日経新聞 政治「反グローバル 解なき拡散」=トランプショック ②=

2016年11月12日 09時26分43秒 | 政治
日経新聞 2016年11月11日(金) P.1
特集連載『トランプショック ②』=編集委員 菅野 幹雄=

『反グローバル 解なき拡散』

 米国と英国という、世界を代表する2つの民主義国が、半年で次々と既存秩序をぶち壊した。

 「再び偉大な米国を(Make America at again)」。

トランプ米次期大統領の合言葉は6月の英国民投票で欧州連合(EU)離脱派が使った「再び偉大な英国を」とうり二つ。

どちらも世論調査機関や市場は有権者の変革への意思を全く読み誤っていた。

 写し絵のような米英の展開は、アングロサクソンの両国が導くグローバル化やエリート(支配層、=エスタブリッシュメント)主義に庶民が募らせる不満の表れだ。

 国家や市場を分ける壁を取り、貿易や人の流れを自由にしても繁栄の果実は(中低所得層の一般庶民に=)届いていない。

むしろ激しい競争で職や生活に不安が増し、米国人の8割は所得水準が金融危機前を下回るとされる。

 活発な競争を通じた新自由主義や多国間で自由貿易の枠組みを築く従来の路線を否定することが有権者の心をつかむ。

トランプ氏のもと日本を含む環太平洋経済連携協定(TPP)や米・EUの環大西洋貿易投資協定(TTIP)の実現は極めて難しくなった。

 反グローバルを唱えて票を稼ぐという模範例ができ、大衆迎合主義(ポピュリズム)を武器とする政党が勢いづく。

 フランスの極右、国民戦線のルペン党首は「米大統領選は自由の勝利。 我々も自由を阻むシステムを打ち壊そう」と2017年春の仏大統領選に向けて既存政党との対抗姿勢をむき出しにした。

 英国に続く離反を避けたい欧州の周辺国は気が気でない。

「人々を扇動するポピュリズムは、米国だけでなく西側の至る所で憂慮すべき事態になった」とドイツのショイブレ財務相は指摘する。

 来年の欧州は仏大統領選とオランダ、ドイツの総選挙が重なる選挙の当たり年だ。
トランプ氏が大統領として剛腕を発揮するほど、半EUの機運は高まりかねない。

世界経済を支える貿易の停滞に国際通貨基金(IMF)などの危機感も強い。

 反グローバル化を叫ぶ勢力の伸長は止まりそうにないが、それを唱え、保護主義を強引に進めていくだけでは、経済の繁栄や生活の充実への解になり得ないのは明らかだ。

「偏狭なナショナリズム(国家主義)の乱立になりかねない」。
中前国際経済研究所の中前忠代表は危惧する。

 グローバル化や市場主義に背を向けるのでなく生じたひずみをどう直していくのか。

「グローバル化に代わる選択肢はない。 もっと人間的な形に変えていく努力こそが必要だ」。

仏モンテーニュ研究所のドミニク・モイジ首席顧問は過剰な不平等の解消など具体的な政策の明示を呼びかける。

 有権者の怒りを踏み台にのし上がったトランプ氏も、これから彼らを納得させる答えを示すねばならない。

日本、欧州も新興国の首脳にも、反グローバル化のうねりを抑える賢明で繊細な政策選択が問われる。

トランプ・ショックを生んだ背景を正視すべきだ。


●関連日経記事
:2016年11月11日グー・ブログ「息子たちに読んでほしい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 政治「社会分断、危うい大衆迎合」=トランプショック ①=』(11月10日付)

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