日経新聞 開発「創薬、背水の産官学連携」=22社、20万の化合物共有=

2017年03月21日 09時21分06秒 | 開発
日経新聞 2017年3月20日(月) P.13 科学技術面
連載『創薬・新潮流 (下)』

『背水の産官学連携』=22社、20万の化合物共有=

 ゲノム(全遺伝情報)に基づく薬品開発が飛躍的に進んだここ20余年、創薬に必要な開発投資は増大の一途をたどった。

欧米の製薬大手は合併による規模の拡大を進めたが、日本はその流れに乗り遅れた。

体力に劣る日本の製薬が研究を自前で担うのは困難になり、かってない規模で産官学の連携が進んでいる。

 製薬企業にとっての最大の資産を共有する前例のない試みが、昨年から動き出した。
各社が蓄積した膨大な化合物のライブラリーだ。

 AMED(日本医療研究開発機構)の主導で、武田薬品工やアステラス製薬などの大手、小野薬品工業などの中堅を含む22社が約20万種の化合物を提供。

業者に委託し、大学が見つけた病気の関連たんぱく質に結合する化合物を探し出す。

 結合するものが見つかったら、まずは化合物を提供した企業が開発の優先権を得る。
だがその企業が見送れば、他社へ権利が移る。

新薬の候補を効率よく見つけ出すことができ、死蔵されるリスクも提言する。

 企業にとってもコストが節減できる利点はあるが、ライブラリーはいわば企業の生命線。

「多くの企業は保守的で、化合物を社外に出したがらなかった」と、数年前から制度の立ち上げに取り組んできたAMEDの高子徹・創薬支援戦略部東日本統括部長は明かす。

だが2014年にアステラスと第一三共が化合物の相互利用を始めたことで「流れが変わり、よい化合物が提供されるようになった」。

 新薬の創出は年々難しくなっている。

創薬の成功率は下がり、候補化合物のうち薬として発売にこぎ着けるのは2万~3万個に1つ。

開発には10年以上、費用は1000億円以上かかる。

 膨張する研究開発投資を賄うため、欧米勢は1990年代以降、合併を繰り返し巨大化してきた。

最大手である米ファイザーの売上高は、国内首位の武田の3倍だ。

 体力に劣る日本勢は危機感を募らせ、新薬のシーズを持つ大学との連携を強化している。

 iPS細胞を用いてALS(筋萎縮性側索硬化症)や心疾患の研究を進める武田の湘南研究所(神奈川県藤沢市)では、約90人の研究者の約半数が京都大学iPS細胞研究所のメンバーだ。

武田の社員に交じってiPS細胞から神経や心筋などの細胞を作り、新薬開発につながる研究に取り組む。

 武田は同所に10年間で計320億円を提供。
同所の一部を自らの研究所に取り込む形で共同研究を進める。

 欧米ではリスクの高い創薬研究を担うベンチャーが多いが、日本では低調だ。

同社の再生医療ユニットの出雲正剛グローバルヘッドは「日本のベンチャーは1つの技術しか持っておらず、望みがなくても次に行きにくい」と指摘する。

大学発ベンチャーをいわば社内に抱えることでそうした問題を解決し大学の成果を活用できるとみる。

 大学の側も企業との連携を真剣に模索している。
大阪大学免疫学フロンティア研究センターは、中外製薬と10年間の提携契約を結んだ。

 センターは16年度末で政府の女性が終了し、存続の危機にあった。

中外との提携は願ったりかなったりで、審良静男拠点長は「政府も財政難。 提携で自由に研究できる」と胸をなで下ろす。

中外製薬は研究センターに100億円を拠出。

研究テーマは阪大が選ぶが、成果は発表前に中外に開示し、中外は共同研究に進むかどうか決められる。

 かって産学連携は学生の採用やコネづくりのためといわれたこともあったが、今では産学ともに生き残りがかかる。

本気の産学連携の結果が出るのはこれからだ。

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 草塩拓郎記者、藤井寛子記者、越川智瑛記者、遠藤智之記者が担当しました。

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