日経新聞 自己啓発「アングロ・サクソン情報の呪縛」=メディアの英語情報偏重にも留意が必要=

2017年05月14日 03時25分10秒 | 自己啓発
日経新聞 2017年5月11日(木) P.31 オピニオン面
連載コラム『私見卓見』

『アングロ・サクソン情報の呪縛』=元財務官 内海 学=

 英国の国民投票で欧州連合(EU)離脱が決定したとき、日経平均株価の暴落幅は英、独、米よりも大きかった。

英離脱の余波が次々と波及し、EUも統一通貨ユーロも解体してしまうだろうという見方が特に米英にあり、これが日本で増幅されたのである。


 だが、欧州大陸の私の友人たちは「英国は欧州統合にそれほどコミットしていなかった。 仮に英国が離脱してもEUの統合はそれほど影響を受けない」と平然としていた。

 考えてみよう。

かっての大英帝国の覇権(はけん)は欧州大陸が分裂していることのバランスの上に成り立っていた。
 
ある国が大陸を制覇する動きを見せると、英国は常に反対側を支持し、これを防ぐことに全力を注いできた。

 第2次湾岸戦争の時も英国のブレア首相は独仏が反対するなかで米国に全面的に協力し、スペイン、ポーランド、イタリアなどにも働きかけて参戦させ、EUを分裂させたこともあった。

英国はユーロ圏という形で欧州大陸が一つになることに本能的に抵抗感があるのではないか。

 日本が欧州の行方を読み間違ってしまうのは、国際動向の把握をほとんど英語の情報に依存していることに由来していると思う。

 リーマン・ショックの後はわが国の多くのエコノミストや大学教授がユーロの存続に疑問を呈し、「3年以内になくなる」などという議論が横行した。

当時、ギリシャをはじめとしてユーロ圏の国々は確かに次々と危機にさらされたが、実際には欧州安定メカニズムが設立されるなど支援体制が整備されていった。

 1992年9月に英ポンドが欧州の為替メカニズムから離脱せざるを得なくなったとき日本の為替ディーラーは手持ちの仏フランの損切り処分に走った。

アングロ・サクソンのメディアが「次はフラン」と書きたてたためだ。
しかしドイツはフランを支え、離脱は起こらなかった。

 今回のフランス大統領選でも、仏・ルモンド紙が指摘するように英国のメディアはルペン氏と「フレグジット(=仏のEU離脱)」の可能性に焦点をあてる傾向が顕著で、市場のユーロペシミズム(=ユーロ悲観論)の空気を醸成した。

それによって損を拡大した日本の機関投資家も多いだろう。

 欧州大陸についてアングロ・サクソンの情報には時に偏りがあることを肝に銘じる必要がある。

市場関係者もエコノミストもメディアも、その呪縛から解放されなければならない。

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●関連日経記事
:2013年12月1日グー・ブログ「息子たちに読んでほしい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 国際「英語圏に『スパイ倶楽部』」=米の盗聴疑惑、欧州などの批判の矛先=』(2013年11月30日付)

●関連日経記事:2017年5月11日グー・ブログ「同上」投稿記事参照 
 日経新聞 国際「親・第三の道と欧州の未来」=元英国首相・ブレア氏に似るマクロン仏・新大統領=』(5月10日付)



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