日経新聞 経済「ギリシャの金融危機は他人事ではない」=「日本国債」 見えざる手を冒す ④=

2016年10月11日 01時25分57秒 | 経済
日経新聞 2016年10月10日(月) P.1
特集連載『日本国債』=見えざる手を冒す ④=

『ギリシャは他人事でない』=海外マネー踊る国際市場=

 「誰が売ったの?」
 「外国人の売りじゃないと思うよ」

 金融機関の健全性ばかり気にしていた金融庁のモニタリング担当の間で、最近、挨拶代わりに交わされるテーマは「金利」だ。

日銀が異次元緩和の総括検証を発表する1週間前、20年債の金利が1週間で0.1%上昇(=国債価格は下落)した原因を探っていた。

 金融庁が自分の庭先でもない債券市場のウオッチャーに変身したのは、「海外投資家」の存在を意識し始めたからだ。

 大量の売買で短期に差益を稼ぐ「足の短い投資家」が市場を支配すれば、価格が乱高下しやすい。

しかも日銀が国債買い入れを続けた結果、市場で売買できる国債の取引量(流動性)は100兆円減って3分の2に縮小。

そんな出物が少ない市場で、海外投資家が逆に「爆買い」している。

「手数料で稼げる」
 日銀による異次元緩和前の2012年、日本国債の最大の売買主体は断トツでメガバンクだった。

14年10月の追加緩和でメガが脱落し、海外勢がトップに立つ。

海外勢は今年8月まで44カ月連続で10兆円を超える買い越し。
6月には過去最高の21兆円強を記録した。

 海外勢の国債保有は全体で10%。
満期1年未満に限ると49%に達する。


いつの間にか国債市場は外国人が活発に売買する「国際市場」となった。

メガバンクなど日本の金融機関は米ドルなど外貨を調達する際に国債を担保に供出するため「間接保有」も増えている。

 海外勢がマイナス金利の日本国債を買うのはドルと交換するときに高額の手数料を得られるからだ。

手数料込みならプラスの運用利回りになる。

最もうまみを享受しているのが、ドル余りの米国企業で「邦銀が泣いて、外銀が笑う構図」(廉了・三菱UFJリサーチ&コンサルティング主席研究員)だ。

 日本企業の海外進出に寄り添うメガバンクは、大量をドルを調達する必要に迫られている。

最近では運用難の保険会社やゆうちょ銀行なども参戦し、ドルを調達する際に上乗せする「手数料」が高騰している。

「『引き際』を模索」

 日本国債を持つ海外勢は売り手に回るタイミングを慎重に探っている。

「本国に説明するのが難しくなってきた」。
外資系証券の間では「引き際(ぎわ)」がよく話題にのぼる。

英大手RBSは2年前に日本国債の売買から撤退。

「長期資金を運用する海外の年金基金や生命保険会社もすでに日本国債を敬遠している」(野村証券の松沢中氏)。

日本の債券市場はヘッジファンドのような短期売買を繰り返す投資家たちの市場に変身しつつある。

 日本経済研究センターは日本が30年度に経常赤字国になると予想する。
外国人が長期国債の7割を持っていたギリシャは市場に翻弄された。

その姿が日本とまったく無縁と言い切れるだろうか。

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電子版:日本国債に投資する中国 ▲Web刊→紙面連動


『日本国債』=投資戦略を聞く=
『代替市場なく試練の時代に』=富国生命保険取締役 渡部 毅彦氏=


 国債を運用する部隊を維持して良いのかという問題意識を持ち始めた。

三菱東京UFJ銀行が(国債を購入する特別な資格である)プラマリー・ディーラーを返上したのも、運用難に対し、コストを回収できず、契約者への説明責任を果たせないという同じ問題意識ではないか。

このままでは国債市場からプレーヤーが抜け落ちていくと危惧している。

 マイナス金利政策によって長期の機関投資家として非常に厳しい運用難に見舞われた。

償還まで10年超の超長期債の金利まで下がり、流動性と運用収益の低下で想定以上の副作用が起きた。

 9月の金融政策決定会合での枠組み修正は、異次元緩和が短期間に終わらず「長引く可能性が高まった」と受け止めている。


我々の責務は保険金を確実に支払うこと。
国債に新規投資できない今の運用環境は今回の措置でも大幅に改善しない。

 日本の国債の代替市場が育っていない。
米国のような社債市場もなお未成熟だ。

予定利率で利回りを保証する「保険の一般勘定」は社会ニーズがあり、それに貢献できてきた。

この意義を発揮しにくくなっており、今後、試練の時代になる蓋然性(がいぜんせい)が高まっている。

 心配なのは、異次元緩和で国債市場の流動性の3分の1を失ったこと。
今回の措置でさらに絞られていくと思う。

仮に人材を外し、ノウハウを失えば、いざという時に一朝一夕(いっちょういっせき)に回復できないのではないか。

ストレスがかかったときの相場を知らない人が売買すれば、マーケットは乱高下しやすくなる。

国債市場の価格形成機能の低下に一段と拍車がかかることになりかねない。

=インタビュー詳細を電子版に ▲Web刊→紙面連動


●関連日経記事:2016年10月8日グー・ブログ「息子たちに読んでほしい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 経済「マイナス金利拡大の恐怖、銀行に遠心力」=「日本国債」 見えざる手を冒す ②=』(10月7日付)

●関連日経記事:2014年3月18日グー・ブログ「同上」投稿記事参照
 日経新聞 経済「日本国債 変わる持ち主」=金利上昇リスクに=』(2014年3月17日付)

●関連日経記事
:2015年3月7日グー・ブログ「同上」投稿記事参照
 日経新聞 国際「ギリシャ危機、第2のリーマンか!」(2011年9月14日付)

●関連日経記事
:2016年2月4日グー・ブログ「同上」投稿記事参照
 日経新聞 経済「邦銀、ドル調達コスト上昇」=金融機関の外債投資拡大を先取りか=』(2月3日付)

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