日経新聞 開発「スマホ決済 中印が先行」=「ネット×リアル」 小売り新局面 (中)=

2017年08月11日 11時34分35秒 | 開発
日経新聞 2017年8月9日(水) P.15 企業2面
特集連載『ネット×リアル』=小売り新局面 (中)=

『新興国に無人コンビニ』=スマホ決済 中印が先行=

 上海市郊外に6月、「ビンゴボックス」という聞きなれない名前のコンビニエンスストアが開店した。

飲料や菓子など約500品目が所狭しと並ぶ。
一見すると普通のコンビニだが、中には店員が1人もいない。

「無人コンビニ」だ。

『商品は5%安く』

 無人コンビニを支えるのはスマートフォン(スマホ)決済だ。

中国ではアリババ集団の「アリペイ(支払宝)」や騰訊控股(テンセント)の「ウィーチャットペイ(微信支付)」などが爆発的に普及する。

 ビンゴボックスで買い物をするには、事前にアリペイなどで個人認証をしておき、スマホでドアを解錠して店に入る。

商品を読み取り機にかざすと金額が表示され、スマホで決済する。

 レジ担当などの従業員が不要なだけに、普通のコンビにより運営コストは少なくすむ。
その分は値下げに回し、実際、商品の価格は5%ほど安い。

運営するベンチャーの中山市賓哥網絡科技は「今後1年で5千店を目指す」と鼻息が荒い。

 アリペイの中国での利用者は4億人。
ウィーチャットペイは7億人。

巨大なユーザー層が新ビジネスを生む土壌になる。

 「新鮮な野菜や果物がすぐに届くから、使ってみて」。

上海市内の女性(24)は最近、風邪で寝込んが友人に、スマホをつかう生鮮食品の宅配サービス「盒馬(フーマー)鮮生」を薦めた。

 自宅や職場からスマホで注文すると、上海の10カ所にある盒馬のスーパーで店員が品物を集め、宅配員が30分以内に家まで届ける。

支払いもスマホで一瞬で終わる。

2016年の開始以来、上海や北京などで急速に利用者を増やし、今後もエリアを拡大する予定だ。

 インドでもモバイル決済を使った新サービスが広がる。
所狭しと屋台が並ぶムンバイ市内。

果物や軽食など数十~数百円の支払いをスマホで済ます人の姿が増えてきた。

『屋台も現金不要』

 屋台ではインドのワン97コミュニケーションズが手がける「Paytm」が使える。

零細事業者でも手軽に導入でき、支払いは客が店頭でQRコードを読み込むか支払先の店主の電話番号を入力すれば終わる。

 11年に始まったPaytmの利用者は2億3000万人を超えた。

スマホ決済を使い慣れたユーザーはネット通販にも流れ込み、設立10年で数千万人が利用するようになったフリップカートといった新興企業を勢いづける。

 新興国では古い技術蓄積が小さいだけに最先端の技術が一気に広がる。

スマホやネット通販だけでなく車の相乗りや民泊といったシェアリングの新しいサービスも急速に普及する。

 だが日本は状況が異なる。
過去に技術開発で先行し、そこに膨大な投資をかけてきた。

既にインフラが出来上がり、減価償却が終わらないうちに次の投資には踏み出しづらい。


スマホ決済は伸びは小さく、コンビニ大手5社が取り組む無人レジも全店導入のメドは25年と8年も先だ。

 訪日客の「爆買い」をきっかけに、アリペイなど新興国発のサービスは日本にも進出し始めた。

事業展開のスピードに劣れば、決済から小売りの現場までアジア勢に存在感を奪われる。


●関連日経記事:2017年7月2日グー・ブログ「息子たちに読んで欲しい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 国際「生鮮通販 店が倉庫」=中国ネット小売り 新潮流=』(7月1日付)

●関連日経記事:2017年5月11日グー・ブログ「同上」投稿記事参照
 日経新聞 開発「タイでQRコード決済」=マスターカード・ビザ・銀聯=』(5月10日付)

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

日経新聞 国際「中国、対外投資46%減」=資本流出規制 響く=

2017年08月11日 10時43分08秒 | 国際
日経新聞 2017年8月9日(水) P.9 国際2面
『中国、対外投資46%減』=資本流出規制 響く=

『外資の対中投資も鈍る』=1~6月=

 中国企業の対外投資の落ち込みが鮮明になっている。

1~6月の中国による対外直接投資は前年同期比46%減の481億ドル(約5兆3千億円)と大幅に減り、対中国直接投資(656億ドル)を再び下回った。

当局が資本流出と人民元安を止めようと海外企業の買収を制限したためだ。
資本規制を嫌って対中投資も前年割れに落ち込む。

目先の市場安定を優先した資本規制は、中国企業の経営の高度化に逆風となる。


 中国は1978年の改革開放から外資を大胆に導入して経済成長を実現し、対中投資は対外投資をずっと上回ってきた(=資本流入国であった)。

国内の資本蓄積が進んだ2000年代から中国当局は「走出去(海外に打って出よ)」の掛け声のもと、中国企業の海外進出を後押し。

16年には金融以外の対外投資が1701億ドルに急増し、初めて対内投資を上回った。

 対外投資が対内投資を上回る国を「資本純輸出国」と呼び、経済発展が成熟してきたことを示す。

中国当局も「経済貿易大国から経済貿易強国へと躍進する上での重要な出来事」(商務省)と評価していた。

それが17年に再び「資本純輸入国」へと逆戻りした。

 原因は当局の資本規制による対外投資の急減。

昨年11月から1件500万ドルを超す海外買収や海外送金、両替などは当局の事前審査を義務づけた。

以前の5千万ドル超から対象を大幅に広げた。

さらに「不動産、ホテル、映画館、娯楽業、スポーツクラブなどで非理性的な海外投資がみられる」(商務省)とし、高い技術を持つ製造業以外の買収が認められにくくなった。

 6月には不動産大手の大連万達集団、投資の海航集団など5グループの海外買収向け融資を点検するよう、銀行監督当局が銀行に要請したことが判明した。

アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所とヘリテージ財団の調査では5グループの海外買収は1~6月に全体の約6割を占めた。

 中国当局は当面は海外買収の制限を続ける意向とみられる。

今月1日からは財務省が国有企業を対象に、海外買収に失敗した場合に担当者の責任を問う制度を導入した。

買収した企業の経営が健全か継続的に調べることも求めた。

「買収先のいくつかの企業は資産状況が思わしくなく、収益力も弱く、投資の収益率も低いなどの問題がある」(財務省)という。

 規制で資本流出と人民元安を抑える目的は達成した一方、海外企業による対中投資が減る「副作用」も出ている。

1~6月は前年同期比5%減った。

特に米国(44%減)、英国(40%減)、ドイツ(37%減)など、高い技術を持つ欧米企業の大幅な減少が目立つ。

「資本規制により利益を本国に送金しにくくなった」との不満が一因だ。

 李克強首相は「対中投資の減少を重視し、投資の障害を必ず取り除く」とハッパをかけるが、利益を出しても自国に還流できないとの懸念があれば、海外企業も投資拡大には二の足を踏む。

 中国の習近平国家主席は1月の世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)で「開かれた中国」をアピールした。

だが、現状は中国と海外の間を行き来する資本が細り、掛け声とは裏腹に「閉じた国」に逆戻りしかねない。

(北京=原田逸作記者)


●関連日経記事:2017年6月27日グー・ブログ「息子たちに読んで欲しい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 海外メディア「消えた中国保険の創業者」=派手な買収主導、規制強化で逆風=』(6月25日付)

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

日経新聞 経済「遺産マネー、首都圏に集中」=「相続 1000兆円時代へ」(上)=

2017年08月11日 10時05分22秒 | 経済
日経新聞 2017年8月9日(水) P.7 金融経済面
特集連載『相続 1000兆円時代へ (上)』

『遺産マネー、首都圏に集中』=東北・四国、10%超流出予測=
「地銀、細る貸し出し原資」


 個人の金融資産の半分にあたる900兆円超を65歳以上の高齢者が握る日本。
相続によって近い将来、子や孫へざっと1000兆円が移る。

このとき起きる「マネーの移動」が、金融業界にもたらす大きな変化を3回にわたって追う。


 「支店、東京都内にあるんですか?」。
預金者が亡くなると、その資産を子供や親族が相続する。

その際、四国にある地方銀行では、こう尋ねられることが増えた。

子世代は地元を離れ、大都市圏に住んでいるケースが多く、自分たちにとって利便性の良い金融機関に資産を移す。

 日本は年間で約130万人が亡くなる多死社会を迎えた。
2030年前後には同160万人程度が亡くなる。

つまり多相続時代ともいえる


 相続によって個人の金融資産はどう移動していくのか。
信託銀行最大手の三井住友信託銀行の協力を仰ぎ、試算した。

17年3月末時点の株式や現金などの家計の金融資産をもとに、総額は変わらない前提として都道府県ごとの流出入をみてみる。

すると今後20~25年の間に首都圏と近畿圏、北信越を除き、ほぼすべての地域で減少に転じることが分かった。

減少率が最も高いのは四国で17.8%にのぼる。

 他の地域に移動する金融資産は約9兆円。
ちょうど大手地銀1行分の預金量に相当する。

東北は14.6%減で約13兆円が流出する。
一方で首都圏は9.8%増え、国内の金融資産の4割を占める。

相続によって、マネーの東京集中が加速する。

 家計の金融資産のうち、預金が約半分を占める。
預金は銀行にとって貸し出しの原資だ。

貸し出しに回せるお金が減るなど「銀行経営に大きな影響を与える」とある銀行幹部は打ち明ける。

 日本全体で見れば、預金は増加の一途で、日銀によると、国内銀行の17年3月末時点の預金残高は745兆円。

前年に比べて6.2%増え、過去最高となった。

 ただ、個別にみると、減少に転じる銀行もある。

上場地銀82行・グループのうち、17年3月末時点の預金残高が前年に比べ減ったのは6行だった。

このうち4行は東北地方の地銀だった。

 預金の流出要因は、相続にとどまらない。

「インターネット支店で高金利で集めた定期預金のお金が、満期を迎えて他行に流出している」。

山形県と秋田県を地盤とするフィデアホールディングスの担当者は嘆く。
同社の17年3月末時点の預金残高は前年に比べ1.7%減の2兆5430億円になった。

 人口減で預金が減るのを食い止めようと、インターネット支店で店頭より高金利の定期預金を展開し全国からおカネを集めた。

 しかし日銀のマイナス金利政策導入後、定期預金の金利を引き下げざるを得なくなると、顧客は預金と共に去っていく。

人口減に相続資産の流出、そして運用難。

日本が迎える少子高齢化に伴う問題に地銀は直面している。


●関連日経記事:2014年5月7日グー・ブログ「息子たちに読んで欲しい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 経営「預金集め 地銀越境」=減る預金、地銀再編促す=』(2014年5月5日付)

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

日経新聞 国際『「中東版NATO」の危うさ」=域内盟主サウジの過信、独善生む=

2017年08月11日 09時05分02秒 | 国際
日経新聞 2017年8月9日(水) P.2 総合1面
連載コラム『真相深層』=サウジ主導、トランプ氏支援で始動=

『「中東版NATO」の危うさ』=域内盟主の過信、独善生む=

 サウジアラビアが中東における多国間安全保障の枠組み作りに動き出した。

「イスラム国(IS)」など過激派組織の掃討へ「対テロ合同軍」の編成を目指し、5月のトランプ米大統領の来訪時には「中東版NATO(北大西洋条約機構)」創設へ支援を取り付けた。

だがサウジの強引さばかりが目立つ構想は、かえって域内の不安定化に拍車をかけかねない。

『40カ国と合同軍』
 サウジは2015年、アジアやアフリカを含む約40カ国と「イスラム軍事同盟」を結成済み。

合同軍はその傘下に置く。

加盟国から兵力を募り、リビア、イエメンなど過激派の温床とされる国に派遣する案が浮上する。

 過激派は欧州などで次々とテロを実行する。

イラクはISが本拠としたモスルを制圧したが「ISが打倒されても影響は残る」(国連開発計画のM・ワヒブ・アラブ局長)。

中東はテロ根絶へ対応策が問われている。

 一つの答えが合同軍だ。

ただし母体の軍事同盟はイスラム教のスンニ派国のみで構成され、、シーア派でサウジと不仲なイランは外された。

サウジが対イランの政争の具に(合同軍を=)使うとの懸念も強い。

 合同軍創設の動きは3月に本格化した。

サルマン国王がサウジ国王として46年ぶりに来日した同月中旬、政権の中枢を握る息子ムハンマド副皇太子(当時)の姿は米ワシントンにあった。

トランプ大統領の女婿のクシュナー大統領上級顧問らと「サウジをトランプ氏の最初の外遊先にするための魅力的な演出法」(サウジ近隣国の外交筋)をひそかに協議した。

 5月下旬、トランプ氏はサウジを訪れ、1100億ドル(約12兆円)の武器売却契約に署名。

さらにイスラム圏50カ国超の代表を招いた会合で、サウジの対テロ戦への関与を高く評価してみせた。

 共同声明には、米主導の有志連合とイスラム軍事同盟の結束の必要性も明記し、サウジ主導の対テロ合同軍を事実上支持した。

米高官は「中東版NATO創設も模索すべきだ」との趣旨の発言をし、集団防衛の常設組織への発展まで促した。

 米国と並び中東に影響力を持つ欧州は、内向きなトランプ政権の登場で「本家」のNATOの結束引き締めに追われ、中東版の行方は様子見の姿勢だ。

それでもイランとの協力を深めるロシアへの対抗上、利点はある。

 ところが冷や水をかける事態が起きた。

サウジが6月上旬、アラブ首長国連邦(UAE)やエジプトなどとともに親イランのカタールに断交を通告。

イラン漁民が領海侵犯だとしてサウジ兵に射殺される事件も起きた。

 なぜサウジは強硬な動きが目立つのか。

オバマ米前政権時代にこじれた対米関係の修復に成功したうえ、トランプ氏からは域内の盟主として「お墨付き」を得たことで、安堵を超えた「過信」が生じたように見える。

『頓挫重ねた歴史』
 イスラム軍事同盟にはカタールも名を連ねるが、断交で協力は望み薄となった。

カタールは米軍に対しIS空爆のための軍事拠点も提供しており、サウジの「独善」には米政府も当惑気味だ。

 サウジが軍事面で頼みとするパキスタンも動揺する。

サウジに請われてシャリフ前陸軍参謀長が合同軍司令官に就き、1個旅団5千人を派遣するとの観測も流れたが、今回の断交劇で機運はしぼんだ。

カタールから液化天然ガス(LNG)を輸入しており「エネルギー供給の行方を気にしている」と関係者は語る。

 中東の多国間安保の試みは過去にもあった。

NATO創設と同じ1950年代のバグダッド条約機構、91年の湾岸戦争を契機としたアラブ8カ国の合同軍構想などだが、当事国の利害対立などでいずれも頓挫した。

サウジ・ファイサル国王研究センターのJ・ケチェチアン主席研究員は「イスラム・アラブ圏の秩序作りは長期の視野が必要」と拙速を戒(いまし)める。

 だがカギを握るサウジのムハンマド氏は6月に皇太子へ昇格し、権勢は一段と強化された。

周辺国との摩擦を軽視し、合同軍や中東版NATO構想を強引に推し進めれば、イランとの対立は一段と深刻化。

その代理戦争の側面を持つシリアやイエメンの内戦をさらに泥沼化させかねない。

(編集委員 中西俊裕)


●関連日経記事:2017年6月8日グー・ブログ「息子たちに読んで欲しい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 国際「サウジなど、カタールと断交」=エネルギー調達に影=』(6月6日付)

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

日経新聞 英語「実況 アリスと名文の国」=キャロルの児童文学 原文を精読する楽しさ教える 山口学芸大学・下笠徳次教授=

2017年08月11日 06時47分30秒 | 英語
日経新聞 2017年8月9日(水) P.40 文化面
『実況 アリスと名文の国』=キャロルの児童文学 原文を精読する楽しさ教える 下笠 徳次=

 「賢い」を英語で表現したい時、ぱっと浮かぶ英語は何だろうか。
「clever」それとも「wise」?

    ◆    ◆

「児童文学の奥深さ」
 私は大学院を出て研究の道に入って以来、ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」「鏡の国のアリス」を英英辞典を引きながら精読して読むことを大学生に教え続けてきた。

特別支援学校での授業を引き受けたことがきっかけとなり、今春には実況中継形式の対訳本もい自費出版した。

 この本の中でも詳しく紹介したがキャロルは「賢い」をどう表現したか。
主人公である7歳の少女アリスについてキャロルは必ず「wise」を使った。

「clever」は、机の上の学問がよくできること。
いわゆるペーパーテストで高得点を取る場合。

wiseは、あいさつをしたり、会話中に雰囲気が悪くなると話題を変えようとしたりと大人顔負けの立ち居振る舞いをする利発で利口な様子を表す。

 2作品を翻訳はもちろん原文で読んだ人もいるだろう。
高校2年の英語力があれば大意をつかむことができる。

しかし、文章の構成や単語を一つ一つ丁寧にみると、書かれた英語がいかに洗練されているかがわかる。

こうした深い理解にも英英辞典は役立つのだ。

 キャロルは数学講師で、あいまいな表現を用いることなく、文章は理路整然としている。

「不思議の国」は7歳の少女アリスに向けて書かれたために教育的配慮がなされ、「鏡の国」はさらに推敲(すいこう)を重ねたことで名文になった。

たかが児童文学、されど児童文学だ。

    ◆    ◆

「辞典引き読み解く」
 では、英語文学を真に鑑賞するためにはどうすればいいか。

英語の辞典を使うのが一番というのが私の哲学。
言葉の壁がなくなるのだ。

 英語の辞典は百花繚乱(ひゃっかりょうらん)だが、オックスフォード英語辞典(OED)が最も信頼できるよりどころといえる。

ただ、引くのは至難の業(わざ)。

そこで重宝するのが小型で良質なポケット・オックスフォード辞典(POD)と、現役高校生になじみ深いロングマン現代英英辞典(LDOCE)。

これらを参照すれば、読む度(たび)に新たな発見が待っている。

 例えば「不思議の~」の第7章「A Mad Tea-Party(おかしなお茶会)」の「tea」に関し、PODは「植物としての乾燥した茶葉」の説明から入り、複合語の列挙、「お茶にしませんか?」は「軽い食事にしませんか?」と同義であると解説する。

豊かなtea文化を持つ英国ならでは。
お茶の概要を知ることで深い読み解(と)きが可能になる。

    ◆    ◆

「特別支援学校で授業」 
 私は大学の専門課程では国文学専攻だった。

3年生の時に受けた著名な英文学者の講義に魅了され、教授を追いかけるように広島大大学院に進学。

アリス2作品と運命的な出会いを果たした。

言葉の起源に関心を持ち、多くの英語の語源であるラテン語を学びつつ、言葉の意味を突き詰める研究を続けてきた。

 2作品を英英辞典で精読する講義を続ける中、数年前、故郷、鹿児島の知り合いの特別支援学校の校長から「アリスを好きな生徒がいる。 授業をしてくれないか」と呼ばれた。

実は私も30代で交通事故に遭い頭を強打、左耳がほとんど聞こえず、右耳に補聴器をつけ、読唇術で意思の疎通をはかっている。

 障害のある子供がアリスの話を夢中になって聞く姿に心を動かされた。
耳が聞こえなくとも私の授業を”体感”して欲しいと思い、アリス本を書こうと決意した。

 対訳本は通常、見開きの左側に原文、右側に邦訳が記され、注釈が脚注として示してあるが、目指したのは授業の再現。

原文を記し、その流れで注釈を挟み、また原文を掲げ、注釈を入れる。
目の前で授業が繰り広げられているような実況中継形式にした。

 2作品の授業をまとめた試し刷り300セットはあっという間に品切れに。
読み手は高校生から大学生、社会人へと広がった。

受験英語の影響か、速読が励行され、精読はないがしろにされている。

しかし、ある進学校の生徒から「じっくり読む面白さを知ることができた」という感想をもらい、本をつくったかいがあったと意を強くした。

 文章の真意は書いた本人にしかわからないが、百パーセントの理解に近づきたい。
それが研究者の真意だ。

名作は細部にある。
外国文学を原文で読む楽しみに気付いてもらえたら、私の使命は果たされた気がする。

▼しもがさ・とくじ
山口学芸大学教授。


●関連日経記事:2017年1月18日グー・ブログ「息子たちに読んで欲しい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 英語『英語を「話す」と「書く」の溝』=立命館大学准教授 山中司=』(1月17日付)

コメント
この記事をはてなブックマークに追加