日経新聞 国際『「イスラム国」資金源陥落』=イラク、モスル解放宣言=

2017年07月13日 16時14分34秒 | 国際
日経新聞 2017年7月12日(水) P.9 国際2面
『「イスラム国」資金源陥落』=イラク、モスル解放宣言=

『細る人員 崩壊加速』

 イラク政府は10日、過激派組織「イスラム国(IS)」との戦いに勝利したと正式に宣言した。

ISにとって中核拠点のモスル陥落は、殺りくと恐怖支配による略奪や没収の調達先を失うことになる。

ISの「不敗神話」の崩壊は、世界中での戦闘員勧誘にも大きく影響する。

世界へのテロ拡散を防ぐにはイラクやシリアでの掃討作戦と並行し、資金や人材などISの経済的な基盤を崩す取り組みが重要になる。


 ISとの約9カ月に及ぶ戦闘を経て、モスル奪還に成功したアバディ首相は10日夜、「イラクの軍と国民の勝利だ」と強調した。

モスルの奪還は2014年6月にISが「国家の樹立」を宣言した象徴都市を取り返したとの意味にとどまらない。

ISの資金源を根こそぎ断つという意義も持つ。

 モスルはISという「国家」の経済を支える屋台骨だった。

イラク第2の都市で金融機関や企業も多数あったことから、ISは制圧時に多額の資金を強奪。

200万人程度の住民からの「徴税」も収入源になってきた。

 モスルに加え、イラクとシリアにまたがる広い「国土」を持ったことから資金源は潤沢(じゅんたく)だった。

英大手会計事務所、アーンスト・アンド・ヤング(EY)によると「建国」間もない14年の収入は、最大で18億ドル(約2050億円)。

内訳は略奪品・没収品の横流しや罰金が5割、原油密売と税収が各2割などだった。

 米経済誌フォーブスによる14年のテロ組織の資金調査ではISは抜きんでた首位で、2位のイスラム原理主義組織「ハマス」の約2倍だった。

ISと対立する過激派組織アルカイダと比べると10倍強。
広大な「国土」から得る収入が他のテロ組織と一線を画す独自の組織形態を可能にさせた。

 最も効果的だったのは多額の給与をちらつかせた、世界各地からの戦闘員の加入だ。
戦闘員だったあるイラク人の月収は800~1千ドル程度。

同国の平均月収の2倍以上だ。
有能であれば約3千ドルも手にできたという。

失業や貧困に悩む若者には、待遇の良さが魅力となり、3万人もの外国人戦闘員が参加した。

チュニジアから約6千人、ロシアから約5千人がISに渡ったという。

 ISの資金源は銀行強盗、原油・麻薬の密売など不正行為で得たもの。
住民から略奪し、厳しい「税金」を課し、反発する者には公開処刑を辞さなかった。

恐怖による支配は国際社会による激しい非難の対象となった。
米国軍主導の有志連合によるイラク軍の支援につながり、ISは支配地域を減らした。

17年は支配地域を減らした。

17年6月時点で約3万6千平方キロメートルと、15年1月に比べて約4割の規模に縮小した。

 米軍など有志連合はISの資金源根絶のため、油田を空爆した。
15年末に国連安全保障理事会はISの資金源遮断を目指す決議を採択。

各国に民間金融機関と協力を深め、ISに関係する送金や金融取引の監視強化を進めた。

 国際社会の努力もあり、ISの16年の収入は14年比でほぼ半減。
今後はさらに落ち込む見通しだ。

モスル陥落でISの劣勢ははっきりし、収入面や戦闘員の勧誘でも追い打ちとなるのは必至だ。

組織弱体化への大きな転換点となる。

(カイロ=飛田雅則記者)








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