日経新聞 英語『英語を「話す」と「書く」の溝』=立命館大学准教授 山中司=

2017年01月18日 05時48分01秒 | 英語
日経新聞 2017年1月17日(火) P.24 経済教室面
連載コラム『私見卓見』=OPINION=

『英語を「話す」と「書く」の溝』=立命館大学国際部副部長・准教授=

 本格的なグローバル時代が到来し、個人が積極的なコミュニケーションを取ることが期待されている。

 その際に使う言語は英語が中心だが、この場合の英語は「通じる程度」であることに大方異論はないだろう。

もちろん、いわゆる正しい英語を話し、書ければ一番良いのだろうが、母語を日本語とする社会で育った私たちがネイティブ並みの言語能力を保持することは難しいし、またそうする必要もない。

なぜなら重要なのはやりとりするコンテンツであって「上手な英語」ではないからだ(=英語は手段だ)。

 大学のグローバル政策に関わりつつ本業は英語教員である私は、ここで一つの問題にひっかかる。

それは英語を書くことに関する教育方針である。

大学の英語の授業で扱う観点からは「通じる程度」で書くことは少なくとも推奨できるものではない。

 論文、リポートなどスタイルは様々でも、活字になった途端、我々の文明は歴史的にそれを「格調高いもの」として扱ってきた。

したがって文法の間違いや語彙(ごい)の選択にはシビアにならざるを得ない。

卑近な例で言えば「三単現のsを付け忘れるようならまず取引先には信用されないよ」といったところである。

 私は学生に「コミュニケーションは言語だけではない。 間違ってもいいからどんどん英語で発信してみよう」と説くが、一方で「でもライティングだけは別だから」と添えている。

だが「通じればよい英語コミュニケーション」と「一定以上の正確さにこだわる英語ライティング」を教育上どうやって共存させればよいのかは悩ましいテーマだ。

これら「2つの英語」には実は想像以上の溝が存在すると思えてならないのである。

 コミュニケーション論的に見れば、通じれば良い英語は新しいコミュニケーションの考え方、正確さを重視するライティングの英語はどちらかといえば時代遅れな考え方と分類できる。

後者は「コミュニケーション=言語」と考え、いわゆる言語至上主義が前提だ。
エリート主義的で排他的な傾向があり、開放的で自由な昨今のコミュニケーションの流れとは相いれない。

 だからといって英語でライティングができることの重要性は否定し難い。

苦肉の策がだ、自由で通じる程度のコミュニケーションを大枠で推奨しつつ、ライティングだけは「別物」扱いにし、しっかりとした英語を書くことが最も妥当な策だと思う。


●関連日経記事:2016年10月19日グー・ブログ「息子たちに読んでほしい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 英語「語学の参考書、世間が面白くないときは勉強」=半歩遅れの読書術 哲学者 國分 巧一郎=』(2016年10月16日付)

●関連日経記事
:2016年6月14日グー・ブログ「同上」投稿記事参照
 日経新聞 英語「ネーティブ英語は必要ない」=伝わる英語、聞ける英語習得を目的に=』(2016年5月24日付)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 当欄は投稿や寄稿を通じて読者の参考になる意見を紹介します。

〒100-8066東京都千代田区大手町1-3-7日本経済新聞社東京本社「私見卓見」係またはkaisetsu@nex.nikkei.comまで。

原則1000字程度。
住所、氏名、年齢、職業、電話番号を明記。

添付ファイルはご遠慮ください。

趣旨は変えずに手を加えることがあります。
電子版にも掲載します。


◆父さんコメント:

 英語を使う場面を考えれば、「使える英語」をどう考えればいいか分かりやすい。

「観光で英語を使う」「仕事で英語を使う」「英語が母語でない外国人と英語でコミュニケーションをとる」などなど…。

日本語でも「口語」と「文語」はおのずと違うし、私用の手紙と論文・リポートでは文章が違うのは当然だ。

公的な契約交渉には日本人同士の間でも、相互に弁護士を同席させて「使うべき日本語」を正確に選択して契約書をつくることが求められるのはビジネスの常識だ。

 仕事など損得が関係しないコミュニケーションに使用するのであれば「通じる程度の英語」で十分であり、英語が母語でない外国人とのメール交換であれば、書く英語も「格調高い英語」にする必要なない。

しかし、「通じる程度の英語」が使えるようになると「一定以上の正確さにこだわる英語ライティング」への要求は自ずと強まるし、書く機会も多くなってくるものだ。

要は、自分のニーズ、環境に合わせた英語レベルからスタートして、徐々にレベルを上げるように勉強をし続けるのが求められる資質ではないだろうか。

一方で大事なのは、ネイティブに近い英語を読み書きしゃべれても、持っている文化的、ビジネス的な知識が 浅薄であれば良いコミュニケーションを取ることは不可能だ。

逆に知識が豊富で、尊敬される文化人・技術人であれば、たとえ貧弱な会話力、文章力でも海外で十分に通用することも確かである。

ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 日経新聞 国際「英ポンド ... | トップ | 日経新聞 経済「日経平均を... »

コメントを投稿

英語」カテゴリの最新記事