日経新聞 法務・犯罪『日立、海外で「親子問題」』=海外少数株主のリスク=

2017年07月12日 21時30分33秒 | 法務・犯罪
日経新聞 2017年7月11日(火) P.17 投資情報面
連載コラム『一目均衡』

『日立、海外で「親子問題」』=編集委員 松崎雄典=

 株式市場での「親子上場」の解消に動いてきた日立製作所が、イタリアで子会社問題に頭を悩ませている。

 舞台は日立が51%を取得した鉄道信号大手アンサルドSTS。

「物言う株主」として知られる米ヘッジファンド、エリオット・マネジメントが30%を握る大株主となった。

取締役会は日立推薦の6人とエリオット推薦の3人に分裂し、激しく衝突している。

    ◆    ◆

 発端はイタリアの防衛・航空大手フィンメカニカが40%持つSTS株を、日立が2015年に1株9.5ユーロで取得したことにある。

 日立は同じ値段でTOB(公開買い付け)をかけ、買い増しを目指した。

これに対しエリオットは「13ユーロの価値がある」とみて市場で買い集め、日立はほとんど買えなかった。

その後、日立は10.5ユーロで追加取得し、何とか51%を確保した。

 少数株主のエリオットは、日立とフィンメカニカの「共謀」を非難する。

赤字の車両製造会社を「抱き合わせ」で引き取るかわりに、高収益のSTSの価格を安くしたとみる。

フィンメカニカ以外のSTS株主から見れば、不当に過小評価されたという訳だ。

 そうした主張を受けたイタリアの証券取引委員会は共謀を認め、最初のTOB価格を9.899ユーロに引き上げる行政処分を日立に下した。

 日立は「車両会社取得は生産能力確保のため」(アリステア・ドーマー執行役専務)と共謀を否定する。

不要な工場を買ったり、採算の悪い契約を引き継いだりせず、車両会社の黒字転換を正当な取引の証拠とする。

処分取り消しを求めて16年に提訴し、判断は欧州司法裁判所に委ねられた。

 裁判の結果が出るまで1~2年はかかるとされ、争いは長期化の様相を強めている。

エリオットは1年半前に13ユーロとした適正価格が、今はもっと高くなった可能性があると主張する。

司法判断に関わらず、高値で買い取られない限りは株主で居続ける構えだ。

    ◆    ◆

 日立が半分強の株式しか持たない株主構成では、M&A(合併・買収)の選択肢が狭まる。

エリオットはそこを突く。

「買収シナジーを最大化したいなら司法判断を待たず、先のことを少数株主と協議すべきだ」(エリオットのファンドマネージャ、ジョルジオ・フルラーニ氏)。

一方、日立のドーマー氏は「十分なシナジーが出ている」と妥協しない。

 日立の鉄道事業は成長を探る時期に「終点」のみえない争いに引き込まれた。

アクティブズムに詳しい米国弁護士のスティーブン・ギブン氏は「日立は、エリオットの過度な要求の被害者だ」としたうえで、「海外少数株主が残る場合のリスクを、日立はしっかり認識していなかった」と指摘する。

 カネ余りで「物言う株主」に急速に資金が集まっている。
上場子会社がもたらす問題は、海外では国内以上に深刻になることがある。

多くの企業が直面しかねない課題だ。

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