日経新聞 開発「EV迫る主役交代」=部品や素材、開発加速=

2017年08月01日 09時49分41秒 | 開発
日経新聞 2017年7月28日(金) P.13 企業総合面
『EV迫る主役交代』=部品や素材、開発加速=

 フランスに続き英国が2040年にガソリンなど化石燃料で走るエンジン車の販売を禁じる方針を発表した。

自動車メーカーは電気自動車(EV)の開発を加速する必要に迫られる。

一方でEVに欠かせない電池関連やモーターなどで高い技術を持つ部品メーカーは新たな主役として市場の注目を集めている。

「日本電産:売上高を4兆円に」=富士電機:パワー半導体量産=
 「EV普及の支援策があるなら歓迎。 本当の勝負はこれからだ」。

日産自動車の田川丈二常務執行役員は27日の決算会見でこう述べた。
同社は10年にEV「リーフ」を発売し、国内外で累計25万台超を販売。

年内に新型リーフを発売し、EV市場のシェア首位を守る構えだ。

 いち早くEV強化を進めてきた日産の株価は27日、1%高と買われた。
一方、内燃機関が得意なマツダは1%安だった。

 27日、EV向け部品で高いシェアを持つ企業の株価が軒並み高まった。

 日本電産は車載用モーターを重点分野と位置づけ、30年度の車載用の売上高が16年度比15倍の4兆円に拡大するとの見方を示している。

EV向けの需要拡大は「千客万来」(永守重信会長兼社長)の状況。
同社の株価は27日、前日比5%高の1万2230円となった。

 リチウムイオン電池の充放電の性能を決める正極材を手がける戸田工業の株価も20%高の470円に急騰したほか、電池材料を手がける田中化学研究所も13%高と急伸した。

 国内にはEV向けの中核部品や素材で高いシェアを持つ企業が多く存在する。

特に世界の市場規模が25年に約4兆円になるとみられているリチウムイオン電池では、主要材料で日本勢が高い世界シェアを誇る。

 電池の発火を防ぐセパレーター(絶縁体)で世界首位の旭化成の27日の終値は1%高となった。

同社は年産能力を20年までに現在の2倍の11億平方メートルに引き上げる計画。
国内で工場を新設中で「今後も需要に応じ拡大する」(小堀秀毅社長)。

 正極材では住友金属鉱山が18年までに生産能力を2倍にする。

大容量と熱に対する安全性を両立させた材料に強く、パナソニックを通じ米テスラに供給する。

 株価が2%高となった富士電機はEV向けに小型軽量化したパワー半導体を16年に開発し量産体制を整えた。

EVなどに使うインバーター(電力変換装置)に搭載しバッテリーからの直流電力をモーターで使う交流電力に換える。

車両を軽くして燃費を上げる効果があり、複数の欧州自動車メーカーが20~22年に発売するEVの仕様に合わせサンプルを出荷した。

 一方でEVシフトによる従来エンジン向けの部品は中長期的に需要が減るリスクがある。

エンジン部品のピストンリングを手がけるリケンの株価は1%安の5360円、TPRも2%安の3485円となった。

同じく需要減少が懸念されるのが石油だ。

日経平均株価が小幅高となる中、JXTGホールディングスの株価が1%安となるなど、石油各社の株価は軒並み下がった。

 急速なEVシフトは各社の成長戦略や市場での評価に波及しそうだ。

▼EVへのシフトによって必要な部品はこう変わる
【リチウムイオン電池】
・セパレーター: 旭化成、東レ

・正極材: 住友金属鉱山、戸田工業
・負極材: 日立化成、JFEケミカル

・電解液: 三菱ケミカル、宇部興産

【モーター】
・駆動用モーター: 明電舎、日本電産、安川電機、日立オートモーティブシステムズ

・レアアース磁石: 信越化学工業、日立金属
・電磁鋼板: 新日鉄住金、JFEスチール

【インバーター】
・明電舎、カルソニックカンセイ

【充電インフラ】
・日本ユニシス、豊田自動織機

・・・・・・・・・・・・・・・・・
『100年ぶりの構造転換』=市場、25年に5倍=

 世界で初めての内燃機関による自動車がドイツで誕生したのは19世紀末。

フランスや英国がガソリン車などの販売を禁じる方針を打ち出したことは、100年以上続いてきた自動車の産業構造を根本から揺るがす。

調査会社IHSは2017年のEVの世界販売は68万台で、25年に5倍の370万台に膨らむと予測する。

 EVの台数の急増に伴い新たな市場が生まれる。

デロイトトーマツコンサルティングによると、世界の自動車産業の総付加価値額は15年の約450兆円から30年に約630兆円に拡大する。

増加額の3割を占めるのが「素材・部品」だ。

 経済産業省はガソリン車に必要な部品点数が約3万個あり、EVはエンジン関連など約4割の部品が不要になると試算。

エンジン向け市場が縮小する一方、EVの性能を大きく左右するモーターや電池、高機能素材で優れた技術を持つ企業が台頭する可能性がある。

デロイトの清水雄介マネジャーは「競争力のある企業に集約が進む」とみる。

  内燃機関のエンジンは精密な部品の固まりだ。
それぞれの精度の高さが日本の自動車産業の競争力の源泉となってきた。

日本の自動車メーカーは過去の取引実績を重視する傾向があり、電動化に及び腰だ。
新たな主役を取り込み”EV経済圏”を作れるかどうか。

英仏の決断は日本の自動車産業に変革を迫っている。


●関連日経記事:2017年7月30日グー・ブログ「息子たちに読んで欲しい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 開発「欧州発 電気自動車シフト」=英もガソリン車販売禁止へ=』(7月27日付)

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日経新聞 海外メディア「ITの競争条件、公平に」=個人情報保護、国家間で格差=

2017年08月01日 06時50分58秒 | 海外メディア
日経新聞 2017年7月28日(金) P.8 国際1面
連載『英フィナンシャル・タイムズ特約』=7月27日付、社説=

『ITの競争条件、公平に』=個人情報保護、国家間で格差=

 新興国と先進国の間で、デジタル情報に対する規制の格差が拡大している。

技術の進歩がプライバシーとデータの保護を上回るとどのような問題が生じるのか。
今週、それを浮き彫りにする出来事が2つあった。

ひとつは中国、もう一つはインドだ。

顧客データという金脈を巡る争いが激化するなか、情報技術企業の国際競争条件を公平にする必要性がますます明確になっている。

新興国の消費者を保護する必要性についても同様だ。

 中国は犯罪を発生前に予知するシステムを作り上げようとしている。
主として監視カメラで市民の行動を追い、顔認識を利用して居所を把握する仕組みだ。

既に4つの省が、監視カメラで捉えた信号無視の歩行者の映像を個人データとともに見せしめとして公開しており、監視国家に向かおうとする中国の姿を浮かび上がらせる。

国家は制限を受けない一方、民間企業の侵入には新たなデータ保護法で一定の縛りがかけられている。

 インドでは、政府がIDシステムを福祉給付金の給付に利用するのと同時に、指紋認証による取引を可能にする決済システムを作り始めた段階で、個人データが中央管理されようとしているという懸念が高まった。

 米国と欧州連合(EU)では、国家にも民間企業にもプライバシー保護の高いハードルがある。

例えば、フランス憲法院は法執行において国民IDの利用を厳しく制限し、英国はプライバシーへの懸念などから国民IDカード制度を廃止した。

米国では、訴訟が発端となってグーグルが電子メールへのアクセスの仕方を改めた。

 中国の交流サイト(SNS)「微信(ウィーチャット)」の欧州進出では、緩いプライバシー保護法の下で得られるデータをもとに予測アルゴリズム(演算手法)の精度を高められれば、強い規制に縛られている企業よりも優位に立てることになる。

 データの規制に関する新興国と先進国の格差が、先進国企業の競争力を脅かし、多くの新興国では市民のプライバシーの懸念に対する政府の行動が立ち遅れている。

この亀裂を埋めて問題を防ぐために、最低限の国際基準を伴う多国間の取り組みを考えるべき時だ。


●関連日経記事:2017年7月28日グー・ブログ「息子たちに読んで欲しい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 国際「忍び寄る強権勢力と日本」=本社コメンテーター 秋田浩之氏=』(7月26日付)

●関連日経記事:2017年5月4日グー・ブログ「同上」投稿記事参照
 日経新聞 インターネット「11億人にID 貧困改善へ」=インド固有識別番号庁初代総裁 ナンダン・ニレカニ氏=』(5月1日付)

●関連日経記事:2017年7月15日グー・ブログ「同上」投稿記事参照
 日経新聞 インターネット「データ独占 人・カネ呼ぶ」=ニュー・モノポリー 米ITビッグ5 (上)=』(7月14日付)

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日経新聞 開発「分裂騒動 再来も」=仮想通貨 未来を聞く ④=

2017年08月01日 06時29分49秒 | 開発
日経新聞 2017年7月28日(金) P.7 金融経済面
特集連載『仮想通貨 未来を聞く ④』=コインチェック社長 和田晃一良氏=

『分裂騒動 再来も』=改善重ねて使いやすく=

 --今回の分裂騒動は、ビトコインの歴史で何を示しているのか。

 「仮想通貨の中核技術『ブロックチェーン』を改善するために様々な意見の相違などがあったが、一つの解決策を採用することが決まった。

ただ中央管理者がいないという仕組みの中で、どうやって関係者間の合意を取ってビットコインを改良していくかが常に問題になるのがわかった」

 --8月1日に新たな仮想通貨「ビットコインキャッシュ」が誕生するとも言われている。

 「私は7割くらいの確率で生まれるだろうとみている。

海外のある事業者は取引を始めていて、今は1ビットコインキャッシュあたり3万円程度の値が付いている」

 「当社は日本仮想通貨事業者協会の方針に基づき23日にビットコインの入出金を一時停止した。

1日には再び出金を停止するが、2つのコインを区別して入金できるようにする予定だ」

 --コインチェックは他の取引所よりも決済の加盟店を多く抱える。

 「全国の7千店以上の加盟店でビットコインが支払いに使える。

23日の騒動の際は決済も一時停止して店舗に影響が出たため、今回は当社の加盟店での決済は止めずに継続できるようにする。

利用可能な店舗が拡大して停止による影響が大きくなっているためだ」

 --分裂騒動は今後も起きそうか。

 「起こり得る。

利用場所の広がりや価格の高騰でビットコインを取り巻く利害関係者が急激に増え、様々な主張が出てきた。

今回の騒動をきっかけに自分たちが利を得られるように分裂をしたいという人が再び出てきてもおかしくない」

 「今回採用が決まった新規格は取引に時間がかかりすぎるといった問題を解決するための解決策でしかない。

これから時間がたてばもっと効果的な改善策が出てくるだろう。

そうした有効策の取入れの積み重ねがビットコインをより使いやすいものにしていくと思う」

 --国内でも再び取引が活発になるのか。

 「価格は騒動によって下落した後に買いが増えた結果、すでに当初の30万円前後まで戻している。

今後も上昇基調で推移するとみる。

また金融庁による登録を受ける取引所が出てくれば、利用者からの信頼を高めることにもつながっていく」

(聞き手は塩崎健太郎記者)

=おわり


●関連日経記事:2017年7月30日グー・ブログ「息子たちに読んで欲しい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 開発「分裂なら新通貨付与」=仮想通貨 未来を聞く ③=』(7月27日付)

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日経新聞 社会「融資膨らむ兆し、陰にノンバンク」=銀行カードローンを信用保証=

2017年08月01日 02時45分15秒 | 社会
日経新聞 2017年7月28日(金) P.7 金融経済面
『融資膨らむ兆し』=陰にノンバンク=

『銀行カードローンを信用保証』=手数料で稼ぐ=

 消費者金融などノンバンクが銀行と組み、個人ローンの損失リスクを肩代わりする「信用保証」を拡大している。

5月の残高は前年同月比11%増え、過去最高の約5兆9千億円に膨らんだ。

高利であっても借りざるを得ない個人らの切実な需要がそれだけ多いことの裏返しだが、銀行はノンバンク規制の適用対象外だけに、与信管理の甘さを懸念する声もある。


 ノンバンクの事業モデルは個人に直接融資する過去の姿から一変した。

日本貸金業協会によるとデータを公表し始めた2010年以降、信用保証の残高は増え続け、14年にノンバンクによる直接融資の残高を逆転。

今年4月は保証残高が融資の1.5倍まで広がった。

 急増したのは銀行とノンバンクがリスクを分担したことが後押しした可能性が高い。

三菱東京UFJ銀行ならグループのアコム、三井住友銀行なら同じくSMBCコンシューマーファイナンス(旧プロミス)がそれぞれ提携関係にある。

貸し倒れなどの損失リスクを銀行がノンバンクに移す契約だ。
全国の地域金融機関にも広がっている。

 メガバンクの場合、グループのノンバンクに委託するため、連結で財務を見ると実質的にリスクをグループ内に移した形だ。

それぞれの責任所在があいまいになり、融資姿勢が緩んでいるとの指摘がある。

 背景にあるのは貸金業法の”抜け穴”だ。

ノンバンクは貸出上限に「年収の3分の1まで」という総量規制が適用されるが、銀行には適用されないからだ。

 「貸金業者にとっては自分では貸せない相手でも、銀行が貸せば金利のうちの何%かは保証料としてもらえる」と消費者問題に詳しい東京市民法律事務所の三上理弁護士は話す。


 実際、年収の3分の1を超えて融資する銀行は少なくない。

金融庁が16年11~12月に実施した調査によると、直近3年間でノンバンクで希望通り借りられなかった人の1割弱が、その後銀行カードローンでお金を借りている。

 個人ローンで事業資金をなんとかやりくりしている零細事業主らも多く、金融の潤滑油としての役割は無視できない。

ただ窓口の銀行員が直接審査するわけではなく、融資審査の甘さを指摘する向きもある。

全国銀行協会は3月、過剰な広告の自粛や返済能力のチェック強化などを進める方針で一致。

5月には全会員190行を対象に対応状況などを聞くためにアンケートも実施した。

 超低金利下でも年利10%を超えるカードローンは銀行、貸金業者双方にとって魅力的な市場で、現状が簡単に変わることはなさそうだ。

日銀が量的緩和で市中に大量のお金を供給しており、ちょっとした規制の隙間を突いて過剰に資金が流れる恐れがある。

カードローンは銀行全体の融資額のまだ1%にすぎないが将来、バブルの芽となるリスクもある。

▼消費者向け無担保ローン市場で銀行と信金のシェアは6割を超えている
・銀行: 55%

・信金: 6%
・消費者金融: 22%

・クレジットカード・信販会社: 17%

(出所)日銀、日本貸金業協会

▼銀行カードローン、消費者金融にリスク移転
(提携例)
三菱東京UFJ = アコム

三井住友銀行 = SMBCコンシューマーファイナンス(旧プロミス)
みずほ銀行 = オリエントコーポレーション


●関連日経記事:2017年6月14日グー・ブログ「息子たちに読んで欲しい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 社会『銀行カードローン、多重債務の温床に』=「3年内に貸金利用」6割=』(6月13日付)

●関連日経記事:2017年5月23日グー・ブログ「同上」投稿記事参照
 日経新聞 社会「銀行カードローン高水準、残高6.2兆円」=過剰融資批判も=』(5月19日付)

●関連日経記事:2017年7月13日グー・ブログ「同上」投稿記事参照
 日経新聞 社会「パチンコ出玉 規制強化」=警察庁、現状の3分の2へ=』(7月11日付)

◆父さんコメント:
 銀行の預金利息は0.1%前後、キャンペーンでも0.25%前後。

長期の住宅ローンでも0.6~1.0%前後。
それに対し銀行カードローンは10%を超える高利率である。

借りる個人も悪いが、金融業は規制業種であることを考えると「銀行の悪徳ぶり」はひどい。

 入る金(給料)の範囲内で生活設計(支出を抑える)をするのはいつの時代にあっても基本中の基本。

無担保で簡単に借りれるからと甘い銀行の広告にのって銀行カードローンで借金すると「いずれは自己破産」に至るのは明らか。

周りでも、パチンコ→ノンバンクから借金→複数のノンバンクから借金→多重債務者→退社・退職金で借金一部支払い→家屋を売却して一部借金返済→離婚・自己破産→失踪の事例も見てきた。

本人はいいが、家族がかわいそう!
特に子どもの被害は甚大だ。

貧困→低学歴とつながり、子どもにも貧困が伝播する可能性が大となる。
家庭を持つことは、家族を安全に安心して生活できることを保障することだ。

結婚して家族を持つということの意味は深く重い。

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日経新聞 開発「ムーアの法則 限界の先は」=本社コメンテーター 中山淳史=

2017年08月01日 01時37分27秒 | 開発
日経新聞 2017年7月28日(金) P.6 オピニオン面
連載コラム『Deep Insight』

『ムーアの法則 限界の先は』=本社コメンテーター 中山 淳史=

 これほど長く、一定の間隔で進化した消費者向けの技術は、他にはないらしい。

処理能力が1年半ごとに倍増する「ムーアの法則」に沿って高性能化した半導体だ。

 法則の提唱者、ゴードン・ムーア氏らが起こした米インテルが、最初のCPU(中央演算処理装置)を発表したのは1971年。

英エコノミスト誌によれば、、自動車の速度が同じ年から同じペースで進歩を遂げていたら、2015年型の車は時速6億7200万キロメートルに達し、光速の3分の2に迫っていた。

やや突飛な比較だが、車速が変わらない一方で、半導体の演算速度だけが20回以上も画期的進化を繰り返したのは驚異的だ。

    ◆    ◆

 だが、限界もついに来た。

トランジスタの大きさが原子核のそれに近づくなか、演算の高速化も省電力化も進まなくなった。

微細化があと少し可能だとしても「半導体メーカーが開発投資を回収できるだけの性能上の改善はもう期待しにくい」とIHSマークイットの南川明主席アナリストは話す。

 では、人工知能(AI)の普及がこれからという時に、コンピューターの進化は止まるのか。

 不思議なのは、ムーアの法則が終わろうとする時なのに、株式市場では半導体やIT(情報技術)株ブームが続くことだ。

1つは半導体が使われる場所と数が増えているためだろう。
世界の半導体の売上高は5月まで6カ月連続で前年同月比2ケタの増加が続く。

売り上げ規模はITバブルといわれた90年代末の2倍だ。

 主役交代の兆しもある。

パソコン用のCPUを長年支配したインテルは今春、米アップルのスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」用を独占的に製造する台湾積体電路製造(TSMC)に株式時価総額で追い抜かれた。

    ◆    ◆

 そして技術革新だ。

さらなる高速化のため、メモリーやCPU間の距離を可能な限り短くして一体的に製造する「3次元化」の技術が普及し始めた。

「画像処理半導体(GPU)」というチップも話題だ。

大量の数値計算を並列的にさばくのが得意で、AIにディープラーニング(深層学習)をさせる際には不可欠な存在となった。

 GPUの最大手はエヌビディアという米国の会社だ。

自動運転関連のニュースで最近聞く名前だが、ゲーム機やドローン、スーパーコンピューター向けのGPUでも突出した存在となっている。

やはり株の買われ方に市場の期待が表れる。

例えば帳簿上の自己資本と比べ何倍のプレミアム(時価総額)が上乗せされているかを示すPBR(株価純資産倍率)。

インテルの2.5倍に対し、エヌビディアは16倍台に達している。

 半導体の技術革新は今後、GPUのように用途を特化した高速チップを軸に進むとされる。

例えばグーグルも大量のデータを効率的に解析できる「TPU」という高性能チップを開発。

囲碁用のAIソフトに活用したり、自動翻訳機能を進歩させたりしている。

 フェイスブックやアマゾン・ドット・コム、テスラにも似た動きがある。
ITの巨人たちが半導体分野に続々と押し寄せているのは注目すべき事実だ。

自動運転やより高次元のクラウドサービス、人の脳とネットを直接つなぐ時代をにらみ、画像、音声、言語認識の技術を半導体のレベルから徹底的に磨き直そうとの戦略だろう(=特定の領域に特化したチップを開発して、特定の領域だけでその性能を突出させた製品開発)。

恐らく、「ノイマン型」といわれる現在のコンピューターのあり方自体も近い将来、根本的に見直される日が来る可能性が高い。

 「AI時代の三種の神器(さんしゅのじんぎ)はデータ、処理能力(チップやデーターセンター)、そしてそれらを扱える人材だ」とヤフーの安宅和人チーフストラテジーオフィサー(CSO)は指摘する。

 だとすれば、あらゆる産業がネットへと吸い寄せられる世界にあって一段と影響力を増していくのが米IT企業だ。

ムーアの法則の終わりはそうした時代の始まりにもなる。

 日本企業はそんな変化に備えているか。
例えば、安宅氏が経済産業省の審議会で発表した分布図は興味深い。

時価総額を縦軸、純利益を横軸にグラフをつくり、アップルのいる近辺に直線を引いて企業の位置を比較したものだ。

一目瞭然なのは、グーグルの親会社アルファベットやアマゾン、あるいは中国のIT企業は利益がトヨタ自動車より小さいにもかかわらず、市場の評価は高いことだ。

 安宅氏は「利益や資産はかってほど時価総額を決定づける要因ではなくなった。 まだ不確実だが、かなりの確率でそうなると予想できるビジネスチャンスへの期待感の方が重要になった」と話す。

重要なのは「新技術とデータを用いて産業の様々な領域を再定義しているかどうか」とも言う。

    ◆    ◆

 「ビジネスの勝ちパターンが以前と大きく変わった可能性がある」とみるのは早稲田大ビジネススクールの入山章栄准教授だ。

経営学でいう競争戦略の目的の一つは、これまで独占状態を強めるなどして「持続的な競争優位」を構築することにあった。

だが、最近のようにイノベーションが頻繁(ひんぱん)に置き、変化の激しい環境ではそうした戦略も通用しにくくなる。

イノベーションそのものが企業の戦略と同義になったといえるのだ。

 入山氏はAIのほか、仮想通貨の中核技術のブロックチェーン、最先端の遺伝子診断技術であるバイオインフォマティクスなどが、環境変化を一段と加速させるとみる。

時価総額の差は企業の「プレゼン力」の差ではない。
不確実性が高く、変化が激しい時代だからこそ、時価総額の計算式は変わる。

半導体を起点に進む変化が示すのもそこである。


●関連日経記事
:2017年7月30日グー・ブログ「息子たちに読んで欲しい日経記事」投稿記事参照
 日経新聞 開発「消費電力1万2000人分」=「AIと世界」 見えてきた現実 ④=』(7月27日付)

●関連日経記事
:2017年7月19日グー・ブログ「同上」投稿記事参照
 日経新聞 人物紹介『人口知能はどのようにして「名人」をこえたのか?』=愛知学院大特任准教授 山本一成著=』(7月8日付)

●関連日経記事
:2017年7月19日グー・ブログ「同上」投稿記事参照
 日経新聞 経営「P・ドラッカー: 未来は予測できないが、すでに起きた未来はある」=本社コメンテーター 中山淳史=』(7月12日付)

●関連日経記事:2017年7月2日グー・ブログ「同上」投稿記事参照
 日経新聞 インターネット「アマゾン、新陳代謝促す」=高級スーパーのホールフーズ買収=』(6月30日付)

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