日経新聞 保険・年金・税金『「ぽっくり」が理想』=砂上の安心網~声を聞く ④=

2016年12月24日 12時57分28秒 | 保険・年金・税金
日経新聞 2016年12月23日(金) P.2 総合1面
特集連載『迫真』

『砂上の安心網~声を聞く ④』=「ぽっくり」が理想=

 「どんなふうに晩年を過ごしたいですか」。

社会保障についての連載で高齢者を取材しながら、記者(31)が聞きにくかったのが、彼らが考える「最後のとき」だった。

死ぬまで元気に、というのは誰もが持つ願い。
そんな中高年に人気の日帰りツアーが関西にあった。

「ぽっくり寺と大和ボケ封じ」。
いい機会だ。

ぽっくり成仏(じょうぶつ)を願う人々と旅に出た。

 10月下旬の金曜日。
午前8時、大阪・梅田駅近くに参加者が集まった。

夫婦、親子連れ、友人同士、女性1人と顔ぶれは多彩だ。
ほぼ50代以上で記者が一番若そう。

定員40人の座席に36人が座り、奈良県へ出発した。

 バスに揺られること1時間。
世界遺産の法隆寺を素通りして見えてきたのは吉田寺(きちでんじ)。

通称「ぽっくり寺」だ。
「しっかり拝んでくるわ」。

息子(52)夫婦と参加した川端こみえさん(77)はうれしそう。
「夜寝て、朝起きたらぽっくり、が理想」。

なぜぽっくり?
「息子たちに迷惑かけたくないもの。 自分で何でもできれば何歳でも生きたいけど」

 「煩(わずら)わず、苦しまず、終わり良ければ全てよし」。
山中真悦住職の講話を聴き、木魚をたたく参加者たち。

皆、「子どもに迷惑をかけたくない」と口をそろえる。
大阪府の女性(70)が言う。

「娘2人は子どもを産んで仕事に復帰した。 私の世話はできないでしょ」

 往生(おうじょう)祈願の後は「ぼけ封じ」。
向かった先は奈良県の安倍文珠院とおふさ観音。

一心に拝む男性(73)は「機械を使ってまで延命したくはないが、元気でいたいから検診は欠かさない」。

13年前に末期がんで夫を亡くした女性(78)は「彼が緩和ケアで苦しまなかったことが唯一の救い」と手を合わせた。

 ツアーは初開催から8年。
参加者は年々増え、累計で8千人超に。

人々と途中で別れ、記者は夜に再び、山中住職を訪ねた。
子どもに迷惑をかけたくない。

真摯に願う高齢者たちは、いまと次世代をどう考えているのか、知りたかった。

 住職は吉田寺に育ち、ぽっくり往生を願う人々を60年超見てきた。
仏教の道を究める住職が穏やかに、少し寂しそうにつぶやく。

「今の人にとって、先々のことは死ぬまでのこと。 この世がうまくいけばいい。 刹那的ともいえますね」

(大島有美子記者)


●関連日経記事:2016年12月23日グー・ブログ「息子たちに読んでほしい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 保険・年金・税金「税金は子どものために」=砂上の安心網~声を聞く ③=』(12月22日付)

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