日経新聞 英語「語学の参考書、世間が面白くないときは勉強」=半歩遅れの読書術 哲学者 國分 巧一郎=

2016年10月19日 05時58分32秒 | 英語
日経新聞 2016年10月16日(日)  P.20  読書面
連載「半歩遅れの読書術」=哲学者 國分 巧一郎=

『語学の参考書』=世間が面白くないときは勉強=

 高校生の時に使っていた参考書というのはどれもずいぶんと出来がいいものだったのだな。

そう思ったのは大学で講義用の教科書を仕方なく買った時だった。
日本語が酷(ひど)いものがあって、読むのが苦痛だった。

愚痴(ぐち)を言っても仕方がないので、試験前には赤ペンで校正しながら読んでいた。

 高校生用の参考書は受験という関門に向かう学生たちの厳しい目にさらされている。
大学の講義用の教科書はそうではない。

質の差の理由は明らかであった。

 今でも使っている参考書が『マスター英文法』(吾妻書房)である。
初版は1973年だからずいぶんと古い本だ。

残念ながら、開成高校の教諭を務められていたという著者中原道喜のことは何も知らない。

 高校の英語の先生に勧められたのだが、勉強を忘れて夢中になった。
文法を体系的に理解し身につけるとはこういうことなのかと快哉(かいさい)を叫んだ。

今でも英文法で分からないことがあるとすぐにこの本を開く。

 大学院生になってから再び同じ快哉を味わった。

ドイツ語学者関口存男(つぎお)の著(あらわ)した教科書『関口・初等ドイツ語講座』(三修社)でドイツ語を勉強したときのことだ。

関口は58年に亡くなっているから本当に昔の人である。

 ドイツ語の教科書なのに「序言(じょげん)」からして面白い。
とにかく文法の一本路(みち)を直進すること。

繰り返される同じような例題に不平を言ったら「馬鹿(ばか)野郎」とどなりつける。
そんなことが平気で書いてある。

だが、いやな気持にはならない。
関口が根本的にユーモアの人だったからだろう。

 この教科書でドイツ語を勉強すると、英語やフランス語への理解も深まった。

英国国家のタイトル、God save the Queen が接続法だと知ったのもこの教科書を通じてだ(動詞に三単現のsがつかないのはそのため)。

今は大学では英語ばかりが優遇され、第2外国語が軽視されているが、英語の理解を深めるためにも第2外国語は大切だ。

 驚いたのは、関口の著作集が出版されており、そこに彼の執筆したドイツ語の教科書が収録されていることだった。

彼が描いた教科書は一つの作品とみなされているのである。

 関口は31年、つまり昭和6年に『独逸(ドイツ)語大講座』を出版する(関口存男著作集、ドイツ語学篇、第5・6・7巻収録)。

最終巻で関口はこう綴(つづ)っている。

「世間が面白くないときは勉強にかぎる。 失業の救済はどうするか知らないが個人の救済は勉強だ」。

失業を口にする関口の念頭にあったのは昭和恐慌で街にあふれた失業者のことだっただろう。

そして、この年には満州事変が始まったのだった。

私はここ数年、「世間が面白くないなら勉強しろ!」と関口先生に怒鳴りつけられているような気持になっている。


●関連日経記事:2016年6月14日グー・ブログ「息子たちに読んでほしい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 英語「ネーティブ英語は必要ない」=伝わる英語、聞ける英語習得を目的に=』(5月24日付)

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