日経新聞 インターネット「仮想通貨 相次ぐ想定外」=一瞬で急落・犯罪悪用=

2017年07月14日 09時04分05秒 | インターネット
日経新聞 2017年7月13日(木) P.3 総合2面
『仮想通貨 相次ぐ想定外』=一瞬で急落・犯罪悪用=

『業者分裂警戒』=取引停止も=

 仮想通貨に新たな問題が浮上した。

ビットコインを扱う世界の事業者で分裂騒動が起きており、14の取引所が加盟する日本仮想通貨事業者協会(JCBA)は顧客資産の保護へビットコインの取引を一時停止する検討を始めた。

仮想通貨は極端な値動きや犯罪への悪用など急成長のひずみが表面化しており「想定外」に備えた制度整備が求められている。


 「本当に分裂すれば一部の取引履歴が消失する可能性がある」とフィスコ仮想通貨取引所の田代昌之ビットコインアナリストは警戒する。

 ビットコインには中央銀行のような管理者がいない。

取引の履歴を複数のコンピューターが記録するブロックチェーン(分割台帳)という仕組みで管理している。

履歴が消えるとチェーンが切れてコインの価値が失われる可能性がある。

『手数料が高騰』
 記録業務を請け負うのは中国の事業者が多い。

最近は売買が急増し記録業務の手数料が高騰した。

米国の取引所などビットコインの利用者は作業の効率化を要求したが、手数料の減少を警戒する記録者側と意見が対立した。

しびれを切らした利用者が新たな枠組みのビットコインを8月1日に立ち上げると通告した。

 ビットコインが本当に分裂するかは分からないが、JCBAは分裂に備えてビットコインの入出金を一時停止するガイドラインの策定に入った。

停止期間は8月1日を含めて1日から1週間とする案が浮上している。

 ビットバンク(東京・品川)やテックビューロ(大阪市)などの取引所は売買は継続するが入出金は停止し、分裂騒動の終息後に取引履歴を書き換える措置をとる方針だ。

国内最大手のビットフライヤー(東京・港)は「対応策は未定」だが来週には公表するとみられる。

海外でもスイスの取引所Bityが早ければ7月29日に取引を停止する方針を明らかにした。

『下落率99.97%』

 仮想通貨はインフラや制度の整備が取引の増加に追い付かず、想定外の問題が相次いで起きている。

時価総額で2位のイーサリアムは6月、一時的に価値がほとんど失われる事態が起きた。

米仮想通貨取引所のGDAXが数百万ドル規模の売り注文を執行しようとしたところ、価格が一瞬で317ドルから10セントに急落した。

下落率は99.97%だ。
取引に厚みがなく極端な値動きになりやすい。

 法整備も課題だ。
海外取引所には本人確認を義務付けないところが多い。

その弱点を突く形で「ランサム(身代金)ウエア」を使ったサイバー攻撃では、支払通貨にビットコインが指定された。

海外では企業が仮想通貨の発行で事業資金を調達する手法が広がるが、投資家の権利保護や不正行為の防止といったルールは未整備だ。

 分裂騒動を受けてビットコインの価格は下落している。
コインデスクによると12日は1ビットコイン=2300ドル台から2割強の下落だ。

一時は400ドル超で取引されたイーサリアムも現在は半値以下に下がった。

▼仮想通貨
 紙幣や硬貨といった実物がなく、インターネット上でやり取りするお金を指す。

専門の取引所を通じてドルや円などの通貨と交換できる。
既存の金融機関を経由しないため送金手数料が安い。

2009年にビットコインが登場し、現在はイーサリアムやリップルなど約800種類の仮想通貨がある。

全体の時価総額は約9兆円とされる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『市場育成へ制度整備急げ』
 仮想通貨は決済手段や投機商品として世界で急速に普及している。

パソコンやスマートフォンを通じ他人にすぐに送金でき、手数料も数円程度と格安。

金融とIT(情報技術)を融合したフィンテックを代表するサービスとして成長を期待できる分野だ。

一方で、技術開発のスピードは極めて速く、取引や市場育成に関するルール整備が追いついていない面がある。

 仮想通貨は急速な技術開発で日常生活に浸透しつつあり、企業もその生かし方を探っている。

家電量販店大手のビックカメラが仮想通貨「ビットコイン」による支払いに対応し始めたり、三井住友海上火災保険が仮想通貨の送受金を巡るトラブルに対応する保険を開発したりしている。

 政府・日銀も利用者保護の観点から、市場の健全育成を狙った手立てを講じつつある。

金融庁は4月に改正資金決済法を施行し、取引所に登録制を導入するなど利用者保護を整えた。

日銀も仮想通貨システムの研究を進め、実態の把握に努めている。

 ただ仮想通貨は発行から流通までを管理する主体もなければ信用を支える基盤もない。
新たな「価値」を前にどう備えるか、当局も見極めきれていない面がある。

金融庁も「技術開発が進む新しい分野なので、これからどのようなことが起きるのか予想できない」(幹部)と当惑を隠せない。

 2014年に取引所マウントゴックスで巨額コイン消失事件が起きたのは記憶に新しい。

今回の事態で「仮想通貨はやはり危うい」との認識が広がれば、せっかく育ち始めた市場が縮みかねない。

金融を成長産業に育てるためにも、政府と業界は取引ルールの明確化や情報公開の徹底など、円滑な運用をめざした取り組みを急ぐ必要がある。

 仮想通貨に詳しい早稲田大学ファイナンス総合研究所の野口悠紀雄顧問は今回表面化した事業者の分裂騒動について「ビットコイン始まって以来の一大転機だ。 分裂が起これば取引に混乱が生じる可能性もある」と警鐘を鳴らす。

 金融庁は問題が起きた段階で迅速に対応するとしているが、官が締め付けすぎると民の活力をそぎかねない。

規制と放任のバランスは難しい。
利便性と安全性を両立できるように柔軟にルールを見直す。

官民が市場育成という目標を共有し、新たなイノベーションを生む好循環を作りたい。

(鈴木大祐記者)


●関連日経記事
:2017年7月7日グー・ブログ「息子たちに読んで欲しい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 法務・犯罪「ビットコイン 広がる悪用」=急騰の裏でサイバー攻撃や資金洗浄…=』(7月6日付)


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