日経新聞 開発「仮想通貨 中銀も揺るがす」=フィンテック 金融だけじゃない=

2017年01月03日 12時15分45秒 | 開発
日経新聞 第二部 2016年12月2日(金) P.7A
『仮想通貨 中銀も揺るがす』=フィンテック 金融だけじゃない=

 金融が大きく変わろうとしている。
情報技術と融合したフィンテックの発達で、サービスやコストの改善が見込める。

なかでも本丸は仮想通貨だ。
その誕生を可能にしたグロックチェーン技術の応用範囲は金融にとどまらない。

(編集委員 佐藤大和)



 日本のメガバンクなど世界の有力金融機関がフィンテックの研究に躍起だ。
「新たなビジネス領域の拡大と既存のオペレーションの効率化という2つの側面がある」。

佐藤康博みずほフィナンシャルグループ社長はこう解説する。

 ブロックチェーンを使えば、千億円単位の巨額資金を投じて更新してきたシステム費用を一気に「効率化」できる。

低金利で収益を圧迫されてきた銀行に強力な追い風になる。
半面、銀行が警戒するのは「新たなビジネス領域の拡大」の勢いだ。

仮想通貨やブロックチェーンはこれまで手掛けてきた送金・決済や融資、証券業務など中核ビジネスを「中抜き」しかねない。

 新技術の活用は日本の外で先行しつつある。

東南アジアの新興国ミャンマーの資本市場の育成を支援する大和証券グループ本社は、ヤンゴン証券取引所の取引に低コストのブロックチェーンの導入を目指す。

米金融大手ゴールドマン・サックスは「我々こそが先進フィンテック企業だ」と主張。
技術開発の総本山であるシリコンバレーの新興企業や人材との連携を深める。

 「『比特幣』は虚像」(中国人民銀行)と断じ相場が乱高下(らんこうげ)した仮想通貨ビットコイン取引を規制した。

だが実際には国家戦略として自前の仮想通貨の開発を急いでいる。

 既存マネーの流れを管理してきた中央銀行にとっても、仮想通貨の普及で「金融政策が有効性を失いかねない」(国際決済銀行)。

量的緩和策の手段であるマネタリーベース(資金供給量)を把握できなくなる恐れがある。

世界金融危機後、各国中銀は異次元の金融政策を繰り出してきたが、新技術は「金融の形態に大きな変化をもたらす可能性がある」(黒田東彦日銀総裁)。

この先10年、新たな「異次元への対応を迫られる。」


特集『次の10年』=波頭の先に=
『ブロックチェーン、社会構造を変える』=早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問 野口 悠紀雄氏=


 --フィンテックへの注目が急速に高まっています。

 「フィンテックを通じた金融サービスの核心は①送金・決済 ②ソーシャル・レンディング ③投資その他のアドバイスや保険業務ーーに大きく分類できる。

これから銀行や証券、保険会社など既存の金融機関と、IT分野からの新規参入勢力が、新サービスを競い合っていく」

 「フィンテックは人の生活を便利にする。

ただし10年先まで見据えると、これまでの延長線上のサービスと、金融業のみならず経済・社会構造を根本から変えるものとを区別して考えることが極めて大切だ」

 --最も重要なのは。

革命的な変化をもたらすのは仮想通貨とブロックチェーンだ。
1990年代から普及して世界を変えたインターネットに匹敵するだろう。


ただネットの黎明期(れいめいき)がそうだったのと同様、あまりに根源的な変化なので正確な姿をつかみにくい」

 --改めてブックチェーンとは何ですか。

 「一言でいえば、電子的な情報を記録する新たな仕組みだ」

 「ポイントは2つある。

1つ目は誰かが管理しているのではなく、自主的に集まったコンピューターの集合体が運営していること。

2つ目は、そこに記録された情報は、POW(プルーフ・オブ・ワーク)という新しい仕組みを通じて改ざんできないという点だ。

従来型の電子マネーやクレジットカードに置き換わる仮想通貨の信頼性を担保する」

 --何が変わりますか。

 「送金・決済などの経済的取引は中央銀行や民間銀行など信頼性の高い中央機関が介在し、管理してきた。

しかしブロックチェーンの活用で、そうした仲介者や管理者が不要になる。

送金コストなどが劇的に下がり、証券取引の決済には3日かかっているが、数分に短縮できる」

 「しかもブロックチェーンは外部からの攻撃に対して強じんだ。

銀行の勘定系など中央集権的なシステムでは、データを管理する中央コンピューターの構築や運営に巨額の費用がかかる。

その上ハッカーの格好の攻撃対象だ。
ところがブロックチェーンは、どれか一つのコンピュータがダウンしても問題ない。

他のコンピューターに同じ記録が残っているためだ」

 --日本の対応はいかがですか。

 「他国に比べて大幅に出遅れている。

2年前の仮想通貨取引所マウントゴックス社の破綻(はたん)が、ビットコインそのものの破綻と取り違えられて報道されたのが原因だ。

日本において仮想通貨は『いかがわしい』という評価になってしまった」

 「実際にはマウントゴックス事件とビットコインの信頼性は関係がない。
同社は顧客から預かったビットコインを盗もうとした。

銀行強盗が発生しても日銀券の信頼性と無関係なのと同じだ」

 --仮想通貨の普及に向けて国の対応は。

 「政府が新しい技術の浸透を後押しする必要はない。
技術は政府の支援がなくても進歩する。

新技術の展開を邪魔するような規制はいらない。

ブロックチェーン技術は中央集権的な管理者によって運営される仕組みを破壊する潜在力を秘める。

これから始まるのは政府を含めた既存勢力と、新技術の戦いでもある」

 --金融分野以外にも活用が期待されています。

 「ブロックチェーンは独自の経済圏を形成しつつある。
その経済圏は金融にとどまらず産業界も包含(ほうがん)する。

先端的なスタートアップ企業は、すでに技術開発のための資金調達を金融機関に頼らずに仮想通貨を通じて実施し始めた」

 「あらゆるモノがインターネットにつながる『IoT』やシェアリングエコノミーに関しても本質的な重要性を持つ。

ますます膨らむ情報のやりとりを安価かつ正確に認証できるからだ。
今後10年の間に企業経営や社会構造を一変させる可能性がある」

▼のぐち・ゆきお

 1963年(昭和38年)東大工卒、翌年大蔵省へ。

米エール大経済学博士。
一橋大教授、東大教授。

2011年現職。
東京都出身、75歳。


●関連日経記事:2016年9月12日グー・ブログ「息子たちに読んでほしい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 開発「IT、地殻変動の足音」=広がるブロックチェーン ①=』(9月11日付)

●関連日経記事:2012年12月10日グー・ブログ「同上」投稿記事参照
 日経新聞 書籍紹介『「教養」支えた新書の歩み』=中公新書、岩波新書=』(2012年12月9日付)

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