半から27日午前0時まで。

これに対して、午後5時台のピーク需要は4280万キロワット

供給力に対する使用率は94%と昨年4月以来の最高水準に並んだ。

東電は26日朝の時点では同日の最大需要を4030万キロワットと

予測していたが、雨で気温が上がらないことなどから4330万キロワットに修正。

当初想定した4435万キロワットの供給力では使用率が97%となり、

供給余力を示す予備率が最低限必要とされる3%を割り込みそうだったため、

融通要請に踏み切った。

 東電の火力発電所では20日に鹿島火力2号機(茨城県神栖市、

出力60万キロワット)、25日に広野火力5号機(福島県広野町、

60万キロワット)がトラブルで相次ぎ停止。

点検中の火力もあり、供給力が低下していた。
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日経新聞 保険・年金「社会保障 国民負担率4割」

2012年11月30日 06時48分00秒 | 保険・年金・税金
日経新聞 2012年11月28日(水)P.5 経済面
連載『衆院選 ‘12』=データでみる論点 ⑦=

「社会保障 国民負担率4割」―給付抑えず国債頼み―
 
 「自公政権の社会保障費削減は大きなひずみを生んだので、

毎年1兆円増える給付費の自然増を認めた」。

民主党が11月中旬に開いた政策進捗報告会で、長妻昭元厚生労働相が

政権交代の成果を訴えた。

 自公政権は毎年2220億円の社会保障費削減に取り組んだが、

産婦人科や小児科不足など医療崩壊につながったとの批判がでていた。

民主党政権は医療の値段を決める2010年の診療報酬改定で

10年ぶりのプラス改定を実現し、社会保障の拡充にカジを切った。

 問題は増え続ける社会保障費をどのように賄うかという視点に

欠けていたことだ。

海外と比べると、日本は社会保障費が増えているのに、負担率が

低いという姿がはっきりと浮かび上がる。


 税と社会保険料の合計の国民所得に対する比率を示す

国民負担率をみると、日本は39%だ。

英国の45%、ドイツの53%、フランスの60%に比べ低い。

これらの国は消費税率が20%程度だ。

日本は税と保険料で足りない分は国債で賄っている(注①)。

国債分を含めた潜在的な国民負担率は51%になる。

 財源不足を認め、社会保障と税の一体改革法を成立させたのは、

民主党政権の成果といえる。

しかし、患者が医療機関を受診するたびに100円を負担する案や、

70~74歳の医療費自己負担を1割から2割に引き上げる案は、

民主党内の反対で実現することはなかった。

社会保障の持続性を高めるためには、給付抑制策を打ち出す必要もあった。

 海外は高齢化を見据えて先手を打っている。

英国は年金の支給開始年齢を46年までに68歳に、ドイツは

29年までに67歳に引き上げることを決めた。

こうした国より日本は高齢化で先を行くのに、13年度から

65歳への段階的引き上げがようやく始まる。

周回遅れは明らかだ。

(後段略)



父さんコメント:
(注① ):
国債発行は国の借金であり、将来世代の借金でもある。

   日本の国民負担率は39%とあるが、国債分も含めた

国民負担率51%が実質的な数字ととらまえるべきだ。 一方で、

国債で社会保障不足分を賄う政策は、現在の社会保障費を

消費税などで現在の国民で負担する代わりに、将来世代に負担を付け替える

いわば、問題先送り対策ともいえる。
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日経新聞 インターネット「ネット銀行の不正防止策」

2012年11月30日 06時42分49秒 | インターネット
日経新聞 2012年11月28日(水) P.21 マネー&インベストメント面
連載『クローズアップ』=ネット銀の不正防止策=

「『使い捨て型』導入、2重認証」

 インターネットバンキングの預金口座からの不正送金による被害が増えている。

金融機関を装ったメールを送りつけ、IDなどを入力させて

盗み取る「フィッシング」の手口が大半を占める。

最近では銀行のホームページに偽の画面を表示して情報を

盗み取るなど手の込んだ方法も用いられている。

 ネットバンキング大手のジャパンネット銀行が10月30日から

11月1日にかけて利用者の5896人に対して実施したアンケートでは、

5人に1人がフィッシングメールの受信や、個人情報の流出など

何らかの被害にあったことがあると回答した。


 ネットバンキングは自宅で送金や支払いの手続きができる便利さから

利用者が広がっているが、IDなどを盗まれれば

容易に口座を操作される危険性もある。

被害の多発を受けてネット銀行各社も、利用者が安心して

取引できるようセキュリティ対策を打ち出している。

 各社で採用が広がりつつあるのが「ワンタイムパスワード」。

通常のパスワードなどによる認証に加えて、全ての資金決済に

1回切りしか使えないパスワードを使って2重に認証を行う技術だ。

 利用者に1分ごとに異なるパスワードが表示される専用端末

「トークン」を配布する。

仮にフィッシングによりIDなどが流出しても、1分ごとに新たな

パスワードに変わるため、不正が起こりにくい。

パスワードを複数回誤って入力した場合は、自動的にロックがかかる。

 全利用者を対象にトークンを無料で配布しているジャパンネット銀行

では2006年の導入以降、不正出金が一度も起きていないという。

今年7月からソニー銀行も導入している。

 一方、住信SBIネット銀行では、携帯電話を利用する「モバイルキー」

認証を設定できる。

パソコンを経由した通常の認証に加え、登録した携帯電話が「もうひとつの鍵」

の役割を果たす。

2重の経路から認証でき、安全性を高める策だ。

現在はスマートフォンでは利用できないが、今後対応も検討するという。

 同社は不正と疑われる取引パターンをシステムに登録し、

それに合致する取引があった時に取引を停止できる

「不正利用検知システム」などの技術も採用している。
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日経新聞 保険・年金「自転車保険 ②」

2012年11月30日 06時18分16秒 | 保険・年金・税金
日経新聞 2012年11月28日(水) P.23 マネー&インベストメント面
連載『安心キーワード』=自転車保険 ②=「携帯で加入 月100円プラン」

 自転車保険は携帯電話やコンビニエンスストアで手軽に手続きでき、

保険料を抑えたタイプの新しい商品が出ている。

なかでも自転車愛好家らの注目を集めるのがau損害保険の「100円自転車プラン」。

自転車に乗っている間の事故と、歩いているときなどに自転車と衝突・接触

した事故によるけがを補償する。

自転車事故で亡くなったり後遺障害が残ったりすると450万円、

他人に傷を負わせるなどした場合には最大1000万円が支払われる。

 携帯電話やスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)から

申し込めるのが大きな特徴。

Auの加入者なら保険料は月払い100円と年払い1070円から選べる。

NTTドコモ、ソフトバンクのスマホやパソコンから加入する場合は、

年払い1070円に限られる。

 補償内容を厚くしたいニーズに応えて、「新自転車ワイドプラン」

も用意されている。

自転車事故に限らず交通事故全般や電車、バス、自動車

など乗り物火災によるけがを補償。

死亡・後遺障害400万円、他人にけがをさせた場合、

最大1億円が支払われる「イチおしコース」では、

年払いの保険料が4500円となっている。
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日経新聞 経済史「国民所得倍増計画 (1960年)」

2012年11月29日 15時31分27秒 | 経済史
日経新聞 2012年10月14日(日) P.13 日曜に考える面
連載『経済史を歩く』=国民所得倍増計画(1960年)=

=本物の成長戦略=「『豊かな日本』誰もが確信」

 55年体制(注①)のもと、歴代の自民党政権は経済計画や国土計画づくりに精を出した。

後世に名をとどめる計画を挙げるとき、まず浮かぶのが池田勇人(はやと)の国民所得倍増計画だ。

閣議決定は1960年(昭和35年)。
根拠も実現性もさだかでない最近のそれとは好対照の、本物の成長戦略である。


 黄金色に輝く箱根仙石原のすすき草原が見ごろをむかえた。

見物ついでにパレスホテル箱根へ足を延ばし、名物のカレーライスを食べるのを楽しみにする観光客もいる。

 開業は池田が首相に就いた60年7月。
当時は箱根観光ホテルといい、山ぶかい裏手に池田の別邸があった。

ホテル最古参、業務課の阿部金司は「池田総理とラスク米国務長官との会談も当ホテルを使っていただきました」と話す。

 池田の知恵袋たちがあつまり、所得倍増計画を精緻なものに仕上げようと、このホテルにこもった。

水木楊『思い邪(よこしま)なし』から引く。
「池田はカレーライスが好きで朝昼となく勉強会に顔を出してはカレーを平らげた。

いきおいブレーンたちもカレー、カレーで日夜を過ごす」

『経済の進路、毅然と』
 知恵袋の中核は下村治。 学者生命を賭して経済論争に挑んだ本物のエコノミストだ。

「安保の岸(信介首相)」から「経済の池田」へ。
自民党で池田が率いた宏池会(派閥)は経済を旗印にした。

池田を男にしたいという経済人、学者、官僚が礎(いしずえ)になった。

 派閥の事務局長は大蔵省同期の田村敏雄。
役に立つ秀才が省内にいると言って下村を池田に引き合わせたのが、田村だった。

 34年、東大経済学部を出て大蔵省に入った下村は、経済企画庁の前身、経済安定本部で最初の経済白書の執筆にかかわった。

日本銀行政策委員などを経て50歳を前に大蔵省を退官。
日本開発銀行理事に就いたのが60年のことだ。

 開銀はいま日本政策投資銀行に衣替えしたが、下村が初代所長を務めた設備投資研究所は健在だ。

千葉商科大大学院客員教授の橋山禮治郎は開銀勤務時、この研究所で下村の薫陶を受けた。

「所得倍増、石油危機、日米摩擦、バブル発生。
日本経済が曲がり角に差しかかるたびに、下村さんは毅然と進路を示した」

 所得倍増の源流は一橋大学長を務めた中山伊知郎が59年1月3日の読売新聞に載せた寄稿だ。

見出しは「賃金2倍を提唱」。
下村は池田のまわりをかためていた大平正芳(後に首相)や宮沢喜一(後に首相)とともに、中山理論を所得倍増論に昇華させていった。

いわく「賃金倍増だと恩恵を受けるのは会社員だけという印象だが、自営業者や農民もふくめて豊かさを手に入れる絵姿を示す」


『数字で具体像示す』

 括目(かつもく)すべきは、日本経済と国民生活がこれからの10年間にどこまで、どう、豊かになるのか、わかりやすく、かつ緻密に示したところだ。

パソコンがない時代、手回し式のタイガー計算機で潜在成長力の推計を模造紙に打ち出す作業が、大蔵省内の一室でつづけられた。

 計画の要諦は社会資本を拡充させ、生産性が高い部門へ労働力を移し、輸出競争を勝ち抜くこと。

下村は当初3年間は毎年10%超の成長ができると主張した。
緻密さの裏付けがあったからだが、経済運営の本山である企画庁は異をとなえた。

機械的な計算によると、毎年7%台の成長で10年後に国民所得は倍増する。

 ふたを開ければ10年間の平均成長率の実績は10%。
軍配は下村にあがった。

企画庁編『戦後日本経済の軌跡』は所得倍増計画を「部門間の成長速度の違いから生じる格差問題への対応は具体性を欠いた」と厳しめに評価している。

 この計画の功罪はなにか。
まず罪から。

やみくもな成長が70年代に深刻な公害問題を引き起こしたのは必然だったが、対応は遅れに遅れた。

功はどうか。
安保騒動で政治不信におちいっていた日本人一人ひとりに、みずからが豊かになる道筋を実感させた。

 遊説で池田は数字を語りつづけた。
米の値段、年金や税金の水準――。

「私は嘘は言いません」。
経済大国への扉を開けた愚直なことばに、重みがあった。

(編集委員 大林 尚)



いま起きている出来事には出発点がある。
源流をたどると忘れていた断面が見える。

経済史を歩く。 

次回は「米国流通の巨人がもたらした価格破壊~トイザラス上陸」
 


父さんコメント:(注①):
「55年体制」~1955年に与党は保守の自由民主党、野党は革新の社会党という、保守の与党、革新の野党の2大政党の対決の構図が定着した政治体制を指す。

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日経新聞 経済教室「社会保障の考え方 ⑦」

2012年11月29日 09時50分30秒 | 経済教室
日経新聞 2012年11月29日(木) P.27 経済教室面
連載『ニュースを読み解くやさしい経済学』=第3章 社会保障の考え方 ⑦=

「人口・成長・金利が左右」

 関心が高い年金ですが、誤解されている面もあります。

年金保険料は20歳から60歳になるまで払い続けます。

老後の年金給付は自分が払った保険料を積み立てて賄われると思う方は多いでしょう。

しかし、現行制度は積み立て方式ではありません。

むしろ、現役世代が払った保険料を今の高齢者の給付に充てる賦課方式

(ふかほうしき)に近い仕組みです。

 両者の優劣は状況によります。

 人口が増える時代は、より多い若い世代の保険料で高齢者への給付を

賄うので1人当たりの負担が軽くできる賦課方式が有利です。

金利が高い時代は運用益が期待できる積み立て方式に分があります。

経済学的により厳密にいうと、人口の伸び率と経済成長率を

合わせた値が金利を上回れば賦課方式、金利が上回れば積み立て方式が有利です。

 人口減社会の今は賦課方式に近い年金だと不利で、いろいろと問題が生じます。

負担に対してどれだけ給付があるかという「給付負担倍率」でみると、

世代間の格差が広がることがその一つです。

これを心配した若い人を中心に保険料の未納者が増え、

保険料納付率は60%を割っています。

政府は年金の世代間格差を問題視するのはおかしいという主張を始めています。

社会のインフラが未整備の時代に比べ、豊かな現在を生きる

若い世代は豊かさを享受しており、年金だけで格差を強調すべきでないというのです。

 これは問題の焦点をそらしており不誠実です。

人口や金利は変化しますので、給付と負担に格差が生じるのはある程度やむをえません。

重要なのは、その差が許容範囲か否かです。

現行制度は実のところ、今の若い世代は親や祖父母より給付負担倍率が悪いものの

全くもらえないほどダメなわけでもありません。

 現行制度で世代間格差を改善する余地は多く残っています。

保険料を払う若い人の数の減少に合わせて給付を抑制するとか、

いま70歳以上の世帯の半分弱が所得税を払っていないので、

年金課税を強化することなどが考えられます。

(慶應義塾大学教授 土井 丈朗)
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日経新聞 経済史「サミット発足(1975年)」

2012年11月29日 07時49分24秒 | 経済史
日経新聞 2012年11月25日(日) P.11 日曜に考える面
連載『経済史を歩く』=サミット発足(ほっそく) 1975年=

―「日米欧」の枠組み整う―「世界を仕切る会議の緊張」


 1970年代、世界は為替変動の波にもまれ、石油ショックによるインフレに襲われた。

体制を立て直すため、75年に日米欧の主要6ヵ国(G6)は

フランスで首脳会議(サミット)を開いた。

日本からは首相の三木武夫が出席、戦後初めて国際経済外交のひのき舞台に立った。


 パリ中心部から急行で約30分。

国鉄ランブイエ駅から5分ほど歩くとフランス風庭園が目に入る。

ランブイエ城の入り口だ。

日米仏独英にイタリアを加えたG6による第1回サミットの舞台である。

 11月15日から17日の3日間。

4回に渡るG6首脳の全体会合の中身は経済が中心。

仏大統領ジスカールデスタンとともに会議を先導したのは西独首相シュミットだ。

シュミットが口火を切り、米大統領フォードが議論をはさむ。

 焦点の通貨。

フランスは固定相場復帰を唱え、変動相場か固定相場かは

各国の自由とする米国と対立したが、最後は玉虫色で折り合った。

 「日本は恐ろしいインフレに直面している。 来年は一ケタの物価上昇率を目指す」。

初舞台の三木は順番を待って発言する感じである。

マクロ経済を論じた15日夕の第1回会合では、

事務方の用意した数字を読み上げた。

発言は関係省庁の鳩首(きゅうしゅ)会議の最大公約数。

英国の文書は「通訳の関係でもともとの声が聞き取れない」とある。

 おやっと思うのは、エネルギーについて論じた16日午後の第3回会合だ。

三木は核融合の開発に向けた長期的努力を力説し、

国際協力への参加を希望している。

石油ショックで資源小国の現実を思い知らされた日本が、

石油から原子力へとカジを切ろうとする様子が浮かび上がる。

 日本が招かれぬ奥の院があった。

17日の第4回全体会合の前に、米仏独英が1時間半にわたり

腹蔵なく外交問題を語り合っているのだ。

シュミットが直近の訪中で主席の毛沢東に会った話を披露し、

ジスカールデスタンやフォードが対ソ戦略を論じている。

 前史がある。

米財務長官シュルツが73年春、ホワイトハウスに仏独英の

蔵相を集めた4ヵ国の蔵相会議だ。

水面下の工作が実り、同年9月、ナイロビで開いた国際通貨基金の

総会を機に日本も加わり5ヵ国(G5)蔵相会議となる。

 石油ショックのさなかの73年11月、仏ロアールの古城

シャトー・ダルティーニー。

オフシーズンで閉鎖中のホテルで、人目を忍んで開かれたG5蔵相会議。

シュルツはアラブ産油国の(原油)禁輸策に対する石油消費国の団結を訴えた。

 「シュルツ発言はニクソン大統領の意を受けている。注意をした方がいいぞ」。

当時、西独蔵相だったシュミットは、蔵相の愛知揆一の急逝に伴い

日本から出席した財務官、稲村光一に耳打ちした。

 米国が田中角栄政権のアラブ寄り外交を苦々しく思っている、とほのめかしたのだ。

フランスもアラブ寄りだったのに、蔵相のジスカールデスタンは

議長であるのをいいことに空とぼけてみせた。

 現在と同様に、70年代も米国優位の秩序が動揺していた。

そんな時代のG5蔵相会議は政治と経済が不可欠だった。

74年にはジスカールデスタン、シュミットの両蔵相が

そろって仏独のトップに就任する。

主役が平行移動し、サミットが誕生したのである。

 国際通貨研究所理事長の行天豊雄が振り返る。

「当時は米国に対しフランスを中心に欧州が異議申し立てをしていた。

日本は経済力に見合った地位を求め、主要国の一員になるのに必死だった」

 サミットには冷戦終結後の90年代に、米国の肝いりで

ロシアが加わりG8となる。

2008年のリーマン・ショックを機に、G8とは別に新興国も交えた

20ヵ国・地域(G20)サミットが発足(ほっそく)した。

 「G8の先進国だけで世界は仕切れないが、G20も国際秩序を描く場からほど遠い」。

直近のサミットでシェルパ(首脳個人代表)を務めた

外務省の西宮伸一は、生前そう語っていた。

 台頭する中国は、折り合いを最重視した70年代の日本とは違う。

かくてイアン・ブレマーのいう、指導国なき「Gゼロ」時代が到来した。

サミットに坂の上を見た日本には戸惑いがある。

(編集委員 滝田洋一)

(参考):2012年11月13日投稿 『日経新聞 国際「尖閣諸島問題:日本は体制立て直せ」』イアン・ブレマー氏のコラム



いま起きている出来事には出発点がある。 源流をたどると忘れていた断面が見える。

経済史を歩く。 

次回は「大衆が株式投資に目覚める~NTT株上場」。
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