日経新聞 海外メディア「強気の米投資家 慢心にはあらず」=中国リスク、中東・朝鮮半島の不安定化…=

2017年05月11日 04時04分58秒 | 海外メディア
日経新聞 2017年5月10日(水) P.6 オピニオン面
連載「The Economist」=5月6日号=

『強気の米投資家 慢心にはあらず』

 10年前の5月、投資家たちは強気で自信を深めていた。

確かに米国の住宅市場には問題を抱えている兆候があり、そのことは住宅ローンの貸し手にとって懸念材料になるとの認識はあった。

だが、大方の人は「経済全般への影響は限られるだろう」というバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長(当時)と同じ見方をしていた。

国際通貨基金(IMF)も「先行きに対する全般的なリスクは、6カ月前ほどの大きな脅威にはみえない」と発表したところだった。

 そのことは株価にも反映されていた。

過去10年の平均利益を使って株価水準を評価する景気変動調整後のPER(株価収益率)「CAPEレシオ」でみると、米国株は当時、27.6倍だった。

結局、この水準があの時のサイクルのピークだった。

というのも米大手証券のベア・スターンズやリーマン・ブラザーズなどの問題が表面化し、世界が景気後退に襲われると、株価は急落したからだ。

2009年3月にはCAPEレシオはその半値以下に落ち込んだ。

各国の中央銀行は経済を浮揚させようと金利を引き下げ、量的緩和を通じて資産を買い上げるという政策を出動させた。

すると株式市場は急反発し、米S&P500種株価指数は今や10年前より50%以上高い水準にまで上昇している。

米国株のCAPEレシオも現在は29.2倍と当時をも上回っている。

 投資家は株価水準が高いとして警戒を強めるかもしれないが、ならばどこに投資すればいいのかという問題もある。

米10年物国債の利回りは10年前は4.8%前後だったが、今は2.3%の低さだ。

FRBは政策金利を引き上げ始めたかもしれないが、現金の利息はまだ名目ベースでは微々たるもので、インフレ調整後の実質ベースはマイナスだ。

 
 ただ、少なくとも現金と債券のリターンは満期まで保有した場合、名目ベースでは固定されている。

00年代に入って、投資家はすでに2度、株式市場の大きな弱気相場に見舞われた。
いずれの場合も投資家の損失は、率にして2ケタに達した。

では市場が再び崩壊するとしたら何がその引き金になり得るだろうか。

 CAPEレシオが長期平均の16.7倍に戻るという法則はない。
実際、過去30年の平均値は24.5倍だ。

08~09年の世界金融危機のどん底の時でさえ、同レシオが長期平均を割り込んだのは10カ月間だけだった。

トランプ米大統領が選出されて以降、米株式市場が力強く上昇してきた一因は、企業減税が実施され、株主に還元される利益がその分増えると投資家が期待したからだ。

 米資産運用大手GMOのジェレミー・グランサム氏が指摘するように、1996年以降、売上高と国内総生産(GDP)の双方に対する米企業利益の水準には変化があったようだ。

その結果生じたのが、労働者が手にする額のGDP比(労働分配率)の低下だ。
このことが有権者が抱える不満の一つになっている。


 グランサム氏は、企業が収益を拡大させてきた背景には2つの要因があると指摘する。
一つは米企業による寡占化が進んでいることだ。

もう一つは、実質金利が低く、お陰で企業が多額の債務を抱えて事業を営むことが許されている状況だ。

いずれも現在の資本主義の仕組みに何か問題があることを物語っている。

もし利益率が高いとしたら、本来、投資主導の競争が利益率を再び押し下げるまで、より多くの資本が事業に投入されるべきだが、それが起きていない。

低い実質金利は、金融危機後に先進国の経済を復活させるために各国の中央銀行が講じた異例の金融政策の結果でもある。

 株式市場が下落に向かう脅威は昔から2つある。
一つは金利の上昇だ。

これは多額の債務を抱える個人や企業に打撃を与える。
あるいは景気後退に陥ることで、これは企業の利益を落ち込ませる。


いずれも現在、差し迫った脅威には思えない。
そのため米国の株価が最高値を更新し続けているともいえる。

 だが、企業の利益率に打撃を与える要因は他にもある。

保護主義的政策が、国境を超えたモノ、サービス、人の自由な流れを阻害するかもしれない。

債務が急増している中国などで、信用危機が起きる可能性もある。
あるいは、中東や朝鮮半島の火種が戦争を引き起こす恐れもある。


 投資家は10年前ほど慢心しているようにはみえない。

米バンクオブアメリカ・メリルリンチが世界のファンドマネジャーを対象に実施した調査では、差し引きで32%が現在の株価は過大に評価されていると考えている。

しかし、にもかかわらず、差し引きで40%が株式保有率を通常より高くしていた。

 言い換えると、投資家は強気であると同時に警戒心も抱いているということだ。


ほとんどのファンドマネジャーは、世界経済の成長と企業収益がこの先12カ月間、力強く推移すると予想している。

だが、そうした期待がすでに株価に完全に織り込まれていることも知っている。
ショックが何もなければ、万事問題はないだろう。

しかし、ショックというものは、往々にして起きるという好まざる習性があることを歴史は物語っている。

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 英エコノミスト誌の記事を翻訳し、水曜付で掲載します。
電子版▼ビジネスリーダー→グローバル→The Economist


●関連日経記事
:2016年12月15日グー・ブログ「息子たちに読んでほしい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 経済史「AIG復活劇、リーマン・ショックとその後」=「企業再生」成功の条件 ③=』(2016年12月11日付)

●関連日経記事:2017年5月6日グー・ブログ「同上」投稿記事参照
 日経新聞 経済学「低金利: ローン安く、お得だけど」=「謎×経済」 ナゾノミクス③=』(5月4日付)

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