日経新聞 趣味「色彩への鋭敏な感受性」=Bunkamura ザ・ミュージアムでの「ソール・ライター展」=

2017年05月11日 02時41分50秒 | 趣味
日経新聞 2017年5月10日(水) P.40 文化面
『色彩への鋭敏な感受性』=「ソール・ライター展」=

 カラー写真にならされた現代人の目に、日常風景の色がこれほど鮮烈に映ることはもうないかもしれない。

灰色の雪景色にたった一つ点灯する信号機の青、雲った窓ガラスに透ける黄色い車体ーー。

米国人写真家ソール・ライター(1923~2013年)が50年代を中心に撮影したカラー写真をみて、色彩に対する研ぎ澄まされた感受性にただ言葉を失った。

 Bunkamura ザ・ミュージアム(東京・渋谷)の「ニューヨークが生んだ伝説 写真家 ソール・ライター展」は日本初の回顧展だ。

 そもそも、ほぼ忘れられていたライターが再評価されたのは06年、83歳で刊行した1冊の写真集がきっかけだった。

50年代からモードの世界で活躍するが、ファッション写真の商業化とともに仕事が減少し、81年にスタジオを廃業。

以降、つましい生活を送りつつ発表するあてもなく自作に没頭する。

現像費用の助成を受けてカラーフィルムの現像がかなったのは、撮影からほぼ半世紀、90年代半ばのことだった。

 父親はピッツバーグのユダヤ教聖職者。
20代で神学に見切りをつけ、画家を目指してニューヨークへ渡る。

ライターの写真が色彩の鮮度だけではない深みを備えているのは、写真と並行し、生涯絵を描き続けたことと無関係ではないだろう。

「雪」と題した1枚は結露した窓ガラスの文字がコラージュのように画面にアクセントを加え、奥行きを強調。

したたる水が窓外の男性の下半身をぼかし墨絵のような効果も生んでいる。

 「タクシー」や「天蓋(てんがい)」など近景を大胆にクルーズアップし、画面の大半を覆う構図に、日本の浮世絵の影響を指摘する向きもある。

が、雪景色やガラス、鏡などに映り込んだり透過したりして刻一刻と変化する色彩や光の質感を瞬時に切り取るまなざしは、白黒とカラー写真、絵画を知り尽くしたライター独自のものだ。

6月25日まで。

(編集委員 窪田直子)

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