日経新聞 自己啓発「氾濫する情報より知恵」=新聞週間特集=

2016年10月18日 04時32分54秒 | 自己啓発
日経新聞 2016年10月17日(月) P.27 特集面
『氾濫する情報より知恵』=編集委員長 原田亮介=

 大学で年に1日だけ教壇に立つようになってから10年がたつ。
講義は時代とともに変わるが、必ず学生たちに伝えているメッセージが2つある。

1つは新聞はどんなニュースを報道すべきか、価値ある情報とは何かということだ。

 「あなたが必要なのは単なる情報(インフォメーション、information)ですか、知識(ナレッジ、knowledge)や知恵(ウィズダム、wisdom)ですか」

ただの情報なら今の時代、ネットを通じて消化できないほど集まる。

ビッグデータとして活用する(=世論の動向調査)なら別だが、本当に欲しいのはものを決めるときの独創的な考え方(=自分では思いつかない考え方)や、判断材料ではないか。


 ウィズダムの重要性を強調したのは作家の司馬遼太郎氏(=歴史小説を得意とした作家)である。

1991年に日本新聞学会で講演し、日本のメディアの役割について「インフォメーションの断片を報道するのではなく、ウィズダムの情報を選択し、読者、視聴者に根付かせる必要がある」と語った。

 本格的なネット社会が到来したいまこそ、司馬氏の指摘を真摯(しんし)に受け止める必要がある。

断片的な報道になっていないか、断片的な主張をしていないか。
困難な課題に処方箋(せん)を示す「知恵」は提示できているのか。

 今、世界中のメディアが求められている「知恵」の一つが、ポピュリズム(大州迎合主義)や反グローバル主義とどう対峙するかだろう。

 6月に英国は国民投票で欧州連合(EU)離脱を決めた。
予想外の結末となったのは英国民の強い反移民感情だった。

 11月の米大統領選挙は不人気者同士の争い。

事前の予想に反して共和党の予備選を勝ち上がったドナルド・トランプ氏は「メキシコとの国境に壁を築け」と訴える。

 反グローバル主義の代表的な主張は「移民が雇用を奪っている」、「移民が我々の税金でぬくぬくと生活している」などだ。

トランプ氏は支持層の白人労働者階級の受け皿になろうと、ポピュリズムが露骨である。

 英国でも米国でも、事実に基づかない暴言に注目が集まった面がある。

当初はメディア側にも「トランプ氏が発言すると読者や視聴者の反応がいい」という無自覚な報道も目立ったが、終盤戦になって変わってきた。

 エコノミストは「ポスト・トゥルース・ポリティクス」(事実を無視した政治の台頭、9月10日号)を批判した。

ニューヨーク・タイムズはトランプ氏の納税証明書をすっぱ抜いた。

大統領候補が言いたいことを伝えるのでなく、言いたくないことを伝える姿勢を明確にしたのだ。

 もう1つ、大学での講義で学生たちに説明し、わかってもらうよう努めてきたことがある。

 紙だろうとスマートフォン(スマホ)やタブレット(多機能携帯端末)の画面だろうと、目にするニュース記事の多くは、前線で収集する記者が書き、デスクが手直しした記事が元になっているということだ。

 10年前は大学の300人教室の3分の1ほどの学生が「紙の新聞を読んでいる」と答えてくれたが、最近はスマホでニュースを知る若者がほとんどだ。

 学生たちは案外、スマホで流れるニュースの多くが新聞社から配信されていることを知らない。

報道機関が事実確認して「品質保証」した記事が、ポータルサイトやまとめサイトにリンクされ、読まれている。

 日本経済新聞社は、自社コンテンツを他社サイトに掲載することは原則していない。
しかし、他の新聞社や通信社には記事を外販しているところが多いのだ。

 新聞を読まなくても「テレビの朝の情報番組を見ればだいたいのことはわかる」という人もいる。

しかし毎朝の番組制作に、各紙朝刊のコンテンツが大きな影響を及ぼしていることも無視できないだろう。

 自民党の下野から、第2次安倍政権誕生までの情報戦の舞台裏を描いた『情報参謀』(小口日出彦著、講談社現代新書)にこんなくだりがある。

「世論は朝つくられる」「夜のニュース番組はまとまりきっていない。 (朝刊が届く)朝4時からの報道に前日のすべてが収れん(収斂)する」

 ネット社会はパソコンからスマホに軸が移り、一人ひとりがメディアを持つ交流サイト(SNS)の時代を迎えた(=「品質保証」されない情報が錯そうする時代)。

双方向性を持つメディアに変わることも新聞メディアの課題である。

ただ何を置いても、質の高いコンテンツを提供することが大前提であるのはいうまでもない。

ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 日経新聞 安心・安全「米国... | トップ | 日経新聞 経営「正社員 5... »

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • このブログへのリンクがない記事からのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。