日経新聞 国際「カタール経済封鎖 長期化」=サウジなど断交から1カ月=

2017年07月06日 17時52分10秒 | 国際
日経新聞 2017年7月5日(水) P.8 国際1面
『カタール経済封鎖 長期化』=サウジなど断交から1カ月=

『事態収拾 糸口つかめず』

 サウジアラビアなどのアラブ諸国がカタールとの国交断絶を発表してから5日で1カ月となる。

関係修復の条件としてサウジなどは衛星テレビ、アルジャズィーラの閉鎖など13項目の要求を突きつけたが、カタールは拒否。

米国の調停も事態の収拾にはつながっていない。
対カタール経済封鎖の長期化は湾岸地域の成長に影を落とす。


 カタールのムハンマド外相は3日、仲介役のクウェートを訪問し、同国のサバハ首長に回答書を手渡した。

内容は不明だが、ムハンマド氏は回答に先立ち「(要求は)拒否しかできないように作られている」と批判しており、受け入れを拒んだとみられる。

 イランとの外交関係縮小、イスラム主義勢力「ムスリム同胞団」などとの関係断絶、アルジャズィーラやトルコ軍基地の閉鎖ーー。

サウジ、エジプト、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーンの4カ国は先月22日、13項目の要求を提示した。

今月2日の期限を48時間延長し、カタールの譲歩を促している。

 4カ国は5日にカイロで外相会合を開く。

カタールの回答を不十分と判断すれば、実施済みの国境閉鎖や国民の往来禁止に加え、カタールの銀行からの預金引き揚げ、湾岸協力会議(GCC)の資格凍結など制裁強化に動く可能性が指摘されている。

 親米のアラブ諸国同士の対立長期化を避けようとティラーソン米国務長官は関係国の閣僚と相次いで会談するなど調停を本格化させているが、事態収拾の糸口はつかめていない。

 トランプ米大統領は2日、サウジのサルマン国王やカタールのタミム首長と電話で協議し、断交問題への懸念を表明した。

ただ、トランプ氏のサウジ寄りの姿勢は知れ渡っており、仲介役としての米国の立場を弱めている。

 経済封鎖は企業活動にも影響を及ぼしている。

2022年のサッカーW杯を開催するカタールでは総額2000億ドル(約23兆円)規模とされるインフラ整備が急ピッチで進む。

UAEなどは自国の港に立ち寄った船舶がカタールに向かうことを禁じており、企業はインフラ建設に必要な資機材を本国から直接運んだり、第三国経由に切り替えたりして対応する。

 人の往来も迂回(うかい)を迫られている。
外資系企業が地域の統括拠点を置くUAEのドバイ。

カタールの首都ドーハとは所有時間約1時間の直行便で結ばれていたが、断交を受けて直行便は運行を停止した。

外国人ビジネスマンはオマーン経由など4~5時間かかる代替ルートの利用を余儀なくされている。

 断交発表後、米格付け会社S&Pグローバルはカタールの長期債格付けを引き下げており、対ドル相場を固定するカタールリヤルには下落圧力がかかる。

政府系投資ファンド、カタール投資庁は市中銀行に新たに数十億ドルを預け入れ、不安解消に努めている。

 事態の長期化はサウジなどにも重くのしかかる。
サウジ、UAE、バーレーンの企業がカタールでの建設工事などを受注しているためだ。

AFP通信はカタール高官の話として、20億ドル相当の契約不履行リスクがあると報じた。

 地域経済全体に影響が広がれば、原油価格の低迷で落ち込む各国経済の重荷となる可能性もある。

(イスタンブール=佐野彰洋記者)


●関連日経記事
:2017年6月23日グー・ブログ「息子たちに読んで欲しい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 海外メディア「カタール断交 世界に損害」=英FTチーフ・コメンテーター ラックマン氏(6月22日付)

連載コラム『大機小機』
『サウジ改革と地政学リスク』


 サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、エジプトが、カタールと断交し、同国との間に交通や物流を遮断して1カ月。

サウジなどは6月下旬、カタールの独自政策によって各国が受けた損害への賠償金支払いまで要求した。

主権を否定された形のカタール政府は「拒否するしかない」と反発していた。
双方の亀裂は深い。

 断交した側も断行されたカタールも、米国の中東における同盟国だ(=カタールはペルシャ湾の要衝に位置し、そこには米海軍基地がある)。

当初、断交を支持するようなツイートをしていたトランプ米大統領も事態の深刻さに気づき、各国に対立鎮静化を促すようになった。

 世界最大の石油輸出国サウジと、世界最大の液化天然ガス(LNG)輸出国カタールが突っ張り合う。

サウジ国内の動きも含めて、新たな地政学リスクを市場は警戒する。

 サウジでは、ムハンマド・ビン・サルマン副皇太子が6月21日日に突然、皇太子に昇格した。

指導層の若返りをめざす国王が31歳の子への王位継承の道筋を明確にした形だが、更迭された前皇太子が軟禁状態にあると米紙が報じるなど、強引な人事の感は否めない。

 新皇太子はイエメンへの軍事介入、イランやカタールとの断交など対外強硬策を主導してきた。

恐らく新皇太子らは、こう考えているのだろう。

 非アラブでシーア派のイランがスンニ派中心のアラブの政治に介入するから、中東が安定しない。

イランに対抗して湾岸協力会議(GCC)諸国が一体化を進めてきた中で、カタールがイランへの融和姿勢など独自の政策を続けると、地域の政治秩序が崩れる。

だから、イランの影響力排除とカタール締め付けを進めなければならないーー。



 サウジ政府は財政立て直しに向け来年から付加価値税を導入する予定で、国民の負担は増す。

新皇太子は国営石油会社サウジアラムコの株式公開を計画通り実施する構えだが、原油の減産を延長して価格を支え、同社の企業価値の評価を高めようとする政策は、必ずしも成功していない。

 地域の緊張につながる対外強硬姿勢には、国内の政治的な求心力を維持するテコという側面もある。

新皇太子への権力集中で、経済改革の推進力は増す。
その半面で、強腰の外交が摩擦を伴うことにも留意すべきだ。

(花山裏)

ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 日経新聞 経営「資産査定 M... | トップ | 日経新聞 法務・犯罪「ビッ... »

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • このブログへのリンクがない記事からのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。