日経新聞 国際「移民国家のふところの深さ」=『カナダ 歴史街道をゆく』 上原善広著=

2017年08月08日 03時37分10秒 | 国際
日経新聞 2017年8月5日(土) P.31 読書面
連載『あとがきのあと』

『移民国家のふところの深さ』=「カナダ 歴史街道をゆく」上原 善広氏=

 「個性のある隣国アメリカに比べて印象の薄いカナダだが、成熟した移民国家として世界で高く評価されている。 その本質を探ってみたかった」。

今年、建国150年を迎えたカナダの広大な国土を、実質6カ月かけて約1万キロ、自転車とバス、鉄道などで巡った。

 移民が入植を始めた東海岸からスタートした。
具体的なテーマを持たずに旅すると、つい足が向かうのはグルメだ。

タラの喉元のゼラチン質を揚げた「コッド・タン(タラの舌)」や、シナモン風味の甘い揚げ菓子「ビーバー・テイル(ビーバーのしっぽ)」などが名物。

「普通の日本人はカナダ料理といってもピンとこない。 知っているようで知らないということ」と笑う。

 旅先の人々はフレンドリーだった。
自転車店で修理していると「ナイス・バイク!」と声がかかる。

銀行で両替を間違えられ、窓口をいったん離れたが、戻ると足りなかった金額を支払ってくれたのには驚いた。

「シャイな国民性で自己主張はあまりせず、おおらかで居心地がよかった。 カナダの歴史と地理がそうさせるのだろう」と推測する。

 1500年代に英国とフランスから本格的な移民が始まり、両国の入植地戦争などを経て1867年に連邦政府が発足(東部地区の一部ではフランス語しか通じない地域がある!)。

先住民や混血の「メティス」のほか、農地開拓団として入ったウクライナ人、大陸横断鉄道の建設に従事した中国系など、多くの人種によってモザイク国家となった。

世界2位の面積に人口わずか3600万人で、今も大勢の移民を受け入れる。

 約20年前にアラスカからメキシコまで旅したことがあり、西海岸に着くと思い出の地を訪れた。

昔、親切にしてもらった先住民のバートを探していると、あるレストランのスタッフが協力してくれた。

家を訪ね、一緒に狩りもできた。

「米国ではトランプ大統領の言動が物議を醸(かも)すが、すぐ近くのカナダは多様性と共生する国としてのふところの深さがあった」

▼うえはら・よしひろ
 1973年大阪府生まれ。

大阪体育大学卒。
ノンフィクション作家。

『日本の路地を旅する』(文芸春秋)で2010年大宅壮一ノンフィクション賞。

(文芸春秋・1700円)


●関連日経記事
:2016年10月31日グー・ブログ「息子たちに読んで欲しい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 人物紹介「誰もが独り 街の人々を撮る」=『山谷 ヤマの男』 写真家 多田 裕美子氏=』(2016年10月30日付)

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