日経新聞 経済「反グローバル化が正義なのか」=低開発国が発展する機会を得る役割も…=

2016年10月29日 03時36分09秒 | 経済
日経新聞 2016年10月27日(木) P.19 マーケット総合2面
連載コラム『大機小機』

『反グローバル化が正義なのか』

 米国の大統領選挙で自由貿易がすっかり悪者にされた。

欧州で移民や難民に反対するポピュリズム政党が勢いづく。
格差拡大の元凶として、グローバリゼーションが、やり玉にあがる。

 折しも世界銀行がそんな通説を覆す報告書を出した。

「貧困と繁栄の共有」と題したリポートによれば、1日1.9ドル未満で暮らす極度の貧困層は2013年時点で世界人口の1割強の7.7億人で、前年より1億人あまり減った。

 1990年からでは11億人が、極貧層から抜け出した。

リーマン危機にもかかわらず、世界全体で見た格差は、90年代以降一貫して縮小しているという。

 米国の歴史家ケネス・ポメランツによれば、18世紀半ばには、西欧の先進地域のイングランドと、中国の長江デルタ、日本の畿内や関東平野の住民の生活水準に大差はなかった。

 ところが、産業革命を機に、西欧が爆発的な成長を遂げ、他を引き離す「大分岐(グレート・ダイバージェンス)」が起きた。

 20世紀半ばには、中国とインドの国内総生産(GDP)を合わせても、(人口が4割弱を占めるに対し=)世界GDPの1割を下回るまでに差が開いた。

グローバル化は、出遅れた地域が産業革命の”時差”を埋める大分岐の巻き戻しでもある。

 「フラット化する世界」と、先進国に顕著な「不平等化する社会」が並走しているのだ。
後者の立場からのみグローバル化を糾弾するのは公正ではない。

 グローバル化を止めれば、人口の4割強が極貧層のサハラ砂漠以南(=サブサハラ)のアフリカなどが、成長するチャンスを奪われかねない。

 先進国の不平等緩和には、再分配政策の強化や、技術革新に取り残されない教育制度の拡充、多国籍企業や超富裕層の国境を超えた税逃れを封じ込める国際協調など、打つ手は多い。

 特に日本は、反グローバル化に安易に同調してはならない。

90年代以降の日本経済が「失われた」年月を重ねた一因に、グローバル化への適応の遅れがある。

”ガラパゴス化”して競争力を失い、衰退した産業や企業が、思い浮かぼう。

 ライバルが足踏みする今こそ遅れを取り戻す好機。

無駄骨も覚悟で環太平洋経済連携協定(TPP)を早く批准し、人手不足を補う外国人材の受け入れも進める。

反グローバル化には逆張りで行こう。

(手毬)


●関連日経記事:2016年2月6日グー・ブログ「息子たちに読んでほしい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 経営「大企業の1つや2つ倒産しても…」=シャープの再建劇に考える=』(2月4日付)

◆ことばのメモ:
『畿内(きない)』~〔王城の周辺の意〕律令(りつりょう)国家が定めた行政区域。

山背(山城)・大和・河内・摂津の4カ国をいい、四畿内と呼ばれた。

(三省堂スーパー大辞林より)

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