日経新聞 書籍紹介「読書、最大最良の人への投資」=カルビーCEO 松本晃氏=

2015年05月18日 04時34分37秒 | 書籍紹介
日経新聞 2015年5月17日(日) P.19 読書面
連載『リーダーの本棚』=カルビー会長兼最高経営責任者(CEO) 松本 晃氏=

『最大最良の人への投資』

 毎月1回、土曜日に各地に出向いて開く社内の勉強会で、読書のすすめを説いている。

 社長だった創業家の松尾雅彦さんと一緒に、5年前から社内で塾をやっています。
誰でも参加自由で、朝の10時から晩の7時半まで懇親会も入れて、いろんな議論をします。

そこで「本を読みなさい」と言っています。

 塾をこつこつと続けているのは、学ぶ習慣を社員に植え付けたいためです。
学ぶことが文化になれば、会社のレベルが上がりますからね。

会社が新たしいことを始める場合には、設備投資をします。
人にとって設備投資にあたるものは学ぶことです。

その一番効率的な方法は読書です。

 著者が汗水たらして書いたものが千円か2千円で買えます。
読書は限りある人生で、最大最良にして最も安上がりな投資です。

ただし読み方には3つのポイントがあります。

 第1に、本はたくさん買え。
10冊まとめて買っても1万5千円程度です。

第2に、最初の30ページは必ず読め。
つまらなかったら、読むのを止せばよい。

10冊買えば3冊くらいはよいのがあるでしょう。
読んだら捨てろ。

そうしないと一生懸命読まないからです。
後でまた読みたくなったら買えばよい。

 私は小説でも事実に基づいたものを選びます。
著者が勉強せずに思いつきで書いた本は読みません。

くだらない本で暇つぶしをするほど人生は長くない。

 読んだら捨てるのが原則。
本棚には特定の本しか残さない。


 小説では、司馬遼太郎さん、山崎豊子さん、浅田次郎さんですね。
例えば山崎さんは、現実を上手(じょうず)にフィクションに仕立てています。

何の根拠も無いものは書いていない。
全部面白いですが、あえて1つ取り上げれば大学医学部をテーマにした『白い巨塔』ですね。

 私は前に医療の世界に関わっていましたから、その通りではないにしても、近いことが実際にあると知っています。

教授選を巡るごたごたは、あの通りあるんです。
読んだ人は、なるほどそうか、よく書いてくれたと思うわけです。

 もちろん医療は人助けがベースです。
それは当たり前すぎて面白くないので、山崎さんは影の部分に焦点を当てている。

世の中はしょせん、おカネ、身分、権力の3つを巡って動いています。
医療の世界は、おカネの部分は少ないから、身分と権力の話が強調されるんです。

 司馬さんは戦国物の『功名が辻』を20代で初めて読んで感動しました。
まるで見てきたように書いている。

史実の折り込み方がうまく、ストーリーも巧みです。
『坂の上の雲』は主人公の個人的な話かと思ったら違いました。

日清戦争をいかにして勝ち、日ロ戦争はどのような意味を持っていたのかが、わかります。

 こうした本はいろいろ教えてくれます。
しかし残す本は少ないですね。

買った本のあらかたは年末などに一掃します。

 多読はせず、これはと思う著者の本を繰り返し開く。

 堺屋太一さんお『風と炎と 第4部』は、世の中の難しい事象を平易に語っています。
手元の本は1993年の初版です。

こういう本は捨てられません。
時々、読み直して、やはりそうなのかと示唆を得ています。

堺屋さんの本は10冊くらい置いてある。
組織とは何かを教える『組織の盛衰』は私のバイブルです。

 経営書では、『コトラーの戦略的マーケティング』は本当によくできている。
コトラーさんは、これ1冊で十分(=な功績)です。

5回読めばマーケティングの本質がほとんどわかる。

ドラッカーさんも本をたくさん書いていますが、『チェンジ・リーダーの条件』を読めばよい。

 いずれも実際の経営に生かさなくては意味が無い。
他の著書も枝葉が付きますが基本は変わりません。

たくさん読んでも頭がごちゃごちゃするだけです。
1冊だけでも、応用できるまで吸収するのは大変です。

 野中郁次郎さんから社員経由でいただいた『史上最大の決断』は面白くて、もったいないので、ゆっくり読んでいます。

第2次世界大戦におけるノルマンディー上陸作戦の決断がどうなされたかを知ると、わくわくします。

あのような大きな意思決定にあこがれますね。

 本は読みながら考えられるのがいい。
現実の経営や生き方を顧(かえり)みながら、よい本はじっくり読みます。


▲まつもと・あきら
 72年京都大学大学院農学研究科修士課程を修了し、伊藤忠商事に入社。

ジョンソン・エンド・ジョンソン社長を経て、2009年6月から現職。


◆『私の読書遍歴』
=座右の書=


・『組織の盛衰』(堺屋太一著、PHP研究所)。 組織について歴史的な視点も含めて縦横に論じている

・『風と炎と 第4部』(堺屋太一著、産経新聞社)。 バブル崩壊と冷戦終結後の変化を地球規模で展望する。


=その他の愛読書など=
・①『白い巨塔』(山崎豊子著、新潮文庫)

・②『坂の上の雲』(司馬遼太郎著、文春文庫)

・③『世に棲む日日』(司馬遼太郎著、文春文庫)。 幕末の吉田松陰や高杉晋作らの生き方を描く。

・④『蒼穹(そうきゅう)の昴(すばる)』(浅田次郎著、講談社文庫)。 清朝末期の西大后(せいたいごう)ら実在の人物を絡(から)ませた歴史小説。

・⑤『コトラーの戦略的マーケティング』(フィリップ・コトラー著、上田淳生編訳、ダイヤモンド社)

・⑥『チェンジ・リーダーの条件』(P・F・ドラッカー著、上田淳生編訳、ダイヤモンド社)

・⑦『バランスシート不況下の世界経済』(リチャード・クー著、徳間書店)。 著者とは時々意見を交わす。

・⑧『史上最大の決断』(野中郁次郎著、ダイヤモンド社)

(聞き手は森一夫記者)



●関連日経記事:
2013年12月2日グー・ブログ「息子たちに読んで欲しい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 人物紹介「マーケティングとは」=私の履歴書 ① フィリップ・コトラー氏=』(2013年12月1日付)

●関連日経記事:2013年7月29日グー・ブログ「同上」投稿記事参照
 日経新聞 人物紹介「マーケティング分野の世界的権威」=フィリップ・コトラー氏=』(2013年7月28日付)

●関連日経記事:2014年7月12日グー・ブログ「同上」投稿記事参照
 日経新聞 経営「カルビー:外から来ると よく見える」=革新力 The Company ②=』(2014年7月10日付)

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