日経新聞 国際「トランプ氏 vs. メディア」=米ブルームバーグ ミクルスウェイト編集長=

2017年03月13日 03時25分12秒 | 国際
日経新聞 2017年3月7日(火) P.6 オピニオン面
連載『創論』=トランプ氏 vs.メディア=

 米国でドナルド・トランプ大統領とメディアが対立する構図が強まっている。
交流サイト(SNS)を通じて膨大な情報が行き交う時代。

もつれた関係をどう解きほぐし、政治とメディアの健全な姿を実現するか。

米主要メディアの一角を占めるブルームバーグニュースのジョン・ミクルスウェイト編集長と、メディアやジャーナリズムを研究する恵泉女学園大学の武田敬教授に聞いた。



『特別視せず言動報じる』=米ブルームバーグニュース編集長 ジョン・ミクルスウェイト氏=

 --トランプ氏によるメディア批判が続いています。

 「過去の大統領も一部のメディアを嫌い、不安定な関係にあった。
トランプ氏だけが特別ではない。

同氏について報道するとき、ブルームバーグはオバマ氏やブッシュ氏などを取材してきたのと同じ方法でやっていく。

彼の言動をひとつひとつ取り上げ、これは間違い、これは正しいとストレートに、事実に即して報道する」

 「ただ、これまでにない異例なことが起きた。
ホワイトハウスで開催された記者懇談で一部の記者が排除されたのだ。

ブルームバーグの記者はそうした状況を知らずに参加したが、今後こうしたことがあれば、出席しないと決断した。

公共の利益に反すると思うからだ」

 --あえて参加し、情報を得たり、その場で意見を述べたりする道もあるのでは。

 「白か黒かすっきり割り切れる問題ではなく、逆の考え方もあり得る。

ブルームバーグの顧客にも『内部で何が起きているか知りたい』という人がいるかもしれない。

しかし、情報の流れをオープンに保つことが公共の利益にかなうと思う。
何ら抗議せずに参加すれば、さらに悪いことが起きる」

 --米国第一主義を掲げ、保護主義的な経済政策をとるトランプ氏はツイッターを多用しています。

 「オバマ氏は選挙戦にフェイスブックを使い、ブッシュ氏はローカルラジオやテレビを利用した。

自分の考えを伝えるのにメディアを使うのは、過去の大統領と変わらない」

 「トランプ氏の経済政策には2つの側面がある。
税制改革、インフラ投資、規制緩和は潜在的に良い要素だ。

いまのところは市場はここに注目し、株価も好調だ。
だが通商政策には懸念がある。

中国やメキシコと貿易問題で争えば損害は大きい。
貿易に障壁を設けた場合の影響をメディアとして指摘していく」

 --国民の関心が「トランプ対メディア」に注がれ、肝心の政策論議が深まらないといった弊害はありませんか。

 「そもそも政治のような公的な問題は注目されにくい。

以前と違うのは、インターネットやソーシャルメディアの普及、テレビの多チャンネル化によって、人々が大量の情報を消費するようになったことだ。

保守派の人は保守派の番組を見て、ニュースを読み、自分の好む情報にだけ多く触れる。
逆の党派の人も同様だ。

人びとはどんどん狭い世界に住むようになっている」

 --どうやって読者の視野を広げますか。

 「どのニュースが本物か偽物なのかが議論になるなか、事実とデータに基づく報道が強みになる。

ブルームバーグがしてきたことだ。
反トランプでも親トランプでもない。

中立な立場から報道することが信頼につながる」

 「人々は歴史上、最も知的になっている。
高い教育を受け、旅するグローバル人材が増えている。

彼らはかってなく質の高いニュースを求めている。

知的な情報を持ち、アイデアにあふれ、広く客観的であると読者に伝われば、そのメディアは支持され、対価を得られる。

それが賢明なメディアの未来だ」

 --ネットは民主主義に役立ちますか。

 「ネットそのものは良いも悪いもない中立的な道具だ。

ネットが生まれたとき、シリコンバレーの人々は『世界をオープンにし、地球全体をひとつの家族にする』と宣言した。

実際、中東やアフリカでは民主化運動『アラブの春』の契機となった。
同時にネットは、悪意をもった政府が人々の行動を監視管理できるようにする。

偽ニュースを広げることも可能だ」

 「長い目で見れば、ネットがもたらす透明性は望ましいものだ。
いま何が起きているのか多くの人々が詳しく知ることができる。

ジャーナリストとしてネットの開放性を歓迎する。

ネットは良いことばかりではなく、悪いことにも使えるのは確かだが、私は批判的な目を持った楽天家でありたい。

日本で書いたものが瞬時に翻訳され、北京やサンパウロ、アラスカの人でも読める。
すばらしいことではないか」

▼John Micklethwait
 英オックスフォード大学卒。

英経済誌エコノミストで金融記者などを務め、06年同誌編集長。
15年から現職。

54歳。

・・・・・・・・・・・・・・・・・
聞き手から:

『負の側面も意識』=情報使いこなせ=
 インターネットはいま世界で約36億人が使う。

人びとをつなぎ、生活や産業に恩恵をもたらしたのは間違いない。
だが、ネットが持つ負の側面からも目をそらしてはだめだ。

ソーシャルメディアに代表される新技術が一方的な主張を拡散させ、人々を分断している現実がある。

 メディアはどうするか。

ミクルスウェイト氏はトランプ氏のペースにのまれず冷静に政策を評価していく姿勢が重要と説く。

武田氏は取材力や分析力を生かし価値ある情報をと注文する。
メディアにとって不変の軸といえる使命だろう。

 膨大な情報に囲まれ、好みの情報だけ接触する。
人びとがそうした傾向を強めることへの危機感は両者に共通だ。

個人の趣味嗜好(しこう)に合った情報を効率よく届ける技術の開発競争は激しく、人工知能の高度化が拍車をかける。

強く自覚したい。

 情報は賢明な判断のために生かされるべきものだ。
漫然としていては到底、使いこなせない。

デジタル時代を生きる私たち一人ひとりに考える責任がある。

(コメンテーター 村山恵一)

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