日経新聞 趣味「自在に遊ぶ奔放な筆」=千葉市美術館 「浦上玉堂と春琴・秋琴」展=

2016年12月10日 08時50分47秒 | 趣味
日経新聞 2016年12月9日(金) P.40 文化面
『自由に遊ぶ奔放な筆』=「浦上玉堂と春琴・秋琴」展=

 岡山出身の浦上玉堂(1745~1820年)は江戸期の文人画家のなかでも、大正末~昭和期の芸術家に、ことのほか愛されてきた画家である。

 千葉市美術館で開催中の「浦上玉堂と春琴・秋琴」展は、この文人画の巨星の世界を、長男の春琴、次男の秋琴の芸術と共に紹介する大回顧展である。

 玉堂ほど、近代になって大きく評価が変わった画人も珍しい。

生前は田能村竹田など一部の具眼の士を除けば、一般の評価は低く、むしろ長男の春琴の方が、世間ではずっとよく知られていた。

 生涯、山水画ばかり描いた玉堂に対し、春琴は当時流行した明清画の影響を受けた花鳥画もよく描き、温雅で洗練された描写が、京都の人々に親しまれたからである。

 一方、「蕪雑(ぶざつ)」「粗笨(そほん)」などと評された玉堂の作品は、大正末期から大きく評価を変え、気韻生動をダイナミックに体現する世界が、日本画家のみならず、萬鉄五郎や梅原龍三郎ら洋画家が称賛するところとなった。

「彼こそ近代日本随一の大画家である」という建築家のブルーノ・タクトの言葉はとくに有名だ。

 今展の見どころは、玉堂の代表作を一堂に集めながら、梅原や熊谷守一、川端康成ら近代の玉堂フリーク(freak)の系譜に光を当てたことだろう。

また40~50代を中心に新出作品を多く発掘し、画風模索期からの足取りを丁寧に追った点も見逃せない。

 画中に墨書された四字の題からは玉堂の意図が浮かび上がる。

「一晴一雨」「半雨半晴」「夏山雨意」といった言葉は、たゆたい揺れ動く天候に同化しながら、その大気のように自らの心を自在に遊ばせる心象風景の表現でもある。

七弦琴を弾き、酔いに任せて筆を走らせた玉堂の絵には、心の高揚を映すリズミカルな筆勢があり、対象の再現を超えている。

大正・昭和期の芸術家が魅せられたのは、ゴッホにも比せられたその奔放な筆に他ならない。

18日まで。

(編集委員 宮川匡司)


◆ことばのメモ:
 『フリーク(freak)』
~①普通とは違う形のもの。 異形のもの。 怪物
②ある物事が大好きな人。

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