日経新聞 海外メディア「勝利に酔えぬ情報戦争」=英FT・イノベーション・エディター J・ソーンヒル氏=

2017年08月03日 16時25分13秒 | 海外メディア
日経新聞 2017年7月31日(月) P.6 オピニオン面
『勝利に酔えぬ情報戦争』=英FT イノベーション・エディター ジョン・ソーンヒル= 

 米ノースロップ・グラマンのステルス爆撃機「B2」は恐ろしい兵器だ。
全く探知されないまま数千キロも飛行でき、どんな標的にも熱核爆弾を落とせる。

米政府の試算では、米空軍は稼働中のB2爆撃機の開発と配備に、1機あたり平均21億ドル(約2300億円)を費やしているという。

 こうした兵器を開発できる資金や技術がある国はほとんどない。
核兵器と精密誘導ミサイルにおける米国の圧倒的優位は健在だ。

だが、急激に変化する世界にあってはそれだけでは十分といえない。

 例えばハイジャック・テロはB2爆撃機にかかる経費に比べ、微々たるコストで実行できる。

政府が支援するハッカーも、巨額資金がなくても他国の銀行や交通インフラ、そして民主的な国の選挙にまで大混乱を引き起こせる。

 バーチャルな世界では、相手の意図や能力を判断する手段がないに等しい。
自分が勝っているか負けているかすら確証が持てない。

こうした曖昧(あいまい)さは、欧米諸国の軍事力を破壊しようともくろむ者にとっては理想的だ。

 中国の戦略家はこの新局面をいち早く詳述した。

1999年、中国人民解放軍の将校2人が「超限戦」という本で、あらゆる戦争に不可欠な3つの要素、つまり兵士と武器、戦場が劇的に変化したと指摘した。

兵士にはハッカーや投資家、テロリストが含まれる。

彼らの使う武器は民間機からウェブブラウザー、コンピューターウイルスなど多岐にわたり、世界のどこでも戦場に変えられるという。

 ロシアも多様な「武力」を用い近年、ジョージア(グルジア)とウクライナに軍事侵攻する一方、両国とエストニアにサイバー攻撃を仕掛けている。

昨年の米大統領選へのハッキング疑惑も拭(ぬぐ)えない。
加えて「偽情報作戦」も強化している。

ロシア問題専門家のマーク・ガレオッディ氏が言う「情報の武器化」だ。

国営テレビのキャスター、ドミトリー・キセリョフ氏によると、情報戦争が主要な戦闘行為になっているという。

 米国防総省の元高官は、多方面に及ぶ脅威に対抗するため欧米諸国は社会を守るソフトパワー戦略を見直し、国家全体で取り組まなければならないと主張する。

 もっとも、米大統領の座にトランプ氏がいる限り、こうした考えは机上(きじょう)の空論だ。

同氏は旧来の軍事設備を増強しようとしている。

それだけでなくロシアのプーチン大統領を称賛し、北大西洋条約機構(NATO)の集団的自衛権にすんないとは支持を表明せず、米メディアを偽ニュースを流すと非難している。

ロシア政府にとってはこの上なく御(ぎょ)しやすい存在だ。

 ネット上の情報戦で、ロシア政府はすでに勝利を収めたようだ。

しかし、プーチン大統領の側近は勝利に酔いしれる前に、欧米諸国がロシアとは違い、特定の個人や機関だけに依存してるわけではないことを肝に銘じるべきだろう。

現に米議会は大統領選への介入を理由に、対ロ制裁を強化しようとしている。

 ロシア国内でも、野党指導者アレクセイ・ナワリニー氏が年初、メドベージェフ首相の腐敗疑惑を追及する動画を公開した。

ソーシャルメディアで2400万回近く再生されている。

 独裁国家がどれだけ情報の武器化にたけていても、それはもはや指導者だけの専売特許ではなくなりつつあるのだ。

(7月25日付)


●関連日経記事:2014年2月25日グー・ブログ「息子たちに読んで欲しい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 インターネット「サイバー攻撃 日本も渦中」=陸海空、宇宙に続く「第五の戦場」=』(2014年2月23日付)

●関連日経記事
:2017年5月15日グー・ブログ「同上」投稿記事参照
 日経新聞 インターネット「経済苦境、偽ニュース生む」=マケドニア 中部の街「ベレス」=』(5月14日付)

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