日経新聞 経済「食糧高騰は続くか」

2012年07月23日 11時17分21秒 | 経済
日経新聞 2012年7月23日(月) P.3 総合・経済面
連載『月曜 経済観測』=食糧高騰は続くか=
~需要増・投機で高止まり~  丸紅社長 朝田 照夫氏


大豆、トウモロコシなどの食糧価格が高騰している。伸び続ける世界の需要に農産物の増産は対応できるのか。 丸紅の朝田照夫社長に聞いた。

――世界の食糧供給には常に不安があります。

「世界の穀物消費量はトウモロコシと小麦、コメ、大豆を合わせて年間26億トンくらいだ。

これが〈新興国の経済発展により)10年後には30億トンまで増えると予想されている。 ただ、増産余地はある。

使っていない農地を利用し、面積当たりの収量もあげられる」

『水の確保が問題』
――現在の価格高騰は行き過ぎと思いますが。

「世界全体で見れば供給は足りても、食糧が足りない地域はあるし、干ばつなどによって年ごとに変動も大きい。

原油ほどではないにしても、投機マネーの影響も加わる。 トウモロコシで1ブッシェル2ドル以下といった安値には戻らない」

――食糧増産に向けた課題は?

「水の確保だ。 新興国では肉食が増えている。 需要に見合う牛肉を生産する(牛を育てる)ためには、餌の穀物栽培まで

さかのぼると牛肉1キロ当たり16トンの水が必要だ。 淡水化や汚水処理事業などに取り組まないと大変なことになる」

――日本は食料の多くを輸入に頼ります。

「アジアの次はアフリカ諸国が成長してくる。 各国が食糧を欲しがる中で安定調達の重要性は増す。

ただ、日本企業が海外で農地を取得し、大規模な農園を運営するのは天候や病害などのリスクが大きい。

主要産地の内陸部まで及ぶ集荷網を確保するのが有効な手段だと思う。同時にいつでも利用できる輸送船を持たなければならない」

『米は非常に好調』
――エネルギー源、とりわけ液化天然ガス(LNG)の確保も課題です。

「エネルギー分散がどう進むかによるが、年間9千万トン強くらいのLNGは必用になる。 

原油のように、中東に調達先が集中しないようにすることが大切だ。

主な輸入国はカタールとオーストラリア、マレーシアだ。 今後、アジアの産ガス国は供給余力が落ちる」

「その分をオーストラリアと、輸送距離の近いロシアをどう使うかにかかる。

輸入国を増やせば、割高といわれる日本の調達価格も徐々に下がるだろう」

――モノの動きから世界景気はどうですか。

「中国は昨年に比べ明らかに悪くなった。 鉄鉱石や銅の輸入は相変わらず活発でも、国内のモノの動きが鈍った。

最も悪いのが石油化学製品だ。 建機や部品、鉄鋼製品も低迷している。

対欧輸出の不振が大きいのだろう。 一方で、米国はエネルギー生産や農業関連、自動車販売を中心にびっくりするくらい動きがいい」

――日本経済の再生には何が必要ですか。

「規制緩和だ。 農業と水、そして電力。 この3分野で規制を緩和し民間企業の活力を引き込むことが求められる。

東日本大震災をきっかけに自然エネルギーなどの電力は規制緩和の機運が出てきた。

農業にはまだまだ規制が多く、環太平洋経済連携協定(TPP)も交渉参加のメドが立たない。

水道事業も自治体の運営から、民間企業に移行していけば財政負担も軽減できる」

(聞き手は、編集委員 志田富雄)


あさだ・てるお
米国第3位ガビロンの買収で穀物貿易量は世界最大級に。 63歳
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