日経新聞 開発「トラフグ 温泉水で養殖実験」=ストレス少なく 早く生育=

2016年10月13日 05時39分40秒 | 開発
日経新聞 2016年10月12日(水) P.37 四国経済面
連載『ここが聞きたい』=トラフグ 温泉水で養殖実験=

『ストレス少なく 早く生育』=真鍋 孝志さん=

 愛媛県新居浜市の観光施設「マイントピア別子」で、温泉水を使ってトラフグを養殖する試みが今夏から始まった。

高級魚のトラフグはこれまでも全国各地で陸上養殖が盛んに行われてきたが、うまくいかなかった例も少なくない。

養殖を手掛ける住友化学の子会社、イージーエス(新居浜市)の真鍋孝志グリーンサービス部長に事業化の経緯などを聞いた。

 --養殖事業の現状を教えてください。

 「170平方メートルほどの平屋建ての建物の中に直径3メートルの円形の水槽を4つ設置し、そのうちの2つの水槽で300匹ほどのトラフグを育てている。

順調に育てば来年6月ごろには重さが1キログラムほどになり、出荷できる大きさになるとみている」

 --トラフグの陸上養殖はこれまでも実施されてきましたが、うまくいかなかった事例も少なくありません。

 「わが社が新規事業として陸上養殖に取り組もうとした時、大学関係者の方々などの間で難色を示される方もあった。

心配される方の多くは、海水による養殖を想定されていた」

 「トラフグは海水域に生息するので、陸上養殖も海水でと考えられることが多い。
だが自然の海水には様々な含有物がある。

これを陸上に運び水槽という限られたスペースの中で養殖に使用すると、病気感染などのリスクをはらむことになる」

 「我が社の養殖の特徴は、別子の温泉水を使っていることだ。

塩分濃度は海水よりはるかに低いのだが、この方がかえってフグにはストレスが少なく、稚魚が早く成長するということが分かっている。

最後に塩分濃度を海水並みにしてストレスを加えると、身がしまり、美味しさが増やすといった具合だ」

 --一連の養殖技術は独自に確立したのですか。

 「環境関連事業を手掛けるわが社には水質調査の技術があり、水質の管理が重要になる水産物の養殖にもノウハウが生かせると考えた。

トラフグの陸上養殖については全国各地を調べ、栃木県で成功している事業者のノウハウを取り入れた。

この事業者とは事業に関係するデータを共有するなど、技術連携を続けている」

 --今後の事業展開は。

 「新たに稚魚を購入して、来年1月には300匹ほどの追加養殖を始めようと思っている。

将来的には新居浜市内でさらに場所を探し、常時1、2万匹を育てる規模にして事業の本格化を検討したい」

 「新居浜にはフグの身や皮を細かく切ってポン酢で味付けする『ふぐざく』という郷土料理がある。

地域の活性化に資するためにもいつか、わが社が地元で陸上養殖によって生育するフグでこの郷土料理の需要を安定的に満たすことができるようになれば、などと考えている」

▲まなべ・たかし
 1954年愛媛県伊予三島市(現・四国中央市)生まれ。

高校卒業後、74年住友化学入社。
99年イージーエス出向。

2016年住友化学を退職し、イージーエスに転籍。

住友化学では工場の製造工程管理、イージーエスでは新規事業立案の責任者として、フグの試験養殖を進めることになった。


『記者の目』=養殖革命に期待=
 10年ほど前、東京でフグ料理の価格破壊が進んで需要が伸びたとき、陸上養殖が急速に広がった時期があった。

それほど簡単にうまくいくものではなかったと聞いていたので、「マイントピア別子」での取り組みを耳にした時、「どうだろうか」と思ったのが正直なところだった。

 真鍋部長の話を聞いて、この思いは吹き飛んだ。

イージーエスの試験養殖場はまさに1次産業の科学的マネジメントに挑む最前線ではないか。

後年、「水産物養殖の革命は愛媛・新居浜の山あいで始まった」といわれる日が来るのを期待したい。

(松山支局長 岩崎樹生)

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