日経新聞 経営『レノボ流「攻めの再編」=買収先の技術生かし成長=

2016年10月12日 03時32分02秒 | 経営
日経新聞 2016年10月10日(月) P.5 企業面
連載コラム『経営の視点』=編集委員 関口和一=

『買収先の技術生かし成長』=レノボ流「攻めの再編」=

 中国パソコン大手のレノボ・グループが2つのことで先週話題になった。

富士通のパソコン事業を傘下に収める方針が明らかになったことと、レノボのパソコンが優秀な家電・IT(情報技術)製品に贈られる「シーテック・アワード」に外資で選ばれたことだ。

 表彰されたタブレット型パソコン「ヨガブック」は名前の通り、画面とキーボードが360度回転する。

閉じた厚さはわずか9.6ミリ、重さも690グラムと世界最薄最軽量を実現した。

 薄くできたのはキーボードを全面タッチパネルにしたためだ。
ご入力を防ぐよう震動で感触を伝え、キーボードの利用者の癖を自分で補正する。

「昔はこういう製品は日本企業が開発したのに」と審査員は語る。

 というのもタッチパネルは日本のワコムの技術。

薄型キーボードも「シンクパッド」を開発した日本IBMの大和研究所の技術から生まれた。

日本企業からユニークな商品が出なくなったのは「技術者が管理部門に数字で縛られるようになったからだ」という。

 確かに日用品化したパソコンは機能を高めるより、部材をいかに安くできるかに経営者の目は向く。

それなら早く事業統合すればよいものを多くの企業(=NECや富士通など)が先送りした理由は何か。

一つはパソコンの花形時代の責任者が経営トップや有力OBにいたこと。

もう一つは会社のロゴが付いたパソコンはブランド宣伝効果があるとされ、採算性に甘い風潮があったからといえる。

同じ構図は居間に鎮座するテレビにもあてはまる。

企業のメンツが構造改革を遅らせ、テレビやパソコン部門の業績悪化が会社の屋台骨を揺るがせた例はソニーやシャープ、NEC、東芝などにうかがえる。

 富士通のパソコン事業も例外ではない。

「FMVシリーズ」は一時高いシェアを誇ったが、主力商品であるがゆえに再編時期を見誤った。

ソニーから独立したパソコン会社や東芝のパソコン部門との合従連衡(がっしょうれんこう)も模索したが、同様な理由で思惑が一致しなかった。

 ではレノボはどうか。
事業再編は売るか買うだが、積極的な買収の方を選んだ。

相手のブランドや技術を生かし事業やシェアの拡大に役立てた。
欧州では独パソコン大手のメディオンを買収。

米国ではモトローラの携帯端末事業を傘下に収め「モト(Moto)」ブランドでユニークな携帯端末を開発している。

 レノボが米IBMのパソコン事業を買収して11年になるが、買収された大和研究所のある社員は「当時は将来を憂えたが、いま振り返ればむしろ活躍の場が広がった」という。

5年前にレノボの傘下に入ったNECのパソコン部隊の技術者からも同様の話を聞く。

 大胆な事業再編は米ゼネラル・エレクトリック(GE)が有名だが、それを指揮した当時のジャック・ウェルチ最高責任者(CEO)は「3番手や4番手に甘んじているより、その分野のトップ企業で働く方が幸せだ」といって売却部門の社員を送り出した。

 富士通のパソコン部門は今は不安かもしれないが、レノボの製品が高く評価されてことは杞憂(きゆう)を吹き飛ばしてくれる恰好の話題ともいえそうだ。


●関連日経記事
:2016年10月12日グー・ブログ「息子たちに読んで欲しい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 経営「稼ぐための再編 なお遠く」=日本企業のM&A急増=』(10月8日付)

◆父さんコメント:
 買収や海外工場進出は「文化と文化のぶつかり合い」でもある。

おカネさえ用意できれば誰でも企業買収や海外工場進出はできる。

問題は上記のレノボのように相乗効果を発揮して「成功の果実」を手に入れられるかどうかだ。

そこで「経営力」という企業文化の価値が試されることになる。

 被買収企業で働く社員が「なるほど、こうすれば利益を稼ぐ会社に変身できるのか」「なるほど、こうすることで企業が拡大発展するのか」と納得する新しい企業文化を買収した側の、工場進出した側の社員が自覚できる文化を付与・伝播できるかどうかがカギになる。

それは普段からの社員への教育システムや現場改善の風土が自社内に根付いているか、共有化されているかどうかによる。

経営陣と現場の社員のベクトルが合い、一つの目標に向かって、共通の文化を持ちながら統一した行動がとれているか。

 単なる時代の波に乗って拡大してきた企業には、その企業特有の企業文化はあっても、被買収企業を改革できるだけの企業文化はない。

買収、海外工場進出は経営力があるかないかを試されるリトマス試験紙でもある。
経営者はそのことを理解して決断しなければならない。

日本電産やレノボには、被買収企業の社員を納得させる素晴らしい経営がそこに存在するということにほかならない。

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