日経新聞 安心・安全『避難情報だけでは「過疎地の高齢者」の命守れず」=災害考=

2016年10月11日 09時35分47秒 | 安心・安全
日経新聞 2016年10月10日(月) P.30 社会面
特集連載「災害考」=過疎地の高齢者=

『避難情報だけで命守れず』=地域ぐるみの支援が要(かなめ)=

 台風10号の豪雨による河川氾濫で、20人を超える死者行方不明者を出した岩手県岩泉町。

今回の災害は、防災情報の理解だけでなく、過疎・高齢化の進む地方において、災害弱者の非難を手助けできる人員をどう確保するのかという重い課題を浮き彫りにした。


 8月30日の小本川氾濫で入所者9人が亡くなった岩泉町の高齢者グループホーム「楽ん楽ん(らんらん)」。

同日午前9時、町は全域に避難準備情報を出した。
しかし同ホームは避難せず、入所者らは濁流にのみ込まれた。

 国の指針で、同情報は「高齢者や障害者など避難に時間がかかる災害弱者に避難行動の開始を求める」ものだが、施設運営者は意味を知らなかった。

 ただ町の状況をみると、関係者が「情報」を理解していたとしても、被害を防ぎきれなかった可能性がある。

 国は、犠牲者の約6割が65歳以上だった東日本大震災を踏まえ、2013年に災害対策基本法を改正。

全国の市町村に対して、避難行動で助けが必要な人(要支援者)の名簿を作成し、消防や民生委員など避難支援者が情報を共有、個別の避難計画を策定することを求めた。

 総務省消防庁の調査では、要支援者名簿は今年3月末時点で全国1734市町村の98%が作成または作成見込みだ。

 岩泉町も名簿を作成。

高齢者や障害者など約1500人の要支援者の居住形態などの情報を支援者らが共有する仕組みも整えていた。

 しかし東京23区より面積が広い山林に集落が点在する人口9900人の町の高齢化率は全国平均(26.7%)を上回る4割で、100%の地区もある。

「高齢の民生委員1人が10人の高齢者を担当するのはざら」(長寿支援室)・
「楽ん楽ん」も災害発生時は夜間で職員は1人だけだった。

非常時に要支援者全員を迅速に避難させるには支援者だけでは限界がある。

 想定外の災害時の避難行動を巡っては、東京電力福島第1原子力発電所事故時の福島県葛尾村のように成功したケースもある。

 村は、11年3月12日の同原発1号機の水素爆発後、当時住民の避難に抑制的だった国や、「避難は自己責任」とした県を横目に、全村民約1500人をバスなどで村外へ避難させることを決定。

以前からリストアップしていた要支援者のうち、自力で集合場所までたどり着けない約40人の大半を、民生委員や消防以外の近隣住民の手を借りて運び、放射性物質を含む空気の塊(プルーム)の到着前日の14日深夜に避難を完了した。

 過疎・高齢化が進み、役場職員も減る地方の実情をみると、法律や国の指示に基づく対応だけでは、住民の命を守ることはできない。

岩泉町の災害を踏まえ、葛尾村のケースを振り返ると、地域をあげての避難支援体制を築き、空振りでも構わない避難行動が重要と感じる。

(社会部 小林隆記者)

ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 日経新聞 開発「長門湯本温... | トップ | 日経新聞 経営『レノボ流「... »

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • このブログへのリンクがない記事からのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。