日経新聞 国際「英ポンド安、物価に波及」=実効為替レート最低/インフレ率1%=

2016年10月20日 04時04分13秒 | 国際
日経新聞 2016年10月19日(水) P.7 国際2面
『英ポンド安、物価に波及』=実効為替レート最低=インフレ率1%=

『衣料品や光熱費 上昇』

 英通貨ポンドの急落が英国の物価に波及し始めた。

貿易関係を加味したポンドの実効為替レートは過去最低の水準に下落。

ポンド安による輸入コストの上昇で9月の消費者物価は1年10カ月ぶりに高い伸び率になった。

足元の経済は製造業の輸出増で底堅いが、物価高は企業や家計に影を落としつつある。


 英政府統計局が18日発表した9月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比で1.0%上昇した。

事前予想の0.9%を上回り、8月の0.6%から拡大。
2014年11月(1.0%)以来の高い伸び率になった。

 米調査会社パンテオン・マクロエコノミクスの英国担当、サミュエル・トゥームズ氏は9月のCPIの上昇について「今後の上昇局面の序章にすぎない」と指摘。

ポンド安で17年末には3.5%になると予想した。

 物価が上昇し始めた主因は、英国が欧州連合(EU)からの離脱を決めた6月下旬以降に進んだポンド安だ。

外国為替市場でポンドは対ドルで7日に一時1ポンド=1.14ドル台となり、31年ぶりの安値に下落。

英国の貿易相手国との為替レート貿易額で加重平均したポンドの名目実効為替レート(2005年1月=100)は先週、73に下落し、過去最低水準を付けた。

実効レートでみるとポンド安は鮮明になる。

 9月は衣料品価格の上昇が物価上昇に大きく寄与した。

衣料品の企業は値上げを回避するためにコストを削減しているが、ポンド安で輸入費が大きく上昇。

経営が苦しくなり、価格への転嫁を始めた。
家計では光熱費や輸送費も上昇した。

 原油価格の回復も大きい。

年初に1リットルあたり1ポンド前後に下がったガソリンの店頭価格は、1.14ポンド程度に上昇した。

英ガソリン小売業協会は「燃料価格が急上昇する可能性がある」という。
ドル建てで取引される石油はポンド建てに引き直すとさらに高くなる。

燃料価格の急上昇は幅広い商品の価格を押し上げる。

 スーパーの競争激化で下落基調にあった食品価格も反転しそうだ。

英スーパー最大手テスコは先週、主要な取引先である食品・日用品大手の英蘭ユニリーバとの取引を一時中止した。

ユニリーバが平均して約1割の値上げを求めたのに対し、テスコは反発した。
両社はすぐに和解したが、日用品に値上げ圧力は強まりつつある。

英小売協会のヘレン・ディキンソン会長は「小売業界が値上げ圧力を吸収する余地は限られている」という。

 6月下旬のEU離脱決定直後にささやかれたような英経済の急減速は今のところ表面化していない。

ポンド安で製造業を中心に輸出が増えているためだ。
一方、英中銀は8月に17年と18年の経済成長見通しを大幅に下方修正した。

メイ英首相は17年3月までにEUの離脱交渉に入ると明言したが、強硬な離脱交渉で企業や消費者の心理を冷やすとの懸念も根強い。

市場関係者の間では「交渉の不透明感が晴れない限りポンド安は基調は続く」との見方が多い。


『追加緩和にジレンマ』=英中銀=
 英中央銀行イングランド銀行は必要な場合に追加の金融緩和を辞さない構えだ。

カーニー総裁は先週「インフレ率がやや行き過ぎることは大目に見る」と述べ、インフレ封じより景気への配慮を優先する考えを示した。

ただ、追加緩和はさらなるポンド安による高インフレと低成長を招きかねない。
英中銀は難しい判断を迫られそうだ。

 英中銀は8月、6月下旬の国民投票後に景気の不透明感が強まったことを受け、利下げと同時に量的緩和策による国債買い入れを再開した。

現在、6カ月間で600億ポンドの国債を買い入れる緩和策を実施している。

 量的緩和策の再開直後は長期金利が急低下し、英10年物国債利回りは一時0.5%前後と過去最低(=価格は上昇)を更新した。

ただ、通貨安によるインフレ懸念の高まりで直近では1.2%台と6月下旬以来、3カ月半ぶりの高い水準に上昇している。

 英中銀による追加の金融緩和はポンド安を加速させ、インフレ状況を一段と悪化させる恐れがある。

英保険大手プルーデンシャル傘下の運用会社M&Gインベストメンツによると、日次で集計するインフレ率はすでに2%を超え、英中銀はポンド安に伴う高インフレと低成長のジレンマに直面する。

新興国が抱える経済状況に似ている。


『英経済、減速のリスク』=ディーン・ターナー氏
(スイス金融大手のUBSウェルス・マネジメント、エコノミスト)=

 英国経済は急減速するリスクが高まっている。

企業は投資や人員採用に慎重になっており、インフレ率の上昇が実質所得の増加をむしばみ、家計は生活を切り詰める必要に迫られている。

 欧州連合(EU)からの離脱交渉に関する不透明感が晴れるまではこうした状況は続く。
金融政策や財政政策は減速を緩和できるが、防げない。

ポンドの下落基調は当面終わりそうにない。
離脱議論のあらゆる過程に投資家は反応しており、下方リスクが大きい。

(ロンドン=黄田和宏記者)


●関連日経記事:2013年4月12日グー・ブログ「息子たちに読んでほしい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 ことば「実効為替レート」=通貨の実力、総合的に測る=』(2013年4月10日付)

●関連日経記事:2016年10月19日グー・ブログ「同上」投稿記事参照
 日経新聞 国際「英が演じるスローな危機」=ポンド最安値が進む経済の底流=』(10月17日付)

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