日経新聞 経営「小泉農政改革とESG」=新たな潮流「ESG投資」=

2017年04月19日 07時43分42秒 | 経営
日経新聞 2017年4月18日(火) P.17 投資情報面
『一目均衡』=編集委員 志田 富雄=

『小泉農政改革とESG』

 小泉進次郎・自民党農林部会長が力を入れる農業改革のひとつに、日本の農家に「農業生産工程管理(GAP)」の認証をとらせることがある。

2020年の東京五輪・パラリンピックの組織委員会は、食材に使う農産物の調達基準の柱にGAP認証を採用した。

認証取得を進める狙いは、なるべく多くの国産農産物を五輪に提供できるようにすると同時に、農家の経営改善や輸出拡大に結びつけることだ。

    ◆    ◆

 GAP認証は五輪のために作られた制度ではない。

世界で最も普及している「グローバルGAP」は、欧州の小売り大手などが消費者に支持される食品を安定供給するためにどのような調達基準が必要かを考え、原型が作られていった。

 認証の審査は残留農薬など安全性に関わるリスクはもちろん、生産過程での環境負荷、作り手の労働環境の管理も調べる。

同じような認証制度は漁業や林業でも浸透しつつある。

 世界の食糧問題に加え、環境、人権問題も取り込んで農業を考える発想は国連の指針や欧州連合(EU)の政策が影響している。

企業に環境(E)、社会的な課題(S)、企業統治(G)への対応を問うESG投資と共通する部分は多い。

 農産物の調達基準にGAPを採用する企業はそれを原料の安定確保につなげようとする。

目の前に安い農産物があっても、生産現場の劣悪な労働環境であったり、違法な森林伐採をもたらしたりするものなら持続可能とはいえない

 こうした農産物の利用が発覚すれば企業価値を損なうリスクにもなる。

 農林水産物の調達基準が過去5年、欧米企業に広がり、産地で対応が進んだ背景にはESG投資の存在が無視できない。

ESG投資が目指す投資の歯車、インベストメントチェーンが機能し始めている。

 東京五輪の組織委員会は調達の基準に、国際的な基準とともに比較的緩やかなルールも設けている。

だが、小泉部会長は「生産者が国際基準という高い目標に向かって努力することに意味がある」と考える。

 欧米に比べ遅れていた国内のESG対応は、公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が国連の支援する責任投資原則に署名したのを契機にあわただしくなった。

 QUICK・ESG研究所の松川恵美プリンシパルは「関連サービスへの参入企業がにわかに増え、世界とかい離した自己満足型ESGが出来上がらないように注意が必要だ」と話す。

    ◆    ◆

 農漁業の認証を審査する第三者機関は、必ず生産現場に足を踏み入れ、水産物の資源調査は専門の科学者が担当する。

一方、ESG投資は企業の情報開示と対話が頼りだ。

それだけにインベストメントチェーンをつくる投資家、運用機関、企業の意識が重要になる。

 企業の長期的な成長や世界経済の安定につなげる目的を忘れてはならない。


●関連日経記事:2017年3月5日グー・ブログ「息子たちに読んでほしい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 経済「米スターバックス 初の円建て債発行」=500億円、社会貢献に活用=』(3月4日付)

●関連日経記事
:2015年3月13日グー・ブログ「同上」投稿記事参照
 日経新聞 経営「下請け海外企業の労働環境にも監督責任」=グローバル企業の死角 (下)=』(2015年3月12日付)

ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 日経新聞 政治「応仁の乱化... | トップ | 日経新聞 経済学『南洋材丸... »

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • このブログへのリンクがない記事からのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。