日経新聞 経営「細る役割 アナリスト受難の時代 (下)」=際立つ「いちよし証券」の調査=

2017年07月01日 09時59分20秒 | 経営
日経新聞 2017年6月29日(木) P.7 金融経済面
特集連載『アナリスト受難の時代 (下)』=細る役割 独自分析磨く=

 アナリストの苦境ぶりは日本にも共通している。
規制強化で企業調査が難しくなり、業績を予測する従来の手法は通用しなくなった。

「アナリスト不要論」が取り沙汰されるなか、人材の流出も進む。

危機感を強める当事者の間ではビッグデータを活用したり、業界の長期展望を示したりして自らの存在価値を再定義する試みが始まっている。

 「外資系証券ではここ1、2年、調査対象だった会社のIR(投資家向け広報)担当などに転職するアナリストが増えた」。

独立系調査会社、智剣・Oskarグループの大川智宏氏はこう証言する。

 経営者と投資家の面談をアレンジするのは長らくアナリストの仕事だった。

だが、近年は企業がIRを強化して投資家と直接やりとりし、「中抜き」することが増えたためだ。

UBS証券の日本株ストラテジストだった大川氏自身も風向きの変化を感じ、自分の会社を立ち上げた。

 アナリストにはいくつもの逆風が吹く。
昨年から原則として企業業績を事前調査できなくなった。

外資系証券で企業決算に絡む重要情報を一部の顧客だけに伝えていたことが判明し、事前調査を自粛する流れが強まったためだ。

野村証券などでは、アナリストが企業調査に基づいて決算前に業績を予想するのをやめた。

 2018年春には「フェア・ディスクロージャー(FD)・ルール」と呼ばれる新たな規制も導入される。

企業がアナリストなどに未公表の重要情報を伝えた際に直ちに公表するよう求めるものだ。

米国ではすでに導入済みの制度だが、「企業が委縮してアナリストの調査活動が一段と難しくなる」(大手証券幹部)と懸念の声が漏れる。

 アナリストは生き残りへ、「独自の分析」という新しい領域に踏み出し始めている。

 三菱UFJモルガン・スタンレー証券は4月、ビッグデータ解析を手がけるVALUENEX(東京・文京)と業務提携した。

担当企業がM&A(合併・買収)を発表した際にビッグ・データを活用して買収の相乗効果を分析する。

 「自動車産業の100年ぶりの大変革」など100ページを優に超える骨太の長文リポートも発行し、業界の深掘りに注力する。

根底には「これまでのやり方では生き残っていけない」(塩原邦彦エクイティリサーチ部長)との危機感がある。

 他社と差別化した分析が脚光を浴びている事例もある。
「『中小型のいちよし』と認知されるようになってきた」ーー。

いちよし証券の小林稔社長が手ごたえを感じているのが、同社の中小型株リサーチ部隊だ。

 アイフィスジャパンによると、16年の新興市場部門の閲覧シェアランキングで同社の調査子会社は30%と首位になった。


証券会社の調査と売買執行を分離させる欧州の新金融規制を前に、欧州の一部機関投資家はいちよしのリポートに対価を支払い始めた。

 多様で潤沢な情報こそが、「適正な価格を発見する」という市場機能の根幹を支えている。

情報発信の主要な担い手であるアナリストたちの盛衰は、市場そのものの活力をも左右する。

▼日本でもアナリストの企業調査は困難になっている。
・未公表の決算期の業績に関する調査はしない

・定量的な情報のうち、業績が把握できる情報は調査しない
・意図せずに把握した決算情報は投資家に伝えない

・重要な法人関係情報はリポートへの記載を禁止

(川上穣記者)

ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 日経新聞 法務・犯罪『「脱... | トップ | 日経新聞 インターネット「... »

コメントを投稿

経営」カテゴリの最新記事

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • このブログへのリンクがない記事からのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。